この記事の要点
- SOAPとは、カルテの経過記録をS(Subjective:主観的情報)、O(Objective:客観的情報)、A(Assessment:評価)、P(Plan:計画)の4項目に分けて書く記載方法です。
- SOAPは、L. L. Weedが1968年にNew England Journal of Medicineで示した問題志向型診療記録(POMR)の経過記録の書式で、問題(プロブレム)ごとに書くのが基本です。
- よくある誤りは、患者の訴えと医師の所見の混同(SとOの取り違え)と、A(評価)の空欄や所見の繰り返しで、Aには医師の判断を書きます。
- 音声入力やAIで作ったSOAPは下書きであり、医師法第24条により診療録を記載する責任は医師にあるため、医師が内容を確認・修正してから確定する必要があります。
「SOAPで書くように言われたが、SとOの区別があいまい」「Aに何を書けばよいかわからない」「音声入力でSOAPが自動で作られるようになったが、どこまで確認すればよいのか」——診療所で新しく働き始めた医師や、カルテの記載を補助する医療事務・クラークの方からよく聞かれる疑問です。本記事では、SOAPの意味と成り立ち、各項目に書く内容、診療科別の記載例、よくある誤り、電子カルテのテンプレートや音声入力からSOAPを作るときの注意を整理します。
免責:本記事は2026年10月31日時点の公表情報にもとづく一般的な情報提供です。記載例は説明のために作成した架空のもので、特定の患者・症例の診断や治療方針を示すものではありません。診療録の記載方法は、法令のほか各医療機関の記載基準に従ってください。
SOAPとは
SOAPとは、カルテの経過記録を次の4項目に分けて書く記載方法です。
| 項目 | 英語 | 意味 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| S | Subjective | 主観的情報 | 患者(または家族)が話した訴え・症状・経過・生活の様子 |
| O | Objective | 客観的情報 | バイタルサイン、診察所見、検査結果、画像所見など |
| A | Assessment | 評価 | SとOをふまえた医師の判断(診断・鑑別・重症度・経過の評価) |
| P | Plan | 計画 | 検査・治療・処方・説明・指導・次回予定などの方針 |
情報(S・O)と判断(A)と行動(P)を分けて書くことで、ほかの医師やスタッフが読んだときに「何を根拠に、どう考え、何をしたか」をたどりやすくなります。
SOAPとPOS・POMRの関係
SOAPは単独の書式ではなく、**POS(Problem Oriented System:問題志向型システム)**という考え方の中で生まれたものです。
- POS:患者が抱える問題(プロブレム)に焦点をあて、問題ごとに診療と記録を進める考え方
- POMR(Problem Oriented Medical Record:問題志向型診療記録):POSにもとづく診療記録の形式。基礎データ、問題リスト、初期計画、経過記録などで構成される
- SOAP:POMRのうち、経過記録を書くときの書式
POMRは、米国の医師L. L. Weedが1968年にNew England Journal of Medicineに発表した論文「Medical records that guide and teach」で体系的に示したものです。日本では、日野原重明氏らによって紹介され、医療機関や看護の現場に広がりました。
POMRの考え方では、経過記録は問題ごとに書くのが基本です。問題リストで「#1 高血圧症」「#2 脂質異常症」のように番号を付け、経過記録でも「#1」「#2」ごとにS・O・A・Pを書きます。複数の問題を1つのSOAPにまとめて書くと、どの評価がどの問題に対するものかがわかりにくくなります。
カルテに書くべきことの法的な前提
SOAPは記載の「書き方」であり、法令がSOAP形式を義務づけているわけではありません。一方で、カルテ(診療録)の記載そのものは法令で定められています。
| 根拠 | 内容 |
|---|---|
| 医師法第24条第1項 | 医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない |
| 医師法第24条第2項 | 病院・診療所に勤務する医師の診療録は、その管理者が5年間保存する |
| 医師法施行規則第23条 | 記載事項は、①診療を受けた者の住所・氏名・性別・年齢、②病名及び主要症状、③治療方法(処方及び処置)、④診療の年月日 |
| 保険医療機関及び保険医療養担当規則第22条 | 保険医は、診療を行った場合には、遅滞なく、様式第一号またはこれに準ずる様式の診療録に、診療に関し必要な事項を記載する |
保険診療では、算定要件として「診療録に記載すること」が定められている項目も多くあります。たとえば医学管理料では、管理内容の要点を診療録に記載することが求められるものがあります。SOAPのPに、実施した指導や説明の要点を具体的に書いておくと、算定の根拠を後から確認しやすくなります。
各項目に書く内容と書き方のコツ
S(主観的情報)
患者が話した内容です。主訴、症状の始まりと経過、程度、随伴症状、服薬状況、生活の変化、不安や希望などを書きます。
- できるだけ患者の言葉に近い形で書く(例:「階段で息が切れる」)
- 家族・付き添いから聞いた内容もSに書き、「母より」「妻より」のように情報源を添える
- 「〜はない」という陰性の訴えも重要な情報(例:「胸痛なし」「頭痛なし」)
- 医師の解釈を混ぜない(「心不全による息切れ」はAの内容)
O(客観的情報)
診察や検査で得られた、誰が確認しても同じになる情報です。
- バイタルサイン(体温、血圧、脈拍、SpO2など)
- 身体所見(視診・聴診・触診など)
- 検査値、画像所見、他院からの検査結果
- 測定日時や測定条件(「診察室血圧」「安静後」など)を必要に応じて添える
A(評価)
SとOをふまえた医師の判断です。SOAPの中で最も重要で、最も空欄になりやすい項目です。
- 診断名、または疑われる疾患と鑑別
- 重症度、緊急性
- 前回からの変化(改善・不変・悪化)と、その理由の考察
- 治療効果・副作用の評価
P(計画)
Aにもとづく今後の方針です。
- 検査計画(何を、いつ、なぜ)
- 治療計画(処方の継続・変更・中止、処置)
- 患者・家族への説明や指導の内容(教育計画)
- 次回受診の予定、再受診の目安、紹介の有無
Pを「経過観察」だけで終わらせず、何を観察し、どうなったら何をするかまで書くと、次に診る医師が判断しやすくなります。
診療科別のSOAP記載例
以下は説明のために作成した架空の例です。実際の記載は、患者の状態と各医療機関の記載基準に合わせてください。
内科:高血圧症の定期再診
#1 高血圧症
S:家庭血圧は朝おおむね130台/80台。頭痛・めまいなし。飲み忘れなし。
塩分を控えるよう意識しているとのこと。
O:診察室血圧 136/84 mmHg(安静後)、脈拍 72/分 整。
下腿浮腫なし。家庭血圧手帳を確認。
A:家庭血圧・診察室血圧とも前回より低下傾向。自覚症状なく、
現行治療で経過良好と判断。
P:現処方を継続。家庭血圧の記録を継続するよう説明。
次回4週後、定期採血を予定。
ポイントは、Sに「家庭血圧(患者の記録)」、Oに「診察室で測った血圧」と分けている点です。患者が自宅で測った値は患者からの報告なのでSに、診察室で測定した値はOに書きます(家庭血圧手帳を医師が確認した事実はOに書けます)。
小児科:発熱
#1 発熱
S:母より。昨夜から38℃台の発熱。鼻水と咳あり。
水分はとれており、尿もいつもどおり出ている。機嫌はやや不良。
O:体温 38.2℃。活気あり。咽頭発赤軽度。呼吸音清、陥没呼吸なし。
皮膚の張り良好。
A:上気道炎を疑う。現時点で脱水を示す所見はない。
P:対症療法の薬を処方。自宅での様子の見方を説明し、
水分がとれない、ぐったりしている、呼吸が苦しそう、
熱が続くなどの場合は再受診するよう伝えた。
小児では、Sの多くが保護者からの情報になります。「母より」と情報源を書き、Pに再受診の目安として伝えた内容を残しておくと、夜間に電話相談があった場合などにも経緯を確認できます。
眼科:充血・目やに
#1 右眼 結膜炎
S:2日前から右眼の充血と目やに。かゆみは軽度。
見えにくさの自覚なし。家族に同様の症状の人はいない。
O:視力 右(1.2) 左(1.2)。
細隙灯顕微鏡:右眼 結膜充血、眼脂あり。角膜清明。前房清明。
左眼 異常なし。
A:右眼の結膜炎。角膜に異常所見はみられない。
P:点眼薬を処方。手洗いとタオルの共用を避けるよう説明。
1週後に再診。視力低下や痛みが出た場合は早めに受診するよう伝えた。
眼科では、Oに視力・眼圧・細隙灯顕微鏡所見などを左右を明記して書くことが特に重要です。
よくある書き方の誤り
| 誤り | 例 | 直し方 |
|---|---|---|
| SとOの混同 | Oに「頭痛がする」、Sに「咽頭発赤あり」 | 患者が言ったことはS、医師が確認したことはO |
| Aが空欄 | S・O・Pだけが書かれている | 医師がどう判断したかを1行でも書く |
| AがOの繰り返し | A:「血圧136/84」 | 「前回より低下、経過良好」のように評価として書く |
| Pが「経過観察」だけ | P:「経過観察」 | 何を観察し、いつ再評価し、どうなったら何をするかを書く |
| 問題を分けていない | 高血圧と腰痛を1つのSOAPに書く | 「#1」「#2」と問題ごとに分ける |
| 前回記載のコピー | 前回と同じ文章がそのまま残っている | 今回の診察で確認した内容に直す。変化がなければ「前回から変化なし」と明記する |
| 院内でしか通じない略語 | 独自の略語を多用 | 院内で略語の一覧を決め、それ以外は使わない |
電子カルテでは前回記載のコピー機能が便利な一方、実際には今回確認していない所見が残ってしまうことがあります。コピーした場合は、その日に確認した内容に合わせて必ず書き直します。
看護記録のSOAP
SOAPは看護記録の経過記録でも広く使われています。日本看護協会の「看護記録に関する指針」(2018年)では、経過記録にはいくつかの方法があり、各施設で看護実践が的確に記載される方法を選択するとされています。看護記録のSOAPでは、Aに看護の観点からのアセスメント、Pに看護計画を書くのが一般的です。
電子カルテのテンプレート・音声入力からSOAPを作るときの注意
近年は、電子カルテのテンプレート(定型文)や、診察の会話を音声で取り込んでSOAPの下書きを作る機能が普及しています。記録時間の短縮に役立つ一方で、次の点に注意が必要です。
テンプレート(定型文)の注意
- 定型文の「所見なし」「異常なし」が、実際には診ていない部位にまで入っていないか
- 毎回同じ文章になり、患者ごとの変化が読み取れなくなっていないか
- テンプレートの項目を埋めることが目的になり、Aが形だけになっていないか
音声入力・AIによる下書きの注意
- 数値の聞き違い:血圧、体温、検査値、薬の用量などは特に確認する
- 否定の取り違え:「胸痛はない」が「胸痛あり」になるなど、意味が逆になる誤り
- 患者が話していない内容の混入:会話にない症状や経過が文章として補われていないか
- SとOの振り分け:患者の発言と医師の所見が正しい項目に入っているか
- Aの内容:AIが作るAはあくまで文章の整理であり、評価は医師の判断として医師が書き直す・確認する
医師法第24条により、診療録を記載する責任は医師にあります。音声入力やAIで作ったSOAPは下書きとして扱い、医師が内容を確認・修正してから確定する運用を院内で決めておくことが大切です。音声データや文字起こしの取扱い(保存の有無、保存場所、利用目的)についても、導入前に確認しておきましょう。
まとめ
- SOAPは、カルテの経過記録をS(主観的情報)・O(客観的情報)・A(評価)・P(計画)に分けて書く方法
- SOAPはPOS(問題志向型システム)にもとづくPOMRの経過記録の書式で、問題ごとに書くのが基本
- 患者・家族が話したことはS、診察・検査で確認したことはO。Aには医師の判断を書き、空欄にしない
- Pは「経過観察」だけで終わらせず、何をいつ確認し、どうなったら何をするかまで書く
- テンプレートや音声入力・AIで作ったSOAPは下書きであり、医師が確認・修正してから確定する
音声からSOAPを作る仕組みと精度については 診察の会話からSOAPを自動生成する仕組みと精度のリアル を、内科での具体的な使い方は AI音声入力でSOAPを自動生成|内科診療の記録時間を削減する を参照してください。音声入力の方式の違いは 電子カルテの音声入力の比較 に、AI電子カルテの全体像は AI電子カルテとは に、定型文書をAIで作る考え方は AIによる文書作成とテンプレート にまとめています。
ポテックは、診察の会話からSOAPの下書きを作成し、医師が確認して確定できるクリニック向けのAI電子カルテを提供しています。記載の負担や運用ルールづくりでお困りの際は、お気軽にご相談ください。
よくある質問
- Q. SOAPとは何の略ですか?
- A. Subjective(主観的情報)、Objective(客観的情報)、Assessment(評価)、Plan(計画)の頭文字です。S=患者が話したこと、O=診察・検査でわかったこと、A=それらをふまえた医師の判断、P=今後の方針を書きます。
- Q. SOAPとPOS・POMRの違いは何ですか?
- A. POS(問題志向型システム)は患者の問題に焦点をあてて診療と記録を進める考え方、POMR(問題志向型診療記録)はその考え方にもとづく記録の形式です。SOAPはPOMRのうち、経過記録を書くときの書式にあたります。
- Q. 家族から聞いた内容はSとOのどちらに書きますか?
- A. 家族や付き添いの方が話した内容も、本人の主観的な訴えと同じくSに書きます。その際は「母より」のように、誰からの情報かを書いておくと後から読む人が誤解しません。
- Q. Aには何を書けばよいですか?
- A. SとOをふまえて医師がどう判断したかを書きます。診断名や鑑別、重症度、前回からの変化、治療効果の評価などです。Oの数値をそのまま書き写すだけではAになりません。
- Q. 音声入力やAIで作ったSOAPはそのまま使えますか?
- A. そのまま確定せず、医師が確認・修正してから確定します。数値の聞き違い、否定(「ない」)の取り違え、患者が話していない内容の混入などが起こり得るためです。診療録の記載責任は医師にあります。