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【2026年度診療報酬改定】全科共通事項 — 本体+3.09%をどう取り切るか

本体改定率+3.09%は約30年ぶりの高水準ですが、増点の大半は賃上げと物価対応にひも付いた点数です。届出をしなければ受け取れません。初再診料、外来・在宅物価対応料、ベースアップ評価料、電子的診療情報連携体制整備加算、生活習慣病管理料、長期収載品の負担増まで、全診療科に共通する変更点と施行スケジュールを整理しました。

2026年7月30日

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2026年(令和8年)6月1日、令和8年度診療報酬改定が施行されました。本体改定率は**+3.09%**(令和8・9年度の2年度平均)。本体3%超は約30年ぶりの高水準です。

ただし、数字の大きさだけを見て「大幅なプラス改定」と受け取ると、経営判断を誤ります。増点の大半は「ベースアップ評価料」「外来・在宅物価対応料」という使途が事実上ひも付いた点数で入ってくるためです。賃上げを実施しない医療機関は増収の恩恵をほとんど受けられず、届出をしなければそもそも算定できません。

本記事は、診療科を問わず全てのクリニックに共通する変更点を整理したものです。診療科ごとの固有の変更点は、各診療科のレポートをご覧ください。

1. 改定率 — プラス改定の中身

区分改定率備考
本体+3.09%(2年度平均)令8年度 +2.41%/令9年度 +3.77%
 うち賃上げ対応+1.70%令8 +1.23%/令9 +2.18%
 うち物価対応+0.76%令8 +0.55%/令9 +0.97%
 うち食費・光熱水費+0.09%主に入院
 うち緊急対応分+0.44%過去の物価対応
 効率化・適正化による減▲0.15%
薬価等▲0.87%薬価▲0.86%、材料価格▲0.01%
ネット改定率+2.22%

科別の通常改定分は医科+0.28%、歯科+0.31%、調剤+0.08%です。つまり、賃上げ・物価分を除いた「純粋な技術料の増点」は0.28%にすぎません。

今回の最大の特徴は、**令和8年6月と令和9年6月の「2段階施行」**が採用された点です。令和9年6月には物価対応料が倍増し、ベースアップ評価料もさらに増点されます。単年度ではなく2か年で資金計画・賃金計画を立てる必要があります。

2. 基本診療料 — 本体の増点は再診料+1点のみ

項目旧点数新点数(令8.6.1〜)増減
初診料291点291点据え置き
再診料75点76点+1点
電話等再診料75点76点+1点
外来診療料(一般200床以上)76点77点+1点
外来管理加算52点52点据え置き
情報通信機器を用いた初診253点253点据え置き
情報通信機器を用いた再診75点76点+1点(対面と同額)

基本診療料そのものの増点は再診料+1点だけです。実質的な外来単価の増加は、次に述べる2つの上乗せによって生じます。

3. 賃上げ・物価対応 — ここを取り切れるかが分かれ目

外来・在宅物価対応料(新設)

物価高騰への対応として新設されました。届出不要で全保険医療機関が基本診療料に上乗せ算定できます(自動算定扱い)。

算定場面令8.6〜令9.6〜
初診時2点4点
再診時等2点4点
訪問診療時3点6点

届出不要とはいえ、レセコンの改修が済んでいなければ算定されません。6月以降のレセプトで算定漏れがないか確認してください。

外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の大幅増点

区分旧(令6改定)令8.6〜令9.6〜
初診時(新規届出)6点17点34点
初診時(令6・7年度から継続実施)6点23点40点
再診時等(新規)2点4点8点
再診時等(継続実施)2点6点10点
訪問診療(同一建物外)28点79点158点

主な要件変更は次のとおりです。

  • 賃上げ目標:令和8・9年度に各年**+3.2%**のベースアップ(役員・院長本人を除く)。**看護補助者・事務職員は+5.7%**が目標。
  • 対象職種の拡大:「主として医療に従事する職員」から「保険医療機関に勤務する職員」へ拡大され、事務職員(医事課等)が明確に対象になりました。40歳未満の勤務医も追加されています(開設者・院長は対象外)。
  • 既に届出済みの医療機関も再届出(賃金改善計画書の再提出)が必要です。
  • 賃上げ未実施の場合の減算規定が新設されました(入院基本料での減算例あり。無床クリニックへの適用範囲は要一次確認)。

初診17〜23点・再診4〜6点は、外来中心のクリニックにとって決して小さくありません。未届出はそのまま取り損になります。 一方で賃金改善計画書と実績報告の事務負担が増えるため、社労士・税理士と連携した給与テーブルの改定が急務です。令和6年度からの届出実績の有無で点数が変わる点にも注意してください。

4. 医療DX関連 — マイナ保険証利用率が実績要件になった

今回の改定で、医療情報取得加算(初診1点・再診1点)と医療DX推進体制整備加算(初診時8〜12点・6区分)は廃止され、両者を統合・改組した電子的診療情報連携体制整備加算が新設されました。

区分点数主な上乗せ要件
初診時 加算115点(月1回)電子処方箋+電子カルテ情報共有サービス(CLINS)の両方に対応
初診時 加算29点(月1回)電子処方箋またはCLINSのいずれか一方に対応
初診時 加算34点(月1回)基本体制要件のみ
再診時・外来診療料2点(月1回)区分なし

共通の施設基準は、電子レセプト請求、明細書無料交付、オンライン資格確認の導入と診察室等での活用体制、マイナ保険証利用率30%以上(3か月前のレセプトベースで判定)、上位区分ではHL7 FHIR形式での3文書6情報の送受信体制です。

実務上、重要な注意点が3つあります。

  1. 旧加算からの自動移行はありません。 新規届出が必要です(届出期限は令和8年5月7日との情報あり:要一次確認)。
  2. マイナ保険証利用率30%が実績要件として本格導入されました。 30%未満のクリニックは加算を丸ごと失います。窓口での声かけとカードリーダー運用の改善が、そのまま収益に響きます。
  3. 電子処方箋・電子カルテ情報共有サービスが未導入だと加算3(4点)止まりです。旧医療DX加算(8〜12点)と比べて減収になるケースがあります。

なお、遠隔医療関連では**遠隔電子処方箋活用加算(月1回10点)**が新設されたとの情報があります(要一次確認)。

5. 生活習慣病管理料 — 点数は据え置き、運用が変わった

生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)の基本点数は据え置き((Ⅰ)610〜760点、(Ⅱ)333点)ですが、運用ルールが大きく変わりました。

変更点内容実務影響
包括範囲の縮小(Ⅱ)併算定可能な医学管理料が16項目→37項目に拡大出来高算定の余地が拡大。レセコン設定の見直しが必須
検査要件の強化(Ⅰ)6か月に1回以上の血液検査実施が算定要件に追加検査間隔の院内管理(リコール)体制の整備が必要
療養計画書患者署名は廃止。作成・交付・説明・同意は引き続き必須事務負担は軽減。同意の記録方法を院内ルール化
眼科・歯科連携の評価(新設)糖尿病患者について眼科・歯科と連携した場合に各60点・年1回(要一次確認)逆紹介先リストの整備
外来データ提出加算→充実管理加算へ再編データ提出評価を改組し質評価を強化令8.3.31時点で届出済みの医療機関にはみなし措置あり

特に注意が必要なのは**(Ⅰ)の6か月採血要件**です。実施漏れがそのまま算定要件の不成立につながるため、対象患者を数百人抱えるクリニックでは、最終採血日を人の記憶で管理するのは現実的ではありません。

6. 長期収載品の患者負担が実質倍増

長期収載品の選定療養について、患者負担が価格差の「1/4」から「1/2」に引き上げられました(2026年6月1日施行)。

例えば先発品100円・後発品60円なら、特別料金は10円から20円(税抜)になります。対象品目リストは2026年4月1日に更新されました。

このほか、薬局の時間外調剤(緊急性がない場合)、近視進行抑制点眼薬(アトロピン等)などが選定療養の新設項目として加わっています。

院内掲示に加えて自院WebサイトへのWeb掲載の両方が必須であり、費用は税込総額表示です。先発品を希望する患者への説明負担が増えるため、説明資材と掲示物の更新が必要です。

7. 施行スケジュールと経過措置

時期内容
2025年12月19日改定率決定(本体+3.09%/薬価等▲0.87%)
2026年3月5日告示(厚労省告示第69号)・改定説明資料公表
2026年4月1日薬価・材料価格改定施行。長期収載品選定療養の対象品目更新
2026年6月1日診療報酬本体施行。物価対応料・ベースアップ評価料新点数・電子的診療情報連携体制整備加算・長期収載品1/2負担など開始
2026年9月30日一部施設基準の経過措置期限(項目ごとに要一次確認)
2027年5月31日BCP策定要件等の経過措置期限(要一次確認)
2027年6月1日第2段階施行:物価対応料が倍増、ベースアップ評価料さらに増点

8. AIカルテはこの改定にどう効くか — 機能単位で見る

今回の改定に一本の筋を通すと、「要件を満たしていることをデータで示せるか」に行き着きます。マイナ保険証の利用率、採血の間隔、賃金改善の実績、加算の届出区分。どれも、日々の診療のなかで自然に記録が残る仕組みがなければ、後から集めるのは大変です。ポテックのAIカルテがこの手間をどう引き受けるのか、機能ごとにご紹介します。

機能1:会計・レセプト管理 — 新設・改組された加算の算定漏れを防ぐ

自動算定エンジンが包括・背反・回数制限をチェックし、加算の算定可否を自動判定します。

今回の改定は「廃止された加算」と「新設された加算」が入り組んでいます。医療情報取得加算と医療DX推進体制整備加算が廃止され、電子的診療情報連携体制整備加算に置き換わり、しかも初診時は月1回・区分は3つ。物価対応料は届出不要で自動算定。このルール変更をレセコン任せにせず、算定可否をシステム側で判定できる状態が、6月以降の請求精度を左右します。

機能2:会計・レセプト管理 — 6か月採血要件を期限で管理する

生活習慣病管理料(Ⅰ)の「原則6か月に1回以上の血液検査」は、実施漏れがそのまま算定要件の不成立につながります。オーダー履歴から「最終採血日が5か月を超えた患者」を抽出できる仕組みは、そのまま収益防衛になります。 同じ構造は、月1回・年1回といった回数制限のある加算全般に当てはまります。

機能3:外部連携・API — 電子処方箋とCLINSにつなぐ

OAuth2ゲートウェイ、MCPサーバー、HAPI FHIRに対応し、外部システムと連携できます。

電子的診療情報連携体制整備加算の上位区分(15点・9点)は、電子処方箋と電子カルテ情報共有サービス(CLINS)への対応が条件です。HL7 FHIR形式での3文書6情報の送受信体制が要件に含まれており、加算3(4点)と加算1(15点)の差は、そのまま連携基盤を持っているかどうかの差です。旧医療DX加算(8〜12点)の水準を維持できるかは、ここにかかっています。

機能4:患者向けPHRアプリ「ポテ君」連携 — マイナ保険証利用率30%を現実的な数字にする

処方箋のOCR取り込みと服薬リマインダ、受診予約、LINEログインとPush通知に対応します。

マイナ保険証利用率30%は、窓口の声かけだけで達成しようとすると受付の負担が跳ね上がります。受診前に患者側へ案内が届く仕組みがあると、窓口で説得する回数そのものを減らせます。 加算の実績要件が患者側の行動に依存する以上、患者との連絡手段を持っていることが要件充足の前提になります。

機能5:経営分析ダッシュボード — 加算取得率を月次で追う

来院実績・患者単価・月次推移を自動集計し、可視化します。

要件対応が算定可否を分ける改定では、経営指標そのものが変わります。患者数だけでなく、**「対象患者のうち何%で加算を算定できているか」「マイナ保険証利用率は何%か」**が管理指標になります。令和9年6月には第2段階の増点が控えており、2か年での資金・賃金計画を立てるうえでも、月次の実績を追える状態が土台になります。

本記事の位置づけ

本記事の点数・要件は、厚生労働省・中医協の公表資料および各社の解説記事等の二次情報をもとに整理したものです。実際の算定・届出にあたっては、厚生労働省の告示(令和8年厚生労働省告示第69号ほか)・通知・疑義解釈といった一次情報を必ずご確認ください。 特に「要一次確認」と付記した箇所は注意が必要です。

出典(主要)

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本記事の位置づけ本記事の点数・加算・改定内容・費用相場は、コンサルティング会社・税理士法人・各医療機関の公表資料等の二次情報を基に整理したものです。実際の算定・届出・投資判断にあたっては、厚生労働省の告示・通知等の一次情報を必ずご確認ください。

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