内科クリニックの外来収益の柱である生活習慣病管理料は、今回基本点数が据え置かれました。(Ⅰ)610〜760点、(Ⅱ)333点。数字だけ見れば「変化なし」です。
しかし実際に変わったのは、点数ではなく評価の構造です。データを提出し、アウトカムを他院と相対比較され、上位20%・上位50%・それ以外で加算額が変わる仕組みが入りました。「算定できるかどうか」から「どの区分で算定できるか」へと問いが変わっています。
1. 主な変更点
| 項目 | 変更内容 | 新旧点数 | 影響度 |
|---|---|---|---|
| 生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ) | 本体点数は据え置き。(Ⅰ)に「6月に1回以上の血液検査」が要件化。療養計画書の患者署名は廃止 | (Ⅰ)610/660/760点・(Ⅱ)333点(据え置き・要一次確認) | 大 |
| 生活習慣病管理料(Ⅱ)の包括範囲縮小 | 併算定可能な医学管理料が16項目→37項目に拡大。特定薬剤治療管理料・喘息治療管理料等が包括から除外 | ―(出来高化で実質増収余地) | 中 |
| 充実管理加算(新設) | 外来医療等調査へのデータ提出+アウトカム実績の相対評価。上位20%=加算1、上位50%=加算2、それ以外=加算3。従来の外来データ提出加算(50点)は廃止・移行 | 新設 30点/20点/10点(要一次確認) | 大 |
| 地域包括診療加算・診療料の再編 | 認知症地域包括診療加算・料を統合。対象患者に「脂質異常症・高血圧・糖尿病・慢性心不全・慢性腎臓病のいずれか+要介護等」を追加し、1疾患でも算定可能な類型を新設 | 診療料1:1,660→1,661点、加算は28/21点等据え置き(要一次確認) | 中 |
| 外来データ提出加算(地域包括診療料等・新設) | レセプト・診療内容データの継続提出を評価 | 新設 10点/月(要一次確認) | 小 |
| 在宅医療の充実体制評価 | 在宅医療充実体制加算の増点、訪問診療薬剤師同時指導料の新設 | 在宅医療充実体制加算 800点(+400点・単一建物1人)、訪問診療薬剤師同時指導料 300点新設(要一次確認) | 中 |
充実管理加算には経過措置があり、令和9年3月31日までは加算1扱いとされています(要一次確認)。この期間中に実績を積み上げられるかが、その後の区分を決めます。
2. 経営インパクトと対応
生活習慣病管理料は本体据え置きですが、実質は「データ提出+アウトカム相対評価」への転換が最大の論点です。
充実管理加算は、届出(年2回:5月・11月)とデータ提出が前提です。未着手のクリニックは、まず加算3(10点)の確保から始めるのが現実的でしょう。そのうえで検査実施率・ガイドライン準拠率を高め、上位区分を狙う段取りになります。上位20%と「それ以外」の差は20点。生活習慣病管理料の対象患者を月300人抱えるクリニックなら、月6,000点=6万円、年間72万円の差になります。
(Ⅰ)の6か月採血要件は、算定漏れ・返戻リスクに直結します。 高血圧・脂質異常症の患者を数百人単位で抱えるクリニックで、全員の最終採血日を人が把握し続けることは現実的ではありません。検査オーダーの自動リマインドを電子カルテに組み込むべき性質の要件です。
療養計画書の署名廃止は、外来オペレーション短縮の好機です。ただし作成・交付・説明・同意そのものは引き続き必須であり、同意をどう記録するかを院内ルールとして決め直す必要があります。
地域包括診療加算は「1疾患+要介護」への対象拡大で、算定可能な患者が増えます。 ケアマネジャーとの連携体制と介護保険情報の把握体制を再点検し、かかりつけ医機能報告制度と一体で届出戦略を組んでください。
3. 実務チェックリスト
- 充実管理加算の届出時期(5月・11月)を年間スケジュールに組み込んだか
- 生活習慣病管理料(Ⅰ)算定患者の最終採血日を抽出できる状態か
- (Ⅱ)の包括範囲縮小に合わせてレセコンの併算定設定を更新したか
- 療養計画書の同意記録の方法を院内で決め直したか
- 地域包括診療加算の対象拡大に伴い、要介護認定情報を把握できているか
4. AIカルテはこの改定にどう効くか — 機能単位で見る
内科の2026年は、「算定できるか」ではなく「どの区分で算定できるか」を問われる年になりました。区分を決めるのは、日々の診療で自然に積み上がるデータです。ポテックのAIカルテがどう支えるのか、機能ごとにご紹介します。
機能1:会計・レセプト管理 — 6か月採血要件を期限で管理する
自動算定エンジンが包括・背反・回数制限をチェックし、加算の算定可否を自動判定します。
生活習慣病管理料(Ⅰ)の6か月採血要件は、実施漏れがそのまま算定要件の不成立につながります。オーダー履歴から「最終採血日が5か月を超えた患者」を抽出できる仕組みは、そのまま収益防衛になります。 (Ⅱ)の包括範囲が16項目から37項目に広がったことも、併算定の可否判定が自動化されていなければ算定漏れの温床になります。
機能2:経営分析ダッシュボード — 充実管理加算の区分を自分で読む
来院実績・患者単価・月次推移を自動集計し、可視化します。
充実管理加算の区分は相対評価で決まります。つまり自院の実績値を把握していなければ、どの区分を狙えるのかも分からない状態になります。生活習慣病管理料の算定率、検査実施率、血圧・HbA1cのコントロール状況を月次で追える状態が、経過措置期間(令和9年3月まで)に実績を積み上げるための前提です。
機能3:カルテ・オーダー作成 — 療養計画書と指導記録を揃える
診察中の音声からAIがSOAPカルテを生成し、セットオーダーで検査・処方を一括入力できます。
署名は廃止されましたが、説明と同意の事実は記録として残す必要があります。記録の形式が医師ごとにばらついていると、要件充足の証明が難しくなります。 テンプレートと音声入力で記録形式を揃えられることは、指導対策としても意味を持ちます。
全科共通事項もあわせてご確認ください
初再診料、外来・在宅物価対応料、ベースアップ評価料、電子的診療情報連携体制整備加算、長期収載品の負担増など、診療科を問わず適用される変更点は「全科共通事項」にまとめています。とくにマイナ保険証利用率30%以上が加算の実績要件になった点は、患者数の多い内科ほど影響が大きくなります。
出典(主要)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- med-cpa「生活習慣病管理料の見直しを徹底解説」 https://med-cpa.jp/hoshu-13/
- med-cpa「地域包括診療加算等の見直し」 https://med-cpa.jp/hoshu-14/
- 佐々木総研「生活習慣病管理料・充実管理加算」 https://www.sasakigp.co.jp/column/10029734
- 東京保険医協会「2026年度診療報酬改定 中医協答申(抜粋)」 https://www.hokeni.org/docs/2026021200012/