この記事の要点
- 電子カルテ情報共有サービスとは、全国医療情報プラットフォームの仕組みの一つで、患者の電子カルテ情報を全国の医療機関・薬局や本人が共有・閲覧できるようにするものです。
- 厚生労働省は、診療情報提供書の電子共有、健診結果の閲覧、患者の臨床情報の閲覧、患者サマリーの本人閲覧の4つのサービスとして整理しています。共有対象は「3文書6情報」と呼ばれます。
- 厚生労働省は、令和8年度(2026年度)の冬頃をめどに全国で利用可能な状態にすること(運用開始)を目指す方針を示しています。処方情報は電子処方箋管理サービスで共有する整理です。
- 参加にはHL7 FHIRに対応した電子カルテと、6情報を標準コードで登録する運用が前提になります。
医療DXの中核として、「電子カルテ情報共有サービス」への注目が高まっています。名前は聞いたことがあっても、「何が共有されるのか」「加算にどう関わるのか」「標準規格や同意はどうなるのか」まで把握できている院長はまだ多くありません。本記事では、共有される情報、加算要件、HL7 FHIR標準化、患者同意、導入準備までを、厚生労働省の公式情報をもとに専門的に整理します。
免責:本記事は一般的な情報提供です。制度・運用開始時期・診療報酬は改定/通知で変わり得るため、実務では必ず最新の一次情報(厚生労働省の告示・公式資料)を確認してください。
電子カルテ情報共有サービスとは
電子カルテ情報共有サービスとは、医療機関の電子カルテに記録された情報の一部を、全国の医療機関・薬局や患者本人が共有・閲覧できるようにする国の仕組みです。 患者がマイナ保険証で受付し情報提供に同意することで、他院の傷病名やアレルギー、検査結果などを確認できるようになります。オンライン資格確認の基盤を活用した全国医療情報プラットフォームの仕組みの一つです。
厚生労働省は、このサービスを次の4つとして整理しています。
| サービス | 誰が見られるか |
|---|---|
| 診療情報提供書を電子で共有できるサービス | 紹介先の医療機関等 |
| 各種健診結果を閲覧できるサービス | 医療保険者、全国の医療機関等、本人等 |
| 患者の臨床情報(6情報)を閲覧できるサービス | 全国の医療機関等、本人等 |
| 患者サマリーを閲覧できるサービス | 本人等 |
いつから使えるのか
モデル医療機関での検証で見つかった課題への対応として、技術解説書の改訂とシステム改修が進められています。厚生労働省は、令和8年度(2026年度)の冬頃をめどに全国で利用可能な状態にすること(運用開始)を目指す方針を示しています(第27回 医療等情報利活用ワーキンググループ資料、令和7年12月24日。2026年9月公表の「電子カルテ普及計画」に再掲)。2026年6月にはシステムベンダ向け技術解説書v2.1.0、7月には概要案内v2.1が公表されています。
手続き、マニュアル、利用申請、運用開始日の登録、補助金申請は、医療情報基盤・診療報酬審査支払機構が運営する「医療機関等向け総合ポータルサイト」に掲載されています。
これまで他院での傷病名・アレルギー・検査結果などを知るには、紹介状や患者からの聞き取りに頼るしかありませんでした。本サービスにより、こうした情報を標準化された形式で共有でき、転院・救急・かかりつけ連携の場面で、より安全で効率的な診療につながります。
共有される「3文書6情報」
このサービスで共有される情報は「3文書6情報」と呼ばれます。
3文書:診療情報提供書(紹介状)/退院時サマリー/健康診断結果報告書
6情報:傷病名/アレルギー情報/薬剤禁忌情報/感染症情報/検査情報(救急・生活習慣病関連など)/処方情報
特にアレルギーや薬剤禁忌の情報は患者安全に直結する重要データです。なお、処方情報は電子処方箋管理サービスで共有する整理になっています(電子カルテ普及計画、2026年9月)。3文書6情報の正確な内訳・定義は公式資料で更新されるため、実装時は厚生労働省の「文書情報(3文書)及び電子カルテ情報(6情報)の取扱」等の一次資料で最新の定義を確認してください。
HL7 FHIRによる標準化
本サービスの肝は、情報を標準規格で構造化して共有する点にあります。医療情報交換の国際標準であるHL7 FHIRに対応し、6情報を標準コード(傷病名や検査項目のコード等)で登録・交換できることが前提です。自由記載のテキストのままでは共有の価値を十分に引き出せないため、電子カルテが標準規格に対応し、標準化入力を運用に組み込めるかが重要になります。
患者同意と個人情報保護
電子カルテ情報の共有には、患者の情報提供同意が必要です。診療情報は個人情報保護法上の「要配慮個人情報」に該当するため、同意取得のフロー(受付での明確な説明・記録)を適切に整えます。医療機関の安全管理は3省2ガイドラインに沿って設計します(実務は3省2ガイドライン対応の実務ステップを参照。個人情報の取扱いの詳細は生成AI利用の法的整理も参考になります)。
加算要件との関係
電子カルテ情報共有サービスへの対応は、医療DX関連の診療報酬加算とも関わります。電子的診療情報連携体制整備加算などでは、オンライン資格確認・電子処方箋とあわせて、本サービスへの対応が体制要件として位置づけられる方向にあります。具体的な点数・算定要件・対応期限は改定ごとに見直されるため、本記事では断定を避けます。算定検討時は厚生労働省・地方厚生局の告示・疑義解釈で最新要件を確認してください。
導入準備のポイント
- オンライン資格確認の運用:本サービスの前提基盤を整える
- 電子カルテの標準規格(HL7 FHIR)対応:6情報を標準コードで登録・交換できること
- 6情報の標準化入力:傷病名・アレルギー等を標準コードで登録する運用
- 同意取得フローの整備:受付で情報提供同意を適切に取得・記録
- 利用申請・接続:ポータルサイトで申請し、サービスへ接続
鍵になるのは、電子カルテが標準規格に対応しているかどうかです。既存カルテの改修に大きなコストがかかるケースもあるため、これから電子カルテを選ぶなら、標準規格対応を前提に検討することが重要です。
AIカルテでの対応
ポテックが開発するAIカルテは、AIネイティブ設計により、データを最初から構造化して扱うことを前提としています。傷病名・アレルギー・処方などを標準化された形で管理しやすく、電子カルテ情報共有サービスが求める標準規格対応にも取り組みやすい設計です。音声入力によるSOAP自動生成で記載負担を減らしつつ、必要な情報を構造化データとして蓄積。レセコン一体型で予約・問診・記録・会計が同一基盤上でつながり、3省2ガイドラインに準拠したセキュリティ設計(AIカルテのセキュリティ設計参照)のもと、情報共有時代の医療DXに対応します。
おわりに
電子カルテ情報共有サービスは、医療機関の垣根を越えて患者情報を安全に共有し、医療の質と安全を高めるしくみです。3文書6情報・加算要件・HL7 FHIR標準化・患者同意まで見据えると、これからの電子カルテ選びでは「情報共有に対応できるか」が重要な軸になります。制度は運用拡大に向けて更新されるため、必ず公式情報で最新の内容を確認しましょう。詳細はお気軽にお問い合わせください。
よくある質問
- Q. 電子カルテ情報共有サービスとは何ですか?
- A. 全国医療情報プラットフォームの仕組みの一つで、医療機関の電子カルテに記録された情報の一部(3文書6情報)を、全国の医療機関・薬局や患者本人が共有・閲覧できるようにする国のサービスです。オンライン資格確認の基盤を活用します。
- Q. 電子カルテ情報共有サービスはいつから始まりますか?
- A. モデル事業での検証と改修を経て、厚生労働省は令和8年度(2026年度)の冬頃をめどに全国で利用可能な状態にすること(運用開始)を目指すとしています。最新の時期は厚生労働省の公表資料で確認してください。
- Q. 3文書6情報とは何ですか?
- A. 3文書は診療情報提供書・退院時サマリー・健康診断結果報告書、6情報は傷病名・アレルギー情報・薬剤禁忌情報・感染症情報・検査情報・処方情報です。なお処方情報は、電子処方箋管理サービスで共有する整理になっています。
- Q. クリニックが参加するには何が必要ですか?
- A. オンライン資格確認の運用、HL7 FHIRに対応した電子カルテ(または改修)、6情報を標準コードで登録する運用、患者への説明と同意の流れの整備が必要です。手続き・マニュアル・利用申請は医療機関等向け総合ポータルサイトに掲載されています。
参考・出典
- 厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス」
- 厚生労働省「文書情報(3文書)及び電子カルテ情報(6情報)の取扱」
- 厚生労働省「オンライン資格確認等について」
- 厚生労働省「電子カルテ普及計画」(令和8年9月9日。本文PDF内に電子カルテ情報共有サービスの概要と今後のスケジュールを掲載)
※本記事は一般的な情報提供です。制度・診療報酬は改定/通知で変わり得るため、実務では最新の一次情報を確認してください。