この記事の要点
- 3省2ガイドラインとは、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(医療機関向け、現行第7.0版)と、経済産業省・総務省の「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」(事業者向け、現行第2.0版)の総称です。
- 診療録などを電子保存するときは、真正性・見読性・保存性の3条件(電子保存の三原則)を満たす必要があります。根拠は平成17年の厚生労働省の施行通知です。
- 真正性は改ざん・消去・混同の防止と作成責任の明確化、見読性は必要なときに直ちに画面表示・書面化できること、保存性は保存期間中に復元可能な状態で保存することを求めています。
- 電子カルテ導入時は、製品・事業者の準拠状況、責任分界、院内の運用ルール、バックアップを確認します。
電子カルテやクラウドサービスの導入を検討すると、必ず目にするのが「3省2ガイドライン」という言葉です。しかし、具体的に何を定めたもので、医療機関としては何を確認すればよいのか、分かりにくいと感じる方も多いでしょう。本記事では、3省2ガイドラインとは何かをわかりやすく解説し、電子カルテ導入時に必ずチェックすべきポイントを整理します。
3省2ガイドラインとは?
「3省2ガイドライン」とは、医療情報を安全に取り扱うために、3つの省庁が定めた2つのガイドラインの総称です。医療情報システムの安全管理について、医療機関側とシステム事業者側の役割を分けて示しているのが特徴です。
| 対象 | ガイドライン | 所管 | 現行版 |
|---|---|---|---|
| 医療機関 | 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン | 厚生労働省 | 第7.0版(2026年6月) |
| システム・サービス事業者 | 医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン | 経済産業省・総務省 | 第2.0版(2025年3月) |
かつては総務省と経済産業省が別々にガイドラインを出しており「3省4ガイドライン」と呼ばれた時期もありましたが、両者が統合され、現在は「3省2ガイドライン」の体制になっています。
なぜ重要なのか
電子カルテには、患者の氏名・病名・検査結果といった極めて機微な個人情報が集まります。これらが漏えい・改ざん・消失すれば、患者の不利益はもちろん、医療機関の信頼にも重大な影響を及ぼします。3省2ガイドラインは、こうしたリスクから医療情報を守るための「守るべき基準」を示すものであり、電子カルテを安全に運用するうえでの土台となります。
電子保存の三原則(真正性・見読性・保存性)
診療録(カルテ)など、法令で保存が義務づけられた文書を紙ではなく電子媒体で保存するには、真正性・見読性・保存性の3条件を満たす必要があります。これが「電子保存の三原則」です。
根拠は、e-文書法の施行に合わせて出された厚生労働省の通知「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律等の施行等について」(平成17年3月31日、医政発第0331009号ほか。以下「施行通知」)です。施行通知は、電磁的記録で保存する場合は「次の三条件を満たさなければならない」としており、安全管理ガイドライン(第7.0版)もこの3条件の確保を前提にしています。
| 原則 | 施行通知が求めること | 具体的に求められる状態 |
|---|---|---|
| 真正性 | 保存期間中の改変・消去の事実の有無と内容を確認できる措置を講じ、作成の責任の所在を明らかにすること | 故意・過失による虚偽入力、書換え、消去、混同を防止する。作成の責任の所在を明確にする |
| 見読性 | 必要に応じて、直ちに明瞭かつ整然とした形式で画面に表示し、書面を作成できるようにすること | 必要に応じて肉眼で見読可能な状態に容易にできる。必要に応じて直ちに書面に表示できる |
| 保存性 | 保存すべき期間中、復元可能な状態で保存できる措置を講じること | 法定の保存期間を通じて、データが消失・劣化せず、読み出せる状態で残る |
真正性:誰が・いつ書いたか、改ざんされていないか
ガイドラインのシステム運用編は、真正性を「正当な権限で作成された記録に対し、虚偽入力、書換え、消去及び混同が防止されており、かつ、第三者から見て作成の責任の所在が明確であること」と説明しています。「混同」は、患者を取り違えた記録や、記録どうしの関連づけの誤りを指します。
実務では、利用者ごとのID・認証、記録の確定操作、更新履歴(誰がいつ何を変えたか)の保存が中心になります。代行入力を認める場合は、入力者と確定者の責任関係が分かる仕組みが必要です。
見読性:必要なときにすぐ読めるか
診療中はもちろん、患者への開示や監査・訴訟の場面でも、記録をすぐに画面に表示し、紙に出力できることが求められます。システム障害時に参照できない状態が続くと見読性が損なわれるため、障害時の閲覧手段(参照用の端末・出力手順など)もあわせて考えます。
保存性:保存期間中に読み出せる状態で残っているか
媒体の劣化やウイルス・ランサムウェアによる破壊、システム更新時のデータ移行の失敗などで、記録が読めなくなる事態を防ぐことが求められます。バックアップと、標準的なデータ形式の採用(システム更新後も復元できるように)が主な対策です。ガイドラインも、保存性の要件に対応するため標準規格を採用することを求めています。
このほか、アクセス権限の管理、二要素認証などの認証、サイバー攻撃対策など、運用面での安全管理も求められます。
電子カルテ導入時のチェックポイント
1. 製品・事業者がガイドラインに準拠しているか
まず、検討中の電子カルテやクラウドサービスが、事業者向けガイドラインに準拠しているかを確認します。ベンダーに「3省2ガイドラインへの準拠状況」を明示してもらいましょう。
2. 責任分界点(役割分担)が明確か
クラウド型では、セキュリティ対策のどこまでを事業者が担い、どこからが医療機関の責任かという「責任分界点」が重要です。契約書やサービス仕様で確認しておきます。
3. 医療機関側の運用ルールが整備できるか
ガイドライン準拠の製品を導入しても、パスワード管理やアクセス権限、退職者のアカウント削除といった院内の運用ルールが伴わなければ意味がありません。導入とあわせて運用体制を整えましょう。
4. バックアップと事業継続性
障害やサイバー攻撃に備え、データのバックアップや復旧の仕組みが用意されているかを確認します。
ガイドラインは更新される点に注意
3省2ガイドラインは、技術の進展や新たな脅威に対応して継続的に改定されています。医療機関向けの「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」は2026年6月に第7.0版が策定され、サイバーセキュリティ基本法への対応、パスワードの「定期的な変更」要件の削除、二要素認証の対象の明確化、小規模医療機関向けの保守委託機関編の新設などが行われました。チェックリストのように自院の状況を点検したい場合は 3省2ガイドライン チェックリスト、医療機関向けガイドラインの構成は 医療情報システムの安全管理に関するガイドラインとは をご覧ください。導入時・運用時には、必ず最新版と公式のQ&Aを参照することが重要です。
AIカルテのガイドライン対応
AIネイティブ電子カルテ「AIカルテ」は、3省2ガイドラインに準拠したクラウド環境で提供され、アクセス権限管理・認証・バックアップなど、安全管理に必要な仕組みを備えています。レセコン一体型で患者情報を同一基盤に集約しつつ、音声入力やAIレセチェックといった機能も、同じセキュリティ基準の中で安全に利用できます。責任分界点や運用体制についても、導入時に個別にご説明しています。
おわりに
3省2ガイドラインは、「医療機関向け」と「事業者向け」の2つのガイドラインからなり、医療情報を安全に守るための基準を示しています。電子カルテ導入時は、製品・事業者の準拠状況、責任分界点、院内の運用ルール、バックアップ体制を確認し、あわせて最新版のガイドラインを参照することが欠かせません。安全管理は導入して終わりではなく、継続的に見直すものと捉えましょう。
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よくある質問
- Q. 3省2ガイドラインとは何ですか?
- A. 医療情報を安全に扱うために、3つの省(厚生労働省・経済産業省・総務省)が定めた2つのガイドラインの総称です。医療機関向けが厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」、システム・サービス事業者向けが経済産業省・総務省の「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」です。
- Q. 電子保存の三原則とは何ですか?
- A. 診療録などの法定保存文書を電子媒体に保存するときに満たすべき3つの条件で、真正性・見読性・保存性を指します。平成17年3月31日の厚生労働省の施行通知(医政発第0331009号ほか)で定められ、安全管理ガイドラインもこれを前提にしています。
- Q. 3省2ガイドラインの最新版はどれですか?
- A. 2026年10月時点で、厚生労働省のガイドラインは第7.0版(2026年6月策定)、経済産業省・総務省のガイドラインは第2.0版(2025年3月公表)です。いずれも改定されるため、利用時は各省のページで最新版を確認してください。
- Q. クリニックも3省2ガイドラインの対象ですか?
- A. 対象です。厚生労働省のガイドラインは、病院・一般診療所・歯科診療所・薬局などで医療情報システムの導入・運用・利用・保守・廃棄に関わる者を対象としており、規模による除外はありません。第7.0版では、サーバの保守を事業者に全面委託している小規模医療機関向けに保守委託機関編が設けられました。
参考・出典
- 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版(厚生労働省)
- 医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン 第2.0版(経済産業省・総務省)
- 「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン第2.0版」の公表(総務省、2025年3月28日)
- 「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第7.0版」の策定について(産情発0629第1号、2026年6月29日)
- 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版 システム運用編(PDF)
- 民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律等の施行等について(平成17年3月31日 医政発第0331009号ほか)