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電子カルテの標準要件に沿ったデータ移行の方法|HL7 FHIR・SS-MIX2・標準コード

2026年8月2日

電子カルテの標準要件に沿ったデータ移行の方法|HL7 FHIR・SS-MIX2・標準コード
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電子カルテのデータ移行は、これまで「製品ごとに独自形式のため、そのまま移せない」ことが最大の壁でした。しかし医療DXの進展により、電子カルテ情報を標準規格で扱う「電子カルテ情報の標準化(標準要件)」が整備され、移行の考え方も変わりつつあります。本記事では、電子カルテの標準要件に沿ったデータ移行の方法・手順・限界を、厚生労働省の公式情報をもとに整理します。

免責:本記事は一般的な情報提供です。制度・標準規格・運用開始時期・診療報酬は改定/通知で変わり得るため、実務では必ず最新の一次情報(厚生労働省の告示・公式資料)を確認してください。

なぜ「標準要件」がデータ移行を変えるのか

従来の電子カルテは、患者データをベンダー独自のデータ構造で保持していました。このため乗り換え時には、旧カルテから書き出したデータを新カルテの形式へ個別に変換する必要があり、費用・期間・データ欠落のリスクが生じます。自由記載の経過記録が「参照専用PDF」でしか引き継げないのも、この独自形式が理由です(移行全般の基礎は電子カルテのデータ移行・乗り換え完全ガイドを参照)。

一方、医療DX(全国医療情報プラットフォーム/電子カルテ情報共有サービス)では、電子カルテ情報を標準規格で構造化して扱うことが前提となります。データが最初から標準形式で保持・出力できれば、ベンダー間の変換コストは下がり、いわゆるベンダーロックインの緩和につながります。つまり「標準要件への対応度」が、将来の移行しやすさを左右する時代になっています。

電子カルテの標準要件で押さえる3つの規格

電子カルテ情報の標準化で中心となるのが、次の3つです。移行を考えるうえで、この3語は必ず押さえておきましょう。

1. HL7 FHIR(情報交換の標準規格)

**HL7 FHIR(ファイア)**は、医療情報を交換するための国際標準規格です。電子カルテ情報共有サービスでは、傷病名・アレルギー・処方などの情報を FHIR 形式でやり取りします。医療機関間の連携だけでなく、カルテ間のデータ受け渡しでも共通言語として機能し得るため、移行の観点でも重要です。

2. SS-MIX2(標準化ストレージ)

**SS-MIX2(エスエスミックス・ツー)**は、電子カルテの診療データを標準形式でファイルとして蓄積する「標準化ストレージ」の仕組みで、厚生労働省標準規格に採用されています。処方・検査・注射などの構造化データを標準形式で保存でき、地域連携・BCP(災害対策)・システム移行での可搬性に活用されてきました。旧カルテが SS-MIX2 出力に対応していれば、移行時のデータ取り出しが現実的になります。

3. 標準コード(コードの共通化)

情報を標準形式で扱う前提として、各項目を標準コードで登録することが欠かせません。代表的なものは次のとおりです。

情報主な標準コード(例)
傷病名ICD-10対応の標準病名マスター、レセプト電算処理システム用コード
医薬品HOTコード、YJコード
検査JLAC10/JLAC11(臨床検査項目分類コード)

自由記載のテキストのままでは標準的に移行・共有できません。6情報(傷病名・アレルギー・薬剤禁忌・感染症・検査・処方)を標準コードで登録する運用が、標準化の実効性を左右します(共有の全体像は電子カルテ情報共有サービス完全ガイドを参照)。

標準型電子カルテと移行の関係

厚生労働省は、主に小規模医療機関向けに、クラウドで提供される標準型電子カルテの整備を進めています。標準型電子カルテは、電子カルテ情報共有サービスや標準規格への対応を前提に設計される方向で、モデル事業を経て段階的に展開が図られています(最新の対象範囲・提供時期は公式情報を確認)。

標準規格に準拠したカルテ同士であれば、6情報のような構造化データは標準形式を介して受け渡しやすくなります。乗り換え先を選ぶ際は、「そのカルテが標準要件(HL7 FHIR/標準コード/SS-MIX2 等)にどこまで対応しているか」を、移行のしやすさの評価軸に加えることが有効です。

標準要件に沿ったデータ移行の主な方法

1. 標準化ストレージ(SS-MIX2)経由の移行

旧カルテが SS-MIX2 で標準化データを蓄積・出力できる場合、その標準ファイルを新カルテへ取り込む方式です。処方・検査などの構造化データを標準形式で受け渡せるため、独自形式の変換に比べてデータの解釈ズレを抑えやすいのが利点です。ただし旧カルテ側の対応状況・出力範囲に依存します。

2. 標準コードによる構造化データの移行

傷病名・医薬品・検査などを標準コードで保持しているデータは、新カルテ側でも同じコード体系で取り込めるため、マッピングの手間と誤変換のリスクを減らせます。逆に、旧カルテが独自コードのみで運用していた場合は、標準コードへのコード変換(名寄せ)作業が必要になります。

3. HL7 FHIR を介したデータ受け渡し

将来的には、FHIR 形式でエクスポート/インポートできる環境同士であれば、標準的な項目の受け渡しがしやすくなります。現時点で対応範囲は製品・項目により異なるため、移行に使える範囲を具体的に確認することが重要です。

4. 従来方式との併用(自由記載・画像はPDF参照)

標準要件でカバーされるのは主に構造化データです。自由記載の経過記録・シェーマ・画像などは、引き続き参照専用PDFなどで引き継ぐのが現実的です。「標準規格で移せる部分」と「PDF等で参照保持する部分」を切り分けて設計します。

標準要件を踏まえた移行の手順

  1. 現行カルテの標準対応状況の棚卸し:SS-MIX2出力・標準コード運用・FHIR対応の有無を確認する
  2. 6情報の標準コード化の点検:傷病名・薬剤・検査が標準コードで登録されているか(独自コードは変換対象)
  3. 移行範囲の切り分け:標準規格で移す構造化データと、PDF等で参照保持する自由記載・画像を区別する
  4. 新旧ベンダーへの要件提示と見積もり:標準形式での出力可否・取込可否・費用を書面で確認する
  5. テスト移行と突合確認:標準コードの対応関係を含め、一部データで検証する
  6. 並行運用と法定保存の担保:切り替え直後に旧カルテを参照可能にし、診療録の保存義務(原則5年)を満たす

見落としがちな注意点と「標準化の限界」

  • 標準化は万能ではない:標準要件が主に対象とするのは構造化された6情報等であり、カルテ本文の自由記載や独自文書までシームレスに移せるわけではありません。過度な期待は禁物です。
  • 旧カルテの対応状況に依存する:標準要件は新しい枠組みのため、古い環境では SS-MIX2 出力や標準コード運用が未対応のこともあります。まず「取り出せるか」を確認しましょう。
  • セキュリティとガイドライン準拠:移行作業でも患者情報を扱うため、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(3省2ガイドライン)に沿った取り扱いが必要です(実務は3省2ガイドライン対応の実務ステップを参照)。
  • 一次情報の確認:標準規格の版・対象範囲・運用時期は更新されます。実装時は厚生労働省の公式資料で最新の定義を確認してください。

AIネイティブで設計された電子カルテ「AIカルテ」は、レセコン一体型で患者情報・病名・レセプトデータを同一基盤で管理し、3省2ガイドラインに準拠したクラウド環境で運用します。医療DXの標準化の流れを見据えた設計方針のもと、移行後もAIによる要約機能で過去カルテの把握がしやすく、乗り換え直後の負担を軽減します。標準規格への対応状況や移行の可否・範囲は、個別の環境に応じてご相談いただけます。

おわりに

電子カルテの標準要件(HL7 FHIR・SS-MIX2・標準コード)への対応は、データ移行を「独自形式の変換頼み」から「標準形式での受け渡し」へと近づけ、将来の乗り換えやすさを高めます。一方で、標準化がカバーするのは主に構造化データであり、自由記載や画像は従来どおりの工夫が必要です。標準で移せる部分と参照保持する部分を切り分ける——この設計が、標準時代の移行を成功させる鍵になります。

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