在宅医療は、今回の改定で評価軸そのものが入れ替わった領域です。
これまでの在宅医療の点数は、訪問の回数と患者数を積み上げれば積み上がる構造でした。2026年度改定はここに明確な線を引きます。在宅時医学総合管理料(在医総管)・施設入居時等医学総合管理料(施設総管)の「月2回以上訪問」区分に、重症患者割合20%以上という要件が入ったためです。
訪問件数が同じでも、診ている患者の重症度が基準に届かなければ、月2回以上の管理料は算定できません。「量」から「質」への転換が、点数表のレベルで実装されたことになります。
注記:本記事は公表資料に基づく整理です。具体的な点数・施設基準・様式は告示および地方厚生局の通知が正本です。算定・届出の判断は必ず一次情報でご確認ください。
1. 主な変更点
| 項目 | 変更内容 | 点数 | 影響度 |
|---|---|---|---|
| 在医総管・施設総管(月2回以上訪問の区分) | 訪問診療料を月2回以上算定する患者のうち、重症患者・包括的支援加算の対象患者の割合が20%以上であることが算定要件に追加。20%未満に該当する場合は届出が必要 | 要件追加 | 大 |
| 上記の重症患者割合の緩和 | 重度認知症(認知症自立度IV又はM)への対応実績が一定基準を満たす場合、20%→15%に緩和(要一次確認) | 要件緩和 | 中 |
| 在宅医療充実体制加算(新設) | 従来の在宅緩和ケア充実診療所・病院加算を再編。緩和ケアに限らず、重症・看取り・小児在宅を地域で支える提供体制全体を評価 | 単一建物診療患者1人の場合 400→800点(要一次確認) | 大 |
| 訪問診療患者数のカウント | 常勤換算医師1人当たりの訪問診療患者実人数「100人以下」の基準について、単一建物診療患者2人以上の点数を算定する患者・月1回訪問の患者は、70人を上限に1人を0.5人として計算できるよう緩和 | 要件緩和 | 中 |
| 訪問看護医療情報連携加算(新設) | ICTで多職種が記録した情報を確認し、並行して計画的な管理を行う場合を評価。訪問看護ステーションが算定 | 月1回 1,000円(要一次確認) | 中 |
| 訪問診療薬剤師同時指導料(新設) | 医師と薬剤師が同時に訪問して服薬指導を行う場合を評価 | 300点(要一次確認) | 小〜中 |
| 訪問看護の同一建物評価 | 同一建物の利用者数・月あたり訪問日数による評価の細分化。**同一敷地内の建物も「同一建物」**として規定 | 見直し | 中 |
| 在宅物価対応料・ベースアップ評価料 | 全科共通。届出をしなければ算定できない | 新設・見直し | 大 |
2. 経営インパクトと対応
(1)重症患者割合は「決算で気づく数字」にしてはいけない。
今回の改定でもっとも実務を変えるのはこの一点です。重症患者割合20%は、月末や年度末に集計して判明するものではなく、日々の患者構成がそのまま反映される数字です。しかも在医総管は在宅医療クリニックの売上の中核であり、月2回以上区分が取れなくなった場合の減収インパクトは大きくなります。
割合は毎年2月・5月・8月・11月に自院で確認し、変更がある場合は様式19を用いて同月中に速やかに地方厚生(支)局長へ届け出る、という運用です(要一次確認)。2026年3月31日時点で算定していた医療機関であっても、6月1日以降に算定する場合はこの枠組みに乗ります。
次の確認月は11月です。 8月の確認を終えた医療機関も、そこから患者構成が動いていれば結果は変わります。10月の時点で「今の割合は何%か」を言えない状態は、そのままリスクになります。
(2)在宅医療充実体制加算は「実績がある側」にだけ効く。
単一建物診療患者1人で400点から800点への引き上げは大きな増点ですが、緊急往診・看取りの実績要件を満たす機能強化型在支診のみが対象です(要一次確認)。裏を返せば、実績要件を満たせない医療機関との差は今回の改定で開きます。
在宅緩和ケア充実診療所・病院加算からの再編であるため、「緩和ケアをやっていないから関係ない」という読み方は誤りです。重症・看取り・小児在宅を含む提供体制全体の評価に変わっています。
(3)訪問診療患者数の緩和は、施設系の患者を持つ医療機関に効く。
常勤換算医師1人当たり100人以下という基準に対し、単一建物診療患者2人以上の点数を算定する患者と月1回訪問の患者を0.5人としてカウントできるようになりました(70人が上限)。施設への訪問を一定量抱える医療機関では、この計算方法の違いが基準の充足可否を分けます。自院がどちらの数え方で何人になるのかを、いま一度計算し直す価値があります。
(4)訪問看護は「ICT連携が点数になる」段階に入った。
訪問看護医療情報連携加算は、医師・薬剤師・ケアマネジャー等がICTに記録した情報を確認し、それと並行して計画的な管理を行うことを評価するものです。対象となるのは、法人管理のもとで多職種が診療情報を共有・活用できるシステムとされています。
注意点が2つあります。ひとつは在宅患者連携指導加算・在宅医療情報連携加算との併算定ができないこと。もうひとつは、施設基準にステーション内への掲示とウェブサイトでの公開が含まれ、経過措置が2026年9月30日までとされていることです(要一次確認)。掲示・公開が未対応であれば、残り時間はわずかです。
(5)連携型機能強化型在支診の往診実績報告。
往診の実施が十分でない連携型機能強化型在支診への対応として、2026年8月に在医総管・施設総管を届け出る全ての医療機関が往診基準の該当可否を確認し、地方厚生(支)局長へ報告することが求められました(要一次確認)。対応漏れがないか、届出控えを確認してください。
3. 実務チェックリスト
- 直近月の重症患者割合が何%かを、いま即答できるか
- 20%(緩和適用時は15%)を下回った場合に、月2回以上区分をどう扱うか決めてあるか
- 11月の確認に向けて、割合を月次で追う仕組みがあるか
- 重度認知症による緩和要件の適用可否を検討したか(認知症自立度IV又はMの患者の意思決定支援と情報共有の記録が前提)
- 在宅医療充実体制加算の緊急往診・看取りの実績要件を満たしているか、実績を証明できる記録があるか
- 常勤換算医師1人当たりの訪問診療患者数を、緩和後の数え方で再計算したか
- 訪問看護医療情報連携加算の掲示・ウェブ公開を9月30日までに済ませたか
- 在宅物価対応料・ベースアップ評価料の届出を済ませたか
- 2026年8月の往診基準該当可否の報告を提出したか
4. AIカルテはこの改定にどう効くか — 機能単位で見る
在宅医療の2026年は、「訪問を積む」から「患者構成と実績を管理する」への移行です。管理すべき数字が増えた一方で、訪問先での入力時間が増やせるわけではありません。ポテックのAIカルテがどう支えるのか、機能ごとにご紹介します。
機能1:経営分析ダッシュボード — 重症患者割合を月末より前に知る
来院実績・患者単価・月次推移を自動集計し、可視化します。
重症患者割合は、集計して初めて分かる数字であってはいけないタイプの指標です。訪問診療料を月2回以上算定している患者が何人いて、そのうち重症・包括的支援加算の対象が何人か——この2つの数が分かれば割合は出ます。どちらもカルテの中にあるデータです。
月次で追えていれば、基準を割りそうな局面を事前に察知できます。緊急往診件数・看取り件数も同じで、在宅医療充実体制加算の実績要件を満たしているかどうかは、日々の記録の集計結果にすぎません。
機能2:会計・レセプト管理 — 区分の判定と併算定チェック
自動算定エンジンが包括・背反・回数制限をチェックし、算定可否を自動判定します。
在宅は算定の分岐が多い領域です。在医総管と施設総管の使い分け、単一建物診療患者数による点数の変動、月1回訪問と月2回以上訪問の区分——これらは患者ごと・月ごとに変わります。今回の改定ではさらに、訪問看護医療情報連携加算と在宅患者連携指導加算・在宅医療情報連携加算の併算定不可という関係が加わりました。
人の記憶で管理する項目が増えるほど、算定漏れと査定の両方が増えます。システム側で止める設計にしておくのが、要件が複雑化した局面での現実解です。
機能3:モバイル・オフライン対応 — 訪問先で記録を完結させる
タブレット・スマートフォンで、通信が不安定な環境でも記録を継続できます。
要件が増えるということは、残すべき記録が増えるということです。重度認知症患者への意思決定支援の記録、関係機関との情報共有の記録、緊急往診の記録——いずれも算定・届出の根拠になります。これらを事業所に戻ってから思い出して入力する運用では、記録の精度が上がりません。
訪問先でその場で残せるかどうかが、そのまま届出の確実性に効きます。
機能4:外部連携・API — 多職種のICT連携を記録に接続する
OAuth2ゲートウェイ、MCPサーバー、HAPI FHIRに対応し、外部システムと連携できます。
訪問看護医療情報連携加算が示したのは、ICTでの情報共有が点数として評価される段階に入ったということです。加えて電子カルテ情報共有サービスの全国展開も控えており、在宅医療は多職種連携の情報が制度側に接続されていく領域になります。
連携の手間が下がることは、そのまま算定できる加算の幅につながります。
全科共通事項もあわせてご確認ください
初再診料、物価対応料、ベースアップ評価料、電子的診療情報連携体制整備加算などの共通変更点は「全科共通事項」にまとめています。
在宅医療クリニックの経営構造そのものについては「在宅医療の経営トレンド2026」もあわせてご覧ください。算定実務は「在医総管の算定漏れを防ぐ」で詳しく扱っています。
出典(主要)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 京都府保険医協会「【重要】2026年度改定における在宅時医学総合管理料の届出について」 https://healthnet.jp/informations/informations-53792/
- GemMed「2026年度診療報酬改定の関連通知等を訂正、疑義解釈で示された『在宅医療の基準緩和』など施設基準通知等に盛り込む」 https://gemmed.ghc-j.com/?p=74354
- メディヴァ「令和8年度(2026年度)診療報酬改定③|在宅医療・訪問看護の『質と効率性』が問われる時代へ」 https://mediva.co.jp/report/revision/19198/
- ケアチーム「【2026年度(令和8年度)診療報酬改定】『訪問看護医療情報連携加算』の新設」 https://careteam.jp/column/column064