医療DXの工程表は、医療機関の中だけを対象にしたものではありません。保健・医療・介護を通じて情報をつなぐことが目的とされており、介護分野にも対応する仕組みが用意されています。2026年4月からは「介護情報基盤」の運用が始まり、介護のデジタル化は新たな段階に入りました。本記事では、介護DXを構成する3つの仕組みと、在宅医療やかかりつけ医として介護に関わるクリニックへの影響を整理します。
免責:本記事は一般的な情報提供です。運用開始時期・対応自治体・介護報酬上の取扱いは今後変わり得ます。実務では必ず最新の一次情報(厚生労働省・国民健康保険中央会・お住まいの自治体の公表資料等)をご確認ください。
医療DX全体の見取り図は 医療DXとは?国の工程表と3本柱をクリニック目線で解説 で整理しています。
介護DXを構成する3つの仕組み
介護分野のデジタル化は、目的の異なる3つの仕組みが並行して進んでいます。名前が似ているため混同されがちですが、役割は明確に分かれています。
| 仕組み | 目的 | 主な利用者 |
|---|---|---|
| 介護情報基盤 | 介護情報を関係者間・医療との間で共有する | 自治体、介護事業所、医療機関、本人 |
| ケアプランデータ連携システム | ケアプランを電子的にやりとりする | ケアマネジャー、サービス提供事業所 |
| LIFE(科学的介護情報システム) | 介護のデータを収集・分析し、フィードバックする | 介護事業所 |
大まかにいえば、**介護情報基盤が「つなぐ」、ケアプランデータ連携が「やりとりする」、LIFEが「分析する」**という分担です。
介護情報基盤(2026年4月〜)
介護情報基盤は、介護保険の被保険者に関する情報を、自治体・介護事業所・医療機関・本人の間で共有するための基盤です。全国医療情報プラットフォーム(医療DXの3本柱の①)の介護分野にあたります。
何が共有されるのか
要介護認定の情報、ケアプラン、介護保険の給付情報といった、これまで紙や個別のやりとりで伝えられてきた情報が対象になります。本人はマイナポータルから自身の介護情報を確認できるようになります(マイナンバーカードが必要です)。
段階的な開始
介護情報基盤は全国一斉には始まりません。準備が整った自治体から順次運用が開始され、2028年4月までに全国すべての市町村での運用開始を目指すとされています。医療分野のPMHやワクチンDXと同じく、地域によって開始時期が異なる点に注意が必要です。
ケアプランデータ連携システム
ケアマネジャーが作成したケアプランを、サービス提供事業所と電子的にやりとりする仕組みです。従来はFAXや紙の郵送でやりとりされてきたため、転記の手間やミスが発生していました。
介護情報基盤との統合が進められており、ケアプランの情報が基盤を通じて関係者に共有される形へ向かっています。
LIFE(科学的介護情報システム)
LIFEは、介護事業所が利用者の状態やケアの内容をデータとして登録し、その分析結果のフィードバックを受ける仕組みです。LIFE関連加算の算定要件にも組み込まれています。
運営主体の移管
2026年、LIFEの運営主体が厚生労働省から公益社団法人国民健康保険中央会(国保中央会)へ移管されました。これは介護情報基盤の開始にあわせた再編であり、2026年5月11日から新システムが稼働しています。
移行にあたっては、次の点が実務上の論点となりました。
- LIFE関連加算を継続して算定するには、移行期間(2026年5月11日〜7月31日)内に移行作業を完了させる必要があった
- アカウントのID・パスワードと事業所情報は引き継がれる一方、利用者情報や過去の様式情報は引き継がれない
- ケアプランデータ連携システムを利用しており、同じ端末で国保中央会運用のLIFEを利用する場合は、電子証明書の取得が不要
介護事業所を併設しているクリニックや、法人として介護サービスを運営している場合は、この移行が済んでいるかの確認が必要です。
クリニックへの影響
介護DXは介護事業所向けの施策が中心ですが、医療側にも関わる場面があります。
在宅医療を行っているクリニック
在宅療養支援診療所として訪問診療を行っている場合、ケアマネジャーや訪問看護、介護事業所との情報共有が日常業務です。介護情報基盤が広がれば、要介護度やケアプランの内容を確認しやすくなり、多職種連携の前提が整います。従来は電話やFAX、サービス担当者会議の場でしか把握できなかった情報が、基盤を通じて確認できるようになる方向です。
かかりつけ医としての関わり
主治医意見書の作成、介護保険の申請に関する相談、施設入所者の診療など、かかりつけ医が介護制度と接する場面は少なくありません。介護情報基盤によって本人・家族が自身の介護情報を確認できるようになると、患者側から提示される情報の質が変わることが想定されます。
医療と介護の情報がつながる意味
医療DXの本来の狙いは、保健・医療・介護を通じた情報連携です。医療側では電子カルテ情報共有サービス、介護側では介護情報基盤が整備され、これらが将来的につながることで、入退院時や在宅移行時の情報の断絶が解消に向かうと期待されています。
クリニックが今できること
1. 併設・関連する介護事業所の対応状況を確認する
法人として介護事業所を運営している場合、LIFEの移行、ケアプランデータ連携システムの利用状況、介護情報基盤への対応を確認します。加算の算定に直結する項目があるため、優先度は高くなります。
2. 連携先のケアマネ・事業所の状況を把握する
在宅医療を行っている場合、連携している居宅介護支援事業所や訪問看護ステーションがどこまで電子化に対応しているかを把握しておくと、情報共有の方法を切り替える判断がしやすくなります。
3. 自治体の運用開始時期を確認する
介護情報基盤は自治体ごとに開始時期が異なります。自院の診療圏の自治体について、公表されている対応状況を確認しておきましょう。
AIカルテでの対応
AIネイティブ電子カルテ「AIカルテ」は、訪問診療のスケジュール管理やモバイル環境での記録に対応しており、在宅医療を行うクリニックの業務を支援します。医療と介護の情報連携についても、制度側の実装の進み方を踏まえて対応方針を検討しています。在宅診療の運用にあわせた導入のご相談を承っています。
おわりに
介護DXは、介護情報基盤・ケアプランデータ連携システム・LIFEという役割の異なる3つの仕組みで構成されています。2026年は介護情報基盤の運用開始とLIFEの運営移管が重なり、介護分野にとって節目の年となりました。クリニックにとっては、在宅医療での多職種連携や、かかりつけ医としての介護制度との接点に影響します。併設する介護事業所がある場合はLIFEの移行状況を、在宅医療を行っている場合は連携先と自治体の対応状況を、それぞれ確認しておくことが実務的な備えになります。
ポテックはAIカルテの提供を通じて、クリニックの皆様の最適な事業パートナーとして、医師や看護師・医事スタッフの働きやすさの改善はもちろん、クリニックとして実現したいことを最大限に叶えられるようサポートいたします。
詳細については、ぜひお問い合わせください。
