この記事の要点
- クラウド型電子カルテとは、院内にサーバーを置かず、インターネット経由で事業者のサーバー(データセンター)上の電子カルテをブラウザやアプリから使う方式です。
- 初期費用・導入スピード・自動アップデート・災害対策・多拠点対応ではクラウド型が有利で、インターネット障害の影響を受けにくい点ではオンプレミス型に利点があります。
- 国は、オンプレ型でカスタマイズされた電子カルテから、クラウドネイティブを基本とする廉価なものへの移行を図る方針で、2026年9月の電子カルテ普及計画でも認証されたクラウドネイティブ型製品の普及支援を掲げています。
- 医療情報システムの安全管理ガイドライン第7.0版は、クラウドサービスの積極的な活用を推進する旨を追記し、サーバ保守をSaaS等で全面委託する医療機関向けの保守委託機関編を設けました。
電子カルテを導入・乗り換えるとき、最初に決めることになるのが「クラウド型」と「オンプレミス型(据置型)」のどちらを選ぶかという点です。近年はクラウド型電子カルテとオンプレの比較を検討するクリニックが増えていますが、それぞれに向き・不向きがあり、コストだけで判断すると後悔につながることもあります。本記事では、クラウド型とオンプレミス型の電子カルテを7つの観点で徹底比較し、クリニックに合った選び方を中立的に解説します。
クラウド型電子カルテとは
クラウド型電子カルテとは、院内にサーバーを置かず、インターネット経由で事業者のサーバー(データセンター)上にある電子カルテを、ブラウザやアプリから使う方式です。 月額のサブスクリプションで提供されることが多く、診療報酬改定への対応やセキュリティ更新は事業者側で行われます。
同じ「クラウド型」でも、もともと院内設置用だったシステムをデータセンターに置いたものと、最初からクラウドで動かす前提で設計されたもの(クラウドネイティブ。複数の医療機関が同じシステムを共同利用するマルチテナント型など)があります。国の方針で推進されているのは後者です(後述)。
クラウド型とオンプレミス型の基本的な違い
- クラウド型: データや電子カルテの機能をインターネット経由でベンダーのサーバー(データセンター)に置き、ブラウザやアプリからアクセスする方式
- オンプレミス型(据置型): クリニック内にサーバーを設置し、院内ネットワークで完結して運用する方式
かつては院内サーバーで動かすオンプレミス型が主流でしたが、通信環境とセキュリティ技術の進展により、現在はクラウド型が急速に普及しています。
7つの観点で徹底比較
| 観点 | クラウド型 | オンプレミス型 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 抑えやすい | 高くなりやすい |
| 月額・運用費 | 定額のサブスクが中心 | 保守契約+更新費 |
| 導入スピード | 速い | サーバー構築で時間がかかる |
| アップデート | 自動・随時 | 都度作業が必要 |
| 災害・BCP | 遠隔地保管で強い | 院内被災リスク |
| 拡張性 | 分院・多拠点に強い | 拠点ごとに構築 |
| ネット依存 | 常時接続が前提 | オフラインで動作 |
1. コスト(初期費用・月額)
クラウド型はサーバーを自院に持たないため初期費用を抑えやすく、月額のサブスクリプション型が中心です。オンプレミス型はサーバー購入費などで初期費用が高くなりがちで、数年ごとのハードウェア更新費も見込む必要があります。
2. 導入スピード
クラウド型は物理的なサーバー構築が不要なため、比較的短期間で導入できます。オンプレミス型は機器の設置・設定に時間がかかります。
3. アップデート・改定対応
診療報酬改定やセキュリティ更新への対応は、クラウド型ではベンダー側で自動的に反映されるのが一般的です。オンプレミス型は都度の更新作業が発生します。
4. 災害対策・BCP(事業継続)
クラウド型はデータがベンダーのデータセンターに保管されるため、院内が被災してもデータが失われにくく、別の端末から復旧しやすいのが利点です。オンプレミス型は院内サーバーが被災するとデータ損失のリスクがあり、バックアップ運用の設計が重要になります。
5. 拡張性・多拠点対応
分院展開や在宅診療など、複数拠点・院外からのアクセスが必要な場合、クラウド型が有利です。オンプレミス型は拠点ごとにサーバーを構築する必要があります。
6. ネットワーク依存
クラウド型はインターネット接続が前提となるため、回線の安定性が重要です。オンプレミス型は院内ネットワークで完結するため、インターネット障害の影響を受けにくい面があります。
7. セキュリティとガイドライン準拠
「クラウドは危険、オンプレは安全」という単純な図式は正確ではありません。いずれの方式でも、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」への準拠が求められ、事業者側には経済産業省・総務省のガイドラインが適用されます(あわせて3省2ガイドライン)。クラウド型では、ベンダーがこのガイドラインに準拠した基盤・運用を提供しているかが重要な確認ポイントです。オンプレミス型では、院内での物理的・技術的な安全管理をクリニック自身が担う比重が大きくなります。
国の方針はクラウドネイティブ型への移行
電子カルテ選びでは、国の方針も判断材料になります。
- 電子カルテの普及方針:厚生労働省は、オンプレ型でカスタマイズされた現行の電子カルテから、クラウドネイティブを基本とする廉価なものへの移行を図る方針を示しています。2026年9月公表の「電子カルテ普及計画」では、標準仕様に準拠したクラウドネイティブ型電子カルテの認証制度を創設し、2027年度以降に認証製品の普及を支援する施策が掲げられています(令和9年度概算要求ベース)
- 標準仕様の主な要件(案):医科診療所/中小病院向けの標準仕様では、稼働率の実績99.9%以上、ISMAPまたはISMS+ISMSクラウドセキュリティ認証の取得、データの国内保持、マルチテナント方式のSaaS型であることなどが示されています
- 安全管理ガイドライン第7.0版(2026年6月):クラウドサービスの積極的な活用を推進する旨が追記され、すべてのサーバのセキュリティアップデートを事業者に委託している医療機関(SaaS型電子カルテの利用など)向けに保守委託機関編が新設されました。この場合、概説編と保守委託機関編への対応でガイドラインを遵守しているとみなされます
クラウド型を選ぶ場合も、事業者がセキュリティアップデート責任を負うことが契約書・約款・SLAに書かれているかは必ず確認してください。詳しくは 医療情報システムの安全管理に関するガイドラインとは、国の方針は 標準型電子カルテとは で解説しています。
クリニック規模・診療スタイル別の選び方
- 新規開業・小規模クリニック: 初期費用と運用負担を抑えられるクラウド型が有力
- 分院展開・在宅診療を行う医院: 院外アクセスと拡張性に強いクラウド型が適する
- 院内ネットワーク完結を重視する施設: オフライン動作を重視するならオンプレミス型も選択肢
- IT保守の人手を割きにくいクリニック: 自動アップデートで運用負担が軽いクラウド型が向く
クラウド型の利点を最大化するAIネイティブ設計
クラウド型のメリットは、単なる「サーバーレス」ではなく、「どこからでも、常に最新の環境で診療できる」ことにあります。ポテックの「AIカルテ」はクラウド・AIネイティブ設計で、マルチデバイス対応により診察室・受付・在宅先など場所を問わず同じデータにアクセスできます。音声入力によるSOAP自動生成やAIレセチェックといったAI機能も、クラウド基盤の上で常に最新の状態で利用できます。もちろん3省2ガイドラインに準拠した基盤で運用されており、セキュリティ面の確認事項もクリアしています。
よくある質問
- Q. クラウド型電子カルテとは何ですか?
- A. 院内にサーバーを置かず、インターネット経由で事業者のサーバー(データセンター)にある電子カルテをブラウザやアプリから利用する方式です。月額のサブスクリプションで提供されることが多く、アップデートは事業者側で行われます。
- Q. クラウド型電子カルテのデメリットは?
- A. インターネット接続が前提になるため、回線障害時の備え(予備回線や紙運用への切替手順)が必要です。また、データが事業者側にあるため、契約終了時のデータの取り出し方法やバックアップの範囲を事前に確認しておく必要があります。
- Q. クラウド型電子カルテはセキュリティ上問題ありませんか?
- A. クラウドだから危険、オンプレだから安全という単純な比較は成り立ちません。どちらも3省2ガイドラインへの対応が求められます。クラウド型では、事業者のガイドライン対応状況(MDS/SDSなど)、ISMSなどの認証、責任分界を契約で確認することが重要です。
- Q. 国はクラウド型電子カルテを推進していますか?
- A. 推進しています。厚生労働省は、カスタマイズされたオンプレ型から、クラウドネイティブを基本とする廉価な電子カルテへの移行を図る方針を示しており、2026年9月の電子カルテ普及計画では、標準仕様に準拠したクラウドネイティブ型電子カルテの認証制度と、認証製品の普及支援を掲げています。
参考・出典
- 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版(厚生労働省)
- 第7.0版 保守委託機関編(PDF、厚生労働省)
- 電子カルテ普及計画(厚生労働省、2026年9月9日)
- 電子カルテの普及について(第33回 医療等情報利活用ワーキンググループ 資料3、2026年6月26日)
制度や要件の詳細・最新情報は、必ず上記の公式ソースをご確認ください。
おわりに
クラウド型とオンプレミス型は、どちらが優れているというより、クリニックの規模・診療スタイル・IT運用体制によって最適解が変わります。初期費用・運用負担・災害対策・拡張性を重視するならクラウド型、院内完結やオフライン動作を重視するならオンプレミス型が向いています。いずれを選ぶ場合も、3省2ガイドラインへの準拠と、実際の診療フローでの使い勝手を確かめることが失敗しない導入の鍵です。
ポテックはAIカルテの提供を通じて、クリニックの皆様の最適な事業パートナーとして、医師や看護師・医事スタッフの働きやすさの改善はもちろん、クリニックとして実現したいことを最大限に叶えられるようサポートいたします。
詳細については、ぜひお問い合わせください。