在宅医療の収益を支える柱が、在宅時医学総合管理料(在医総管)です。そして2026年度診療報酬改定は、この在医総管の算定要件そのものに手を入れました。
「月2回以上訪問」の区分に、重症患者割合20%以上という要件が入ったためです。訪問回数と患者数を積み上げれば算定できる、という構造ではなくなりました。
従来から在医総管は、単一建物診療患者数・訪問回数・医療機関の類型など複数の条件で点数区分が変わり、算定漏れが起こりやすい管理料でした。そこに今回、「気づかないうちに要件を割っている」という新しいリスクが加わったことになります。
本記事では、在医総管の算定要件を2026年度改定の内容まで含めて整理し、算定漏れと要件割れの両方を防ぐ電子カルテ活用を解説します。
免責:本記事は一般的な情報提供です。具体的な点数・施設基準・様式は告示および地方厚生(支)局の通知が正本であり、改定・疑義解釈により変わります。算定および届出の判断は、必ず最新の一次情報に基づいて行ってください。
在医総管とは
在宅時医学総合管理料(在医総管)は、在宅での療養を行っており通院が困難な患者に対して、患者の同意を得て、計画的な医学管理のもと定期的な訪問診療を行っている場合に算定する管理料です。原則として月1回に限り算定します。施設入居者を対象とする施設入居時等医学総合管理料(施設総管)と対をなす位置づけです。
在医総管は在宅医療の中核的な報酬であり、患者数が積み上がるほど安定するストック型の収益をつくります。在宅医療の事業計画が外来より読みやすいのは、この構造があるためです。
裏返せば、算定区分そのものに要件が入ると、収益が一度に動きます。 2026年度改定で起きたのはまさにこれでした。
2026年度改定で入った重症患者割合20%要件
今回の改定の中心は、次の要件です。
在宅患者訪問診療料を月2回以上算定する患者のうち、重症患者または包括的支援加算の対象患者の割合が20%以上であること。 これを満たさない医療機関は、月2回以上の在医総管・施設総管を算定できません。
実務上、押さえるべき点は3つあります。
① 20%未満に該当する場合は届出が必要
2026年3月31日時点で在医総管を算定していた医療機関であっても、2026年6月1日以降に算定する場合はこの枠組みに乗ります。月2日以上訪問する患者について重症患者割合が20%未満に該当する場合に、届出が必要とされています。
② 確認は毎年2月・5月・8月・11月
この割合は一度確認して終わりではありません。毎年2月・5月・8月・11月に確認し、変更がある場合は様式19を用いて同月中に速やかに地方厚生(支)局長へ届け出る、という運用です。
つまり重症患者割合は、年に4回、自院で計算して結果に責任を持つ数字になりました。患者構成は入院・施設入所・看取り・新規受け入れで常に動くため、前回の確認から状況が変わっていることは珍しくありません。
③ 重度認知症への対応で15%に緩和される
疑義解釈により、重度認知症患者への対応実績が一定の基準を満たす医療機関では、重症患者割合が20%から15%に緩和されます。おおむね次の2つをいずれも満たす場合とされています(要一次確認)。
- 認知症自立度IV又はMの患者で、継続的に療養方針の意思決定支援を行い、直近3か月以内に関係機関と情報共有した患者の延べ診療月数割合が一定以上
- そのうち在医総管を算定している患者の延べ診療月数割合が一定以上
重要なのは、この緩和が「認知症の患者を診ているか」ではなく「意思決定支援と情報共有の記録があるか」で決まるという点です。日々の記録の残し方が、そのまま要件の充足可否を分けます。
訪問診療患者数のカウントも緩和された
あわせて、常勤換算医師1人当たりの訪問診療患者実人数「100人以下」という基準についても緩和が入りました。単一建物診療患者が2人以上の場合の点数を算定する患者、および月1回訪問診療を行っている患者は、70人を上限として1人を0.5人として計算できます(要一次確認)。
施設への訪問を一定量抱える医療機関では、数え方の違いで結論が変わります。緩和後の方法で再計算する価値があります。
改定全体の整理は 在宅医療の2026年度診療報酬改定 をご覧ください。
点数区分を左右する主な要素
在医総管の点数は、主に次の要素の組み合わせで変わります。
- 単一建物診療患者の人数:同一建物で診療する患者数の区分
- 訪問診療の回数:月あたりの訪問回数(月1回か、月2回以上か)
- 医療機関の類型・機能:機能強化型在支診かどうか等
- 患者の状態:重症度に応じた区分
2026年度改定では、ここに**「月2回以上区分を算定できる医療機関かどうか」という施設側の判定**が重なりました。従来は患者ごとの条件だけを見ていればよかったものが、自院全体の患者構成を見なければ判断できない構造に変わっています。
算定漏れ・算定誤りが起こりやすい場面
| 場面 | 起こりやすいミス |
|---|---|
| 患者数のカウント | 単一建物診療患者数の数え違いで区分を誤る |
| 訪問回数の管理 | 月内の訪問回数の集計漏れ |
| 同意・計画の記録 | 同意取得や診療計画の記載不備 |
| 併算定の可否 | 他の在宅系点数との組み合わせ誤り |
| 月1回ルール | 算定タイミングの重複・漏れ |
| 重症患者割合(2026年〜) | 確認月をまたいで割合が変動し、気づかないまま月2回以上区分を算定 |
| 緩和要件の記録(2026年〜) | 重度認知症患者の意思決定支援・情報共有の記録が残っておらず、15%緩和を使えない |
在宅医療は患者数・訪問先・訪問回数が動的に変化するため、これらを人手のみで正確に管理するのは大きな負担です。要件を満たしているのに算定していない「取りこぼし」は、そのまま収益ロスになります。
そして2026年以降は、その逆——要件を満たしていないのに算定してしまうリスクが加わりました。こちらは返還の対象になり得るため、取りこぼしよりも影響が大きくなります。
算定漏れ全般の考え方は 算定漏れチェックリスト もあわせてご覧ください。
電子カルテによる算定支援
在医総管の算定を守るには、訪問実績と算定要件をシステム側で結びつけることが有効です。観点は2つに分かれます。
観点1:算定漏れを防ぐ(従来からの課題)
訪問スケジュールと訪問実績が電子カルテに記録され、そのデータをもとに単一建物診療患者数や訪問回数を自動的に集計・判定できれば、人的なカウントミスは大幅に減ります。レセプト作成時に算定要件の充足をチェックする仕組みがあれば、記載不備や併算定の誤りにも気づけます。
観点2:要件割れを事前に知る(2026年からの課題)
重症患者割合は、計算に必要なデータがすべてカルテの中にあります。
- 訪問診療料を月2回以上算定している患者が何人か
- そのうち重症患者・包括的支援加算の対象が何人か
この2つが分かれば割合は出ます。月次で追えていれば、20%(緩和適用時は15%)を割りそうな局面を事前に察知できます。 2月・5月・8月・11月の確認月に初めて計算する運用では、対応が後手に回ります。
緩和要件についても同様です。認知症自立度IV又はMの患者について、意思決定支援を継続的に行った記録と、直近3か月以内の関係機関との情報共有の記録——これらが構造化されて残っていれば、緩和の適用可否を判断できます。残っていなければ、実際に対応していても要件を証明できません。
観点3:記録をその場で残せるか
上記のいずれも、前提は「記録が残っていること」です。在宅医療は訪問先で診療し、移動しながら次へ向かう働き方であり、記録を書く時間と場所が構造的に不足しています。
事業所に戻ってからまとめて入力する運用では、記憶が薄れた分だけ記録の精度が落ちます。タブレット・スマートフォンで訪問先から記録を完結できるかどうかは、そのまま届出の確実性に効きます。 モバイル運用の実際は iPad・スマホで完結する訪問診療のカルテ運用 をご覧ください。
AIカルテで在宅の算定を守る
ポテックのAIカルテは、訪問スケジュール管理と診療記録、レセコン一体型の請求を同一基盤で扱えます。
- 経営分析ダッシュボードが、重症患者割合や緊急往診・看取りの件数を月次で可視化します。確認月に集計するのではなく、常時見える状態にします
- AIレセチェックが包括・背反・回数制限を点検し、在医総管をはじめとする在宅系管理料の算定漏れを防ぎます
- モバイル・オフライン対応により、訪問先で記録を完結できます。意思決定支援や情報共有の記録が、その場で残ります
- 文書自動作成が訪問診療計画書などをカルテの記録から起こし、書類業務の総量を下げます
3省2ガイドラインに準拠した設計で、在宅医療の複雑な算定業務を支えます。
おわりに
在医総管は在宅医療の経営を左右する重要な管理料であり、複雑な要件ゆえに算定漏れが起こりやすい領域でした。2026年度改定はここに、**重症患者割合という「自院で計算し、届け出る数字」**を加えています。
要点は3つです。
- 月2回以上区分には重症患者割合20%以上(緩和適用時15%)が必要で、下回る場合は届出が要る
- 確認は毎年2月・5月・8月・11月。次の確認月は11月
- 緩和要件も加算要件も、決めるのは「対応したか」ではなく「記録が残っているか」
点数・要件は改定および疑義解釈で変わります。必ず厚生労働省・地方厚生(支)局の公式情報で最新条件を確認したうえで、電子カルテによる算定支援を活用し、取りこぼしと要件割れのない体制を整えてください。
ポテックはAIカルテの提供を通じて、クリニックの皆様の最適な事業パートナーとして、医師や看護師・医事スタッフの働きやすさの改善はもちろん、クリニックとして実現したいことを最大限に叶えられるようサポートいたします。
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参考・出典
- 令和8年度診療報酬改定について|厚生労働省
- 【重要】2026年度改定における在宅時医学総合管理料の届出について|京都府保険医協会
- 2026年度診療報酬改定の関連通知等を訂正、疑義解釈で示された「在宅医療の基準緩和」など施設基準通知等に盛り込む|GemMed
- 令和8年度(2026年度)診療報酬改定③|在宅医療・訪問看護の「質と効率性」が問われる時代へ|メディヴァ
- 社会保険診療報酬支払基金
※在医総管・施設総管の点数・区分・施設基準・届出様式は改定および疑義解釈により変更されます。算定にあたっては、厚生労働省および地方厚生(支)局が公表する最新の点数表・留意事項通知を必ずご確認ください。