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医療情報システムの安全管理に関するガイドラインとは|第⁠7.0版の構成と要点

2026年9月14日

医療情報システムの安全管理に関するガイドラインとは|第7.0版の構成と要点
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この記事の要点

  • 「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」は、医療機関等が医療情報システムを安全に導入・運用するための対策を厚生労働省が示した文書です。2005年3月の初版以降改定が続き、現行は第7.0版(2026年6月策定)です。
  • 第7.0版は概説編・経営管理編・企画管理編・システム運用編・保守委託機関編の5編構成です。すべてのサーバのセキュリティアップデートを事業者に委託している医療機関は、概説編と保守委託機関編に対応すれば遵守しているとみなされます。
  • 対象は病院・一般診療所・歯科診療所・薬局・訪問看護ステーションなどで医療情報システムに関わる全ての者で、規模による除外はありません。
  • 第7.0版では、サイバーセキュリティ基本法の追加、パスワードの定期変更要件の削除、二要素認証の対象の明確化(2027年4月1日時点で困難な場合は次期システム改修での対応を許容)などが行われました。

2026年度(令和8年度)診療報酬改定で、医療機関のセキュリティ対策の位置づけが変わりました。新設された電子的診療情報連携体制整備加算の要件に、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」への準拠と、専任の医療情報システム安全管理責任者の配置が入ったためです。

これまでセキュリティ対策は、「やったほうがよいが、やらなくても収益には直結しない」領域でした。院内の優先順位が上がらない最大の理由もそこにありました。2026年度以降は違います。準拠していなければ算定できない。コストの問題ではなく、算定できるかどうかの問題になりました。

そこで改めて向き合うことになるのが、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」です。2026年6月に第7.0版が策定されました。ただし、この文書は全体で数百ページあり、最初から通読する種類のものではありません。本記事では、このガイドラインが誰に向けて何を書いた文書なのか、第6.0版から何が変わったのか、自院の立場ならどこから読めばよいのかを整理します。個別の編の中身は、それぞれ独立した記事で扱います。

免責:本記事は一般的な情報提供です。ガイドラインの要求事項の解釈、および診療報酬の算定要件は、厚生労働省が公表する本文・通知・疑義解釈が正本です。実際の届出判断は、必ず一次資料と地方厚生局の確認に基づいて行ってください。

医療情報システムの安全管理に関するガイドラインとは

「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」とは、病院・診療所・薬局などの医療機関等が、患者の医療情報を扱うシステムを安全に導入・運用・保守・廃棄するために守るべき対策を、厚生労働省が示した文書です。 個人情報保護法やe-文書法(電子保存)などの法令に適切に対応するための、技術面・運用管理面の対策がまとめられています。

2005年(平成17年)3月の初版以降、技術や制度の変化に合わせて改定が重ねられており、**現行は第7.0版(2026年6月策定)**です。経済産業省・総務省が事業者向けに定めるガイドラインと合わせて「3省2ガイドライン」と呼ばれます。

項目内容
所管厚生労働省
現行版第7.0版(2026年6月29日付 産情発0629第1号で周知)
対象医療機関等で、全ての医療情報システムの導入・運用・利用・保守・廃棄に関わる者
構成概説編・経営管理編・企画管理編・システム運用編・保守委託機関編の5編
前提となる法令等個人情報保護法、e-文書法と厚生労働省の関係省令・施行通知、サイバーセキュリティ基本法など

診療録などを電子保存する場合は、施行通知が定める真正性・見読性・保存性(電子保存の三原則)を確保する必要があり、ガイドラインはその具体的な方法も示しています。三原則の中身は 3省2ガイドラインとは?電子保存の三原則 で解説しています。

2026年度改定で「準拠していること」が算定要件になった

2026年度改定では、医療情報取得加算と医療DX推進体制整備加算が廃止され、両者を統合・改組する形で電子的診療情報連携体制整備加算が新設されました。あわせて、従来診療録管理体制加算1に置かれていたサイバーセキュリティ関連の要件が、本加算へ移管・統合されています。

つまり、医療DX(オンライン資格確認、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス)の評価と、サイバーセキュリティ対策の評価が、ひとつの加算にまとめられたということです。外来の点数区分や施設基準の全体像は 2026年度診療報酬改定 全科共通事項 にまとめています。

入院に係る区分では、セキュリティ要件が次のように整理されています。

区分点数要件
加算1160点共通要件 + 加算1のみの要件
加算280点共通要件

共通要件(加算1・加算2に共通)

  • 「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」への準拠
  • 専任の医療情報システム安全管理責任者の配置

加算1のみの要件

  • 医療情報システムの複数方式によるバックアップの確保(一部はオフライン保管)
  • サイバー攻撃等を想定したBCPの策定と、訓練の実施

ここで読み取るべきことは2つです。ひとつは、ガイドラインが参照先として名指しされたこと。もうひとつは、体制(人を置く)と運用(バックアップ・BCP・訓練)が要件になったことです。製品を買えば満たせる要件ではありません。責任者の選任については 医療情報安全管理責任者の役割と選任 で詳しく扱います。

なお、EDRの導入義務、脆弱性診断や職員研修の実施頻度、経過措置の期限などについては、二次情報では具体的な数字が流通していますが、本記事では一次資料で確認できたもののみを記載しています(これらは要一次確認としてお読みください)。

第7.0版の構成と、誰がどの編を読むか

正式名称は 「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(厚生労働省)で、現行は 第7.0版(2026年6月策定) です。前の第6.0版は2023年5月に策定されました。

よく使われる「3省2ガイドライン」という呼び方は、この厚労省ガイドラインと、経済産業省・総務省が共同で示す「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」を合わせた総称です。役割分担で読むと整理しやすくなります。

所管文書名宛人
厚生労働省医療情報システムの安全管理に関するガイドライン医療機関等(病院・診療所・薬局など)
経済産業省・総務省医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン事業者(ベンダー・クラウド事業者)

自院が読むべきは厚労省側、ベンダーに守らせるべきは経産省・総務省側、という関係です。呼称と全体像は 3省2ガイドラインをわかりやすく解説 を先に読むと理解が早くなります。

第6.0版で、それまで一冊だった文書が読者別に4編へ分冊されました。第7.0版はこの構成を引き継ぎ、保守委託機関編を加えた5編になっています。

編想定読者扱う内容
概説編全読者ガイドラインの目的、対象、構成、前提となる考え方
経営管理編医療機関の意思決定者・経営層安全管理に関する責任・責務、リスク評価を踏まえた管理、事業者との協働
企画管理編システムの安全管理者(企画管理者)管理体系、責任分界、体制、規程・文書類、リスク管理、BCP、サイバーセキュリティ
システム運用編システムを実際に扱う運用担当者技術的対策の体系、ネットワーク、認証・認可、電子署名、証跡のレビュー、外部攻撃対策
保守委託機関編(第7.0版で新設)サーバ保守を事業者に全面委託している医療機関の管理者・担当者自ら実施すべき遵守項目の一覧と解説、MDS/SDSでの確認事項

保守委託機関編の対象は、すべてのサーバ(医療情報の保存や主要な処理を担う機器。電子カルテアプリを端末にインストールして処理が完結する場合はその端末も含む)のセキュリティアップデート責任を事業者に委託している医療機関です。この条件を満たす医療機関は、概説編と保守委託機関編に対応すれば、ガイドラインを遵守しているものとみなされます。専任のシステム担当者がいない小規模医療機関を想定しており、SaaS型のクラウドサービスを積極的に採用することで、特別な契約なしに保守の委託を実現することを想定しているとされています。

ただし「事業者がセキュリティアップデート責任を負う」ことが契約書・約款・SLA等に記載されている場合に限りこの扱いを選べます。記載がない、または不明確な場合は医療機関側の責任となっている可能性があるため、事業者に直接確認するよう求められています。

この分冊は「自分に関係のない部分を読まなくてよい」という意味ではなく、役割ごとに責任の所在を明確にしたものと理解するのが正確です。とくに経営管理編は、「システムのことは事務長と業者に任せている」という状態を明確に否定しています。

第6.0版から第7.0版で何が変わったか

2026年6月29日付の通知(産情発0629第1号)は、改定の概要として次の点を挙げています。

区分主な改定内容
全体構成保守委託機関編の追加
制度的な動向関連法令にサイバーセキュリティ基本法を追加し、サプライチェーンリスクを追記。経済産業省・総務省ガイドライン第2.0版への改定を踏まえ、事業者との役割分担やリスクコミュニケーションを追記。クラウドサービスの積極的な活用を推進する旨を追記
技術的・社会的な動向パスワードの使い回し禁止・アカウントロックを追記し、「定期的な変更」の要件を削除。二要素認証はクライアント端末とサーバで対応することを明確化し、2027年(令和9年)4月1日時点で対応が困難な医療機関等には次期システム改修での対応を許容する緩和措置を設定

あわせて、厚生労働省の「医療機関・薬局におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト」も令和8年度版が公表されています。チェックリストには、立入検査時に確認すること、令和8年度中にすべての項目で「はい」となるよう取り組むことが記載されています。

対象は規模を問わない

ガイドラインが対象とするのは、「全ての医療情報システムの導入、運用、利用、保守及び廃棄に関わる者」です。概説編は、医療機関等の範囲として病院、一般診療所、歯科診療所、助産所、薬局、訪問看護ステーション、介護事業者、医療情報連携ネットワーク運営事業者等を挙げています。

ここを誤解している医療機関が少なくありません。病院・診療所・歯科医院・薬局を問わず、また規模の大小を問わず対象になります。 「うちは10人のクリニックだから大病院向けの話だ」という整理は成り立ちません。電子カルテを使い、レセプトを電子請求し、オンライン資格確認を導入している時点で、対象です。

とはいえ、対象であることと、大病院と同じ体制を組むこととは別です。ガイドラインはリスクに応じた対応を求めており、リスクの大きさは規模や取扱情報量によって変わります。小規模施設が現実的にどこから着手すべきかは 小規模クリニックのガイドライン対応|どこまでやるか で扱います。

もうひとつ重要なのが、委託しても責任は移転しないという原則です。電子カルテベンダーやクラウド事業者に運用を任せていても、患者情報に対する管理責任は医療機関に残ります。ベンダーが3省2ガイドラインに準拠していることは前提条件であって、それをもって自院の責任が消えるわけではありません。この点は 経営管理編の要点|経営層が負う責任 の中心論点です。

運用を助ける文書(Q&A・チェックリスト)

本文だけでは判断がつかない場面を補う文書も公表されています。第7.0版に対応するQ&Aは厚生労働省のガイドラインページに掲載されており、チェックリストは前述のとおり令和8年度版が出ています。以下は第6.0版の時期、2025年に公表された文書です。

1. 第6.0版に関するQ&A(2025年5月)

厚生労働省が第6.0版に関するQ&Aを公表しました。本文の抽象的な記述について、実務上どう解釈するかの手がかりになります。自院で「ここまでやれば足りるのか」と迷う論点は、まずQ&Aに同種の問いがないかを確認するのが早道です。

2. 医療機関等におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト および マニュアル(2025年5月14日)

同じく厚生労働省から、チェックリストとその解説マニュアルが公表されました。従来のものより具体的・実践的で、クラウド環境・BCP・IoT機器・BYODへの言及が加わっています。

この2つは性質が違います。ガイドライン本文が「何を満たすべきか」を示すのに対し、チェックリストは「いま自院がどこに立っているか」を確認する道具です。着手の順序としては、チェックリストで現状を把握し、足りない部分をガイドラインの該当編で読み込むのが現実的です。

どの編から読むか

役職別の読み始め方を整理すると次のようになります。

立場最初に読む次に読む
院長・理事長・事務長概説編 → 経営管理編企画管理編(何を部下に求めるかの確認)
情報システム担当・医療情報部門概説編 → 企画管理編システム運用編
実際に運用する担当者・委託先窓口システム運用編企画管理編(自分の作業の根拠の確認)
サーバ保守を全面委託している小規模クリニック概説編 → 保守委託機関編契約書・SLAでセキュリティアップデート責任の記載を確認
医事課・診療情報管理士概説編システム運用編(ログ・アクセス管理の章)

本サイトでは、それぞれの編を独立した記事として解説しています(各編の記事は第6.0版の記述をもとにした解説です。第7.0版での変更点は上の表を参照してください)。

クラウドサービスを使っている場合の追加論点は 医療機関のクラウドセキュリティ、システム更新・新規導入のタイミングで設計に織り込む考え方は セキュリティ・バイ・デザイン、対応の実務手順は 3省2ガイドライン対応の実務ステップ をご覧ください。

委託先の事業者がどういう水準を求められているかを発注側として理解しておきたい場合は、事業者側の認証制度をまとめた ISMS(ISO/IEC 27001)とは が参考になります。

まとめ

  1. 2026年度改定で、ガイドライン準拠と専任の安全管理責任者の配置が加算の要件になった。セキュリティは「やったほうがよいこと」から算定要件に変わった
  2. 入院に係る区分では、加算1(160点)に複数方式バックアップ(一部オフライン)とサイバーBCP・訓練が上乗せ要件として置かれている
  3. 現行の第7.0版(2026年6月)は5編構成(概説編/経営管理編/企画管理編/システム運用編/保守委託機関編)。サーバ保守を全面委託している医療機関は概説編と保守委託機関編への対応で遵守とみなされる
  4. 対象は「全ての医療情報システムに関わる者」で、規模・種類を問わない。ただし求められる対応の深さはリスクに応じて変わる
  5. 委託しても医療機関の責任は移転しない。ベンダーの準拠は前提条件であって免責ではない
  6. 着手は、最新のチェックリスト(令和8年度版)で現状把握 → 足りない部分を該当編で読む順序が現実的

自院だけで体制を組み立てるのが難しい場合や、加算の届出に向けて何から手を付けるべきか整理したい場合は、お問い合わせ からご相談ください。委託先の事業者側でセキュリティ体制の証明が必要なケースについては ISMS認証取得支援 でも対応しています。

よくある質問

Q. 医療情報システムの安全管理に関するガイドラインとは何ですか?
A. 厚生労働省が、医療機関等における医療情報システムの安全管理や、e-文書法等の法令への適切な対応のために、技術的・運用管理上の対策を示した文書です。経済産業省・総務省の事業者向けガイドラインと合わせて「3省2ガイドライン」と呼ばれます。
Q. 医療情報システムの安全管理に関するガイドラインの最新版は何版ですか?
A. 2026年10月時点の最新版は第7.0版です。2026年6月29日付の通知(産情発0629第1号)で策定が周知されました。第6.0版は2023年5月に策定された版です。
Q. ガイドラインはどのような構成になっていますか?
A. 第7.0版は、概説編(全読者)、経営管理編(経営層)、企画管理編(システムの安全管理者)、システム運用編(システム運用担当者)、保守委託機関編(サーバ保守を事業者に全面委託している医療機関の管理者・担当者)の5編で構成されています。
Q. 小さなクリニックもガイドラインの対象ですか?
A. 対象です。病院・一般診療所・歯科診療所・薬局などで、医療情報システムの導入・運用・利用・保守・廃棄に関わる全ての者が対象です。ただし第7.0版では、SaaS型の電子カルテなどでサーバのセキュリティアップデートを事業者に全面委託している医療機関向けに、遵守項目を絞った保守委託機関編が設けられました。

参考・出典

※ガイドラインは改定され、診療報酬の算定要件は疑義解釈によって運用が明確化されます。本記事の内容は執筆時点の公表資料に基づくものです。届出・算定の判断は、必ず最新の通知および地方厚生局の確認に基づいて行ってください。

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