消化器内科、とくに内視鏡を主力とするクリニックにとって、今回の改定は明確な逆風です。
短期滞在手術等基本料1の「その他の場合」が約50%引き下げられました。 ここに該当するのは、主として外来で実施される手術——日帰りの大腸ポリープ切除などです。短手1で算定してきた施設には、1件あたり約800点の減収が直接効きます。
1. 主な変更点
| 項目 | 変更内容 | 新旧点数 | 影響度 |
|---|---|---|---|
| 短期滞在手術等基本料1(日帰り)の引き下げ | 「その他の場合」(主として外来で実施される手術)の包括評価を約半減 | 麻酔を伴う手術 1,588→795点、伴わない手術 1,359→680点(要一次確認) | 大 |
| 入院手術対応加算(新設) | 外来実施率の高い手術を医学的必要性から入院で行う場合の評価。K721内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(長径2cm未満)等が対象。外来手術の実績要件あり | K721(2cm未満)366点 新設(要一次確認) | 中 |
| 短期滞在手術等基本料3の見直し | 施設基準が「DPC対象病院でないこと」→「病院であること」に変更され、DPC病院も算定対象化。対象手術の追加と点数調整 | 手術ごとに増減(要一次確認) | 中 |
| 内視鏡検査本体(EF-胃・十二指腸、大腸内視鏡等) | 検査本体の大きな点数変動は確認できず(据え置きが中心とみられる) | ―(要一次確認) | 小 |
2. 経営インパクトと対応
短手1「その他の場合」の約50%引き下げは、日帰りポリペクを短手1で算定してきた施設に直接的な減収要因となります。年間500件の施設なら、麻酔を伴う手術で1件約793点の減、年間約400万円規模の影響です。
対応は4点に整理できます。
(1)算定方式を選び直す。 短手1で算定した場合と、出来高で算定した場合の収益を症例ごとにシミュレーションし、どちらが有利かを再判定してください。包括点数が半減した以上、これまでの前提は成り立ちません。
(2)出来高項目の算定精度を上げる。 病理診断、鎮静に係る費用、画像強調観察など、出来高で算定できる項目の記録・請求漏れを潰します。単価が下がる局面では、取りこぼしの1件あたりの重みが相対的に増します。
(3)件数でカバーする。 検診・人間ドックからの内視鏡送客を増やし、枠あたりの実施件数を上げる。単価下落局面では、稼働率(枠の埋まり具合)とキャンセル対策が利益を左右します。
(4)連携病院側の要件を確認する。 2cm未満のポリペクを入院で行う連携先には入院手術対応加算(366点)が新設されましたが、外来手術の実績要件があります。紹介の受け皿として機能するかを事前に確認しておくべきです。
3. 実務チェックリスト
- 短手1算定症例について、出来高算定との収益比較を行ったか
- 病理・鎮静・画像強調観察の算定漏れがないか、直近レセプトを点検したか
- 内視鏡枠のキャンセル率と稼働率を把握しているか
- 短手3のDPC病院への拡大により、地域の競合状況が変わっていないか
- 検診・ドックからの送客導線を確認したか
4. AIカルテはこの改定にどう効くか — 機能単位で見る
単価が下がる局面では、「取りこぼさないこと」と「枠を埋めること」の2つが利益を決めます。ポテックのAIカルテがどう効くのか、機能ごとにご紹介します。
機能1:会計・レセプト管理 — 出来高項目の算定漏れを潰す
自動算定エンジンが包括・背反・回数制限をチェックし、算定可否を自動判定します。
短手1の包括点数が半減した以上、出来高で算定できる項目を確実に拾えているかが従来以上に重要になります。病理診断料、鎮静に用いた薬剤、内視鏡的止血処置——これらが手技の記録から自動的に請求候補として上がってくる仕組みは、そのまま単価の防衛になります。短手1と出来高のどちらが有利かの判定も、算定ロジックが整理されていて初めて成り立ちます。
機能2:経営分析ダッシュボード — 枠あたりの収益で見る
来院実績・患者単価・月次推移を自動集計し、可視化します。
単価が下がったぶんを件数で補う戦略を取るなら、**追うべき指標は「1件あたり単価」ではなく「内視鏡枠1コマあたりの収益」**になります。枠の稼働率、当日キャンセル率、検査から治療(ポリペク)への移行率を月次で見られる状態が、投資判断(スコープの追加、枠の増設)の土台です。
機能3:患者向けPHRアプリ「ポテ君」連携 — キャンセルと前処置の脱落を防ぐ
受診予約、LINEログインとPush通知、服薬リマインダに対応します。
内視鏡は前処置が必要で、当日キャンセルの損失が大きい検査です。前日・当日のリマインドと前処置の案内が患者側に届く仕組みは、枠あたりの実施件数に直接効きます。 単価が下がった局面では、1枠の空きが持つ意味が以前より重くなっています。
全科共通事項もあわせてご確認ください
初再診料、物価対応料、ベースアップ評価料、電子的診療情報連携体制整備加算などの共通変更点は「全科共通事項」にまとめています。
出典(主要)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 岡大徳「【令和8年度改定】短期滞在手術等基本料の4つの見直しポイント」 https://www.daitoku0110.news/p/short-stay-surgery-fee-revision
- 今日の臨床サポート「A400 短期滞在手術等基本料(令和8年版)」 https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_1_2_4/a400.html
- 船井総合研究所「内視鏡クリニックへの影響分析」 https://byoin-clinic-keiei.funaisoken.co.jp/internalmedicine-endoscope/blog/