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標準型電子カルテとは?2030年目標と民間製品との使い分け

2026年8月3日

標準型電子カルテとは?2030年目標と民間製品との使い分け
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「国が電子カルテを作っているらしい」「2030年には電子カルテが義務化されるのでは」——標準型電子カルテをめぐっては、こうした断片的な情報が先行しがちです。本記事では、標準型電子カルテとは何か、なぜ国が開発しているのか、現在どこまで進んでいるのかを整理し、あわせて「自院は標準型を待つべきか、民間製品を導入すべきか」という判断の考え方をまとめます。

免責:本記事は一般的な情報提供です。開発状況・提供時期・機能範囲は今後変わり得ます。実務では必ず最新の一次情報(デジタル庁・厚生労働省の公式資料、検討会・ワーキンググループの資料等)をご確認ください。

医療DX全体の見取り図は 医療DXとは?国の工程表と3本柱をクリニック目線で解説 で整理しています。

標準型電子カルテとは

標準型電子カルテは、国(デジタル庁)が開発し、医療機関に提供する電子カルテです。民間ベンダーの製品と並んで選択肢の一つとなることを想定しています。

医療DXの3本柱のうち「②電子カルテ情報の標準化等」に位置づけられる施策で、開発の狙いは主に次の2点です。

  • 電子カルテ未導入の医療機関の解消:規模の小さい診療所を中心に、電子カルテを導入していない医療機関が一定数残っている
  • 標準規格に準拠したデータの流通:情報共有の前提となる標準規格(HL7 FHIR等)に最初から対応した電子カルテを広げる

つまり標準型電子カルテは、単体の製品というより全国医療情報プラットフォームにデータを流し込むための入口として構想されている、という理解が実態に近いといえます。

なぜ国が電子カルテを作るのか

電子カルテ情報共有サービスやPMHのような情報共有の仕組みは、そもそも医療機関側にデータが電子的に存在していなければ機能しません。紙カルテのままの医療機関が残る限り、全国的な情報共有には空白が生じます。

一方で、電子カルテを導入していない医療機関には、費用負担、運用変更の負担、そもそも規模が小さく投資回収が難しいといった事情があります。民間市場に任せるだけでは普及が進まない層に対して、国が直接手当てするという判断が背景にあります。

普及率の実態

厚生労働省が2025年1月に公表した調査によれば、電子カルテの普及状況は次のとおりです(令和5年)。

区分普及率
一般病院(全体)65.6%
400床以上93.7%
200〜399床79.2%
200床未満59.0%
一般診療所55.0%

大規模病院はほぼ導入済みである一方、200床未満の中小病院と一般診療所が半数強にとどまっていることが分かります。ここが標準型電子カルテの主戦場です。平成20年(一般病院14.2%、一般診療所14.7%)からの伸びを見ると普及は着実に進んでいますが、2030年に概ね全医療機関という目標には、残る4〜5割をどう動かすかという課題が残ります。

政府目標と現在地

工程表では、標準型電子カルテについて**「遅くとも2030年には概ねすべての医療機関において導入を目指す」**とされています。ここでいう「導入」は標準型電子カルテに限らず、標準規格に対応した電子カルテ全般を含む目標として読むのが自然です。

開発の進捗は次のとおりです。

時期内容
2024年度デジタル庁による開発開始
2025年3月α版のモデル事業を開始(電子カルテ未導入の医療機関が対象)
2025年夏頃モデル事業の第2弾
2026年度中完成を目指すとされる

α版のモデル事業では、診療情報提供書や処方情報の共有など、全国医療情報プラットフォームとの連携が実地で検証されてきました。2026年前半の時点でまだ本格提供の段階には至っておらず、具体的な提供開始時期は流動的です。

誰が対象になるのか

ここが最も誤解されやすい点です。標準型電子カルテは、主に電子カルテを導入していない医科診療所を対象としています。既に電子カルテを使っている医療機関に乗り換えを促すものではありません。

標準型電子カルテα版のターゲットと設計課題

特徴的なのは、紙カルテとの併用を想定している点です。ターゲットは紙カルテを使っているクリニックの高齢医師であり、「紙をやめさせる」ことよりも「医療情報の連携・活用の入口を作る」ことに設計の重心が置かれています。開発では次のような問いが検討されました。

  • 医療DX基盤に完全連携し、それらの機能・データ活用を前提にした電子カルテとして再設計できないか
  • どうやったら高齢医師でも使いやすい電子カルテにできるか
  • 電子カルテのUIが分かりにくい。利便性の高いものにアップデートできないか
  • 電子カルテ3要件やセキュリティ要件を分解・再整理できないか
  • 外注検査データ連携のAPI化を進められないか

機能範囲は民間製品と同等ではないと見ておくべきです。診療科ごとの専門的な機能や、予約・問診・経営分析といった周辺機能まで広くカバーする設計にはなっていません。

情報設計の特徴

標準型電子カルテα版のカルテ画面

α版のカルテ画面は、カルテ記載エディタや処方登録が前面に来ない情報設計になっています。画面の中心にあるのは患者プロファイル(バイタル、予防接種歴、体内異物、女性特有情報、既往歴、薬剤アレルギー、感染症など)で、右側に外部医療機関から取得したデータが常時表示されます。

これは従来の電子カルテとは逆の発想です。従来型が「記載するための道具」であるのに対し、α版は「患者を把握するための道具」として設計されている、と言い換えられます。電子カルテ情報共有サービスと連携することで、外部医療機関の情報がカルテの中で閲覧できるようになる——この体験を前提に画面が組まれています。

外注検査データのAPI連携

外注検査データのAPI自動連携

もう一つの特徴が、外注検査データのAPIによる完全自動連携です。検査結果を時系列で比較表示でき、その一部は電子カルテ情報共有サービス経由でマイナポータルからも閲覧できるようになります。紙やFAXでの結果受け取りや手入力を前提としない設計は、中小規模の医療機関ほど効果が大きい部分です。

標準要件が既存カルテからの移行を左右する

標準型電子カルテと同じ「電子カルテ情報の標準化(標準要件)」は、既存カルテから乗り換えるときのデータ移行のしやすさにも直結します。HL7 FHIR・SS-MIX2・標準コードを前提にした移行方式と、それでも残る限界については電子カルテの標準要件に沿ったデータ移行の方法で整理しています。

「標準型を待つべきか」の判断軸

電子カルテ未導入のクリニックにとっては、現実的な選択肢が2つあります。判断の目安を整理します。

標準型電子カルテを待つことが合理的なケース

  • 診療内容がシンプルで、カルテ記載と処方が中心
  • 予約・問診・画像連携などの周辺機能をほとんど使わない
  • 初期費用・ランニングコストを最優先で抑えたい
  • 開業から日が浅く、当面は紙運用でも回る規模

民間の電子カルテを選ぶほうが合理的なケース

  • 診療科特有の機能が必要(眼科の検査機器連携、整形外科のPACS連携、小児科の成長曲線など)
  • 予約・Web問診・オンライン診療など、周辺業務まで含めて効率化したい
  • レセコン一体型で医事業務まで一気通貫にしたい
  • 音声入力やAIによる記載支援など、日々の入力負担を下げたい
  • 具体的な時期が確定していないものを待つより、今の業務課題を早く解決したい

とくに最後の点は重要です。標準型電子カルテの本格提供時期は明確に確定しているわけではありません。「待つ」という判断は、その間の非効率を受け入れる判断でもあることを踏まえて検討する必要があります。

日本医師会のスタンス

標準型電子カルテをめぐる議論では、日本医師会の医療IT委員会答申「医療DXを適切に推進するための医師会の役割」(令和6年6月)が一つの基準になっています。答申は、紙カルテを完全に電子カルテへ置き換えることは不可能であり、そもそもそれを目指すべきではないという立場を示したうえで、**「仮に紙カルテを使い続けたとしても、恩恵を受ける事ができるような医療DXを目指すべき」**としています。

この指摘は、標準型電子カルテが紙カルテとの併用を前提に設計されていることと整合します。医療DXの目標は電子カルテの導入率そのものではなく、情報連携の恩恵を医療現場と患者に届けることにある、という考え方です。

電子カルテは義務化されるのか

「2030年に電子カルテが義務化される」という表現を目にすることがありますが、工程表の記述は「概ねすべての医療機関において導入を目指す」という目標であり、罰則を伴う義務として定められているものではありません。

ただし、診療報酬の側から実質的な誘導は進んでいます。電子的診療情報連携体制整備加算をはじめとする加算は、オンライン資格確認、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスへの対応を施設基準に組み込んでおり、電子カルテがなければ満たせない要件が増えていきます。義務ではないが、対応しないことの機会損失が拡大していくというのが実態に近い理解です。

AIカルテでの対応

AIネイティブ電子カルテ「AIカルテ」は、標準規格への対応を前提としつつ、音声入力によるカルテ自動生成、レセコン一体型の医事業務、AIレセチェック、経営分析までを一つのサービスで提供します。標準型電子カルテが主に「電子カルテ未導入の解消」を担うのに対し、AIカルテは日々の診療・医事業務そのものの効率を引き上げることを目的としています。診療科ごとの運用に合わせた導入のご相談も承っています。

おわりに

標準型電子カルテは、電子カルテ未導入の医療機関を主な対象として、全国的な情報共有の土台を埋めるための施策です。既に電子カルテを使っている医療機関が乗り換えを検討する性質のものではなく、また機能範囲も民間製品と同列に比較するものではありません。未導入のクリニックにとっては現実的な選択肢の一つですが、提供時期が確定していない点と、機能が限定的である点を踏まえたうえで、自院の診療内容と業務課題に照らして判断することが重要です。

ポテックはAIカルテの提供を通じて、クリニックの皆様の最適な事業パートナーとして、医師や看護師・医事スタッフの働きやすさの改善はもちろん、クリニックとして実現したいことを最大限に叶えられるようサポートいたします。

詳細については、ぜひお問い合わせください。

参考・出典

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