今回の改定で、心療内科クリニックへの影響は内科系8科のなかでも最大です。
通院・在宅精神療法に「注13」が新設され、施設基準を満たさない医療機関では所定点数の100分の60で算定することになりました。精神保健指定医でない、あるいは施設基準を満たさない医療機関では、外来収益の根幹が直接影響を受けます。
1. 主な変更点
| 項目 | 変更内容 | 新旧点数 | 影響度 |
|---|---|---|---|
| 通院・在宅精神療法(初診時)の評価充実 | 初診60分以上を増点、初診「30分以上60分未満」区分を新設 | 60分以上(指定医)600→650点、30分以上60分未満 550点新設、在宅60分以上640→650点(要一次確認) | 中 |
| 非指定医等への減算(注13)新設 | 施設基準(精神科救急医療体制への参加または十分な経験を有する医師等)を満たさない場合、所定点数の100分の60で算定 | 例:650点→390点、550点→330点(要一次確認) | 大 |
| 注13適用時の算定制限 | 抗うつ薬3種類以上・抗精神病薬3種類以上の投与時は算定不可。心理支援加算(注9)との併算定不可 | ― | 大 |
| 向精神薬処方の適正化 | 多剤・長期処方の種類数カウントの厳格化(一般名ベース)等、処方料側の運用厳格化 | ―(要一次確認) | 中 |
注13をめぐっては、全国保険医団体連合会が2026年5月に撤回要望書を提出しています。疑義解釈・運用通知の続報に注意してください。
2. 経営インパクトと対応
対応の優先順位は明確です。
(1)注13の施設基準を満たせるかを最優先で判定する。 基準は「令和8年5月31日時点で精神医療に20年以上従事」または「過去1年間の医療観察法診察・保健所/児童相談所嘱託医等の行政業務従事」等とされています(要一次確認)。自院の医師が該当するかを確認し、該当するなら速やかに届出してください。
(2)満たせない場合の減収額を試算する。 再診30分未満では、指定医315点/非指定医(基準適合)290点/非指定医(基準非適合)174点という水準が示されています。月200件の通院精神療法があれば、基準適合と非適合で月約23,000点=23万円、年間約280万円の差になります。
(3)カバーする手立てを整理する。 初診の「30分以上60分未満」区分が新設されたことで、診療時間の適正な記録が単価に直結するようになりました。カルテへの診療時間・内容の記録精緻化は、指導対策としても必須です。
(4)処方を整理する。 減算下では抗うつ薬・抗精神病薬3種類以上の患者は算定不可になります。減薬計画を診療計画に組み込む必要があります。
なお、公認心理師の活用体制も再設計の好機です。ただし注13適用時は心理支援加算と併算定できない点に注意してください。
3. 実務チェックリスト
- 在籍医師が注13の施設基準に該当するかを確認し、該当するなら届出したか
- 非適合の場合の減収額を月次・年次で試算したか
- 診療時間(30分以上/未満、60分以上)をカルテに記録する運用になっているか
- 抗うつ薬・抗精神病薬3種類以上の患者を抽出し、減薬計画を立てたか
- 心理支援加算との併算定可否をレセコンに反映したか
4. AIカルテはこの改定にどう効くか — 機能単位で見る
この科の2026年は、「何をしたか」だけでなく「どれだけの時間、どんな薬で診たか」が点数を決める年になりました。ポテックのAIカルテがどう支えるのか、機能ごとにご紹介します。
機能1:カルテ・オーダー作成 — 診療時間と内容を記録として残す
診察中の音声からAIがSOAPカルテを生成し、セットオーダーで検査・処方を一括入力できます。
初診に「30分以上60分未満」という区分が入ったことで、診療時間の記録が直接点数を決めるようになりました。診察に集中しながら時間と内容を正確に残すことは、手書きやキーボード入力では負担の大きい作業です。音声からカルテが生成される仕組みは、時間区分の記録を診療の流れのなかで自然に残せるという意味で、この科では特に効きます。指導対策としての記録精緻化にも直結します。
機能2:会計・レセプト管理 — 多剤処方による算定不可を事前に検知する
自動算定エンジンが包括・背反・回数制限をチェックし、算定可否を自動判定します。
注13適用下では、抗うつ薬3種類以上・抗精神病薬3種類以上の投与時は通院精神療法そのものが算定できません。 一般名ベースでの種類数カウントが厳格化されたこともあり、処方の時点で「この処方だと算定できない」と分かる仕組みは、月末のレセプト点検で気づくより遥かに実務的です。心理支援加算との併算定不可も同じ構造です。
機能3:経営分析ダッシュボード — 減算の影響を数字で把握する
来院実績・患者単価・月次推移を自動集計し、可視化します。
注13の影響は「なんとなく減った」ではなく、通院精神療法の算定件数×点差という具体的な数字で把握すべきものです。時間区分ごとの算定構成、多剤処方患者の割合、心理支援加算の算定状況を月次で見られる状態が、届出判断と減薬計画の進捗管理の両方を支えます。
全科共通事項もあわせてご確認ください
初再診料、物価対応料、ベースアップ評価料、電子的診療情報連携体制整備加算などの共通変更点は「全科共通事項」にまとめています。
出典(主要)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 精神科用務員「通院・在宅精神療法改定のポイント」 https://seishinkayoumuin.com/psychotherapy26/
- 全国保険医団体連合会「【要望書】通院・在宅精神療法の精神保健指定医以外の減算及び施設基準要件(注13)の撤回を求める」 https://hodanren.doc-net.or.jp/info/declaration/2026-05-25/
- 東京保険医協会「2026年度診療報酬改定 中医協答申(抜粋)」 https://www.hokeni.org/docs/2026021200012/