この記事の要点
- 紹介状は一般的な呼び方で、保険診療で紹介に添える文書は「診療情報提供書」と呼ばれ、留意事項通知の別紙様式11またはこれに準じた様式で作成します。
- 診療情報提供料(Ⅰ)(B009)は250点で、診療に基づき他の保険医療機関での診療の必要を認め、患者の同意を得て、診療状況を示す文書を添えて紹介した場合に、紹介先ごとに患者1人につき月1回算定します。
- 御侍史(おんじし、ごじし)は手紙の宛名に添えて敬意を表す脇付「侍史」に「御」を付けた語で、辞書でも医療分野で多く使われる語と説明されています。
- 令和8年度改定で、2回目以降や直接手渡すなど作成した医療機関から送付されたことが明らかな場合は、診療情報提供書の医師の署名または記名・押印を省略できる取扱いになりました。
「紹介状の宛名は『御侍史』と『御机下』のどちらがよいのか」「担当医の名前がわからないときはどう書くのか」「紹介状を書いたら何点算定できるのか」——診療所で紹介状を書く医師や、封筒や控えを準備する医療事務の方から、繰り返し確認されるテーマです。本記事では、診療報酬点数表(令和8年厚生労働省告示)と留意事項通知、関係法令、辞書の記載にもとづき、紹介状(診療情報提供書)の書き方と、宛名・封筒の書き方を整理します。
免責:本記事は2026年10月31日時点の公表情報にもとづく一般的な情報提供です。点数・算定要件・様式は、厚生労働省の告示・通知が正本です。算定の最終判断は、必ず最新の原文と管轄の地方厚生局・審査機関の取扱いでご確認ください。宛名や封筒の書き方は法令で定められたものではなく、一般的な慣習の例です。
紹介状とは:診療情報提供書との関係
紹介状は、医師が患者を別の医療機関に紹介するときに、それまでの診療の状況を伝えるための文書の一般的な呼び方です。保険診療では、紹介に添える文書は診療情報提供書と呼ばれ、厚生労働省の留意事項通知に様式(別紙様式11など)が示されています。
紹介には、法令上の位置づけがあります。
| 根拠 | 内容 |
|---|---|
| 医療法第1条の4第3項 | 医療提供施設で診療に従事する医師は、施設間の機能の分担と業務の連携のため、必要に応じ、患者を他の医療提供施設に紹介し、診療に必要な限度で診療情報を提供するなどの措置を講ずるよう努めなければならない |
| 保険医療機関及び保険医療養担当規則第16条 | 保険医は、患者の疾病が自己の専門外にわたるとき、または診療について疑義があるときは、他の保険医療機関へ転医させ、または他の保険医の対診を求めるなど適切な措置を講じなければならない |
| 同規則第16条の2 | 保険医は、診療した患者について、他の保険医療機関または保険医から照会があった場合には、適切に対応しなければならない |
紹介状がないと患者の負担が増える場合がある
特定機能病院、一般病床200床以上の地域医療支援病院、一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関を、紹介状なしで受診した場合などには、通常の自己負担とは別に特別の料金(医科の初診で7,000円以上、再診で3,000円以上)がかかります。厚生労働省の令和8年度改定の資料では、この定額負担は「今改定では変更なし」とされています。紹介状は、患者にとって受診先での負担にも関わる文書です。
診療情報提供料(Ⅰ)(B009)の概要
紹介状を書いて患者を紹介したときに算定するのが、診療情報提供料(Ⅰ)(区分番号B009)です。
| 項目 | 内容(告示・留意事項通知) |
|---|---|
| 点数 | 250点 |
| 算定の場面(注1) | 診療に基づき、別の保険医療機関での診療の必要を認め、患者の同意を得て、診療状況を示す文書を添えて患者の紹介を行った場合 |
| 回数 | 紹介先保険医療機関ごとに、患者1人につき月1回まで |
| 事前調整 | 紹介に当たっては、事前に紹介先の機関と調整する |
| 様式 | 紹介先ごとに定める様式またはこれに準じた様式の文書に必要事項を記載し、患者または紹介先の機関に交付する(医療機関あては別紙様式11または別紙様式11の2) |
| 写しの保存 | 交付した文書の写しを診療録に添付する |
| 問い合わせ | 提供先からの当該患者に係る問い合わせには、懇切丁寧に対応する |
| 算定できない例 | 特別の関係にある機関への情報提供、診断書等で患者から自費を徴収している場合 など |
保険医療機関あて以外にも、市町村・居宅介護支援事業者等(注2、別紙様式12〜12の4)、介護老人保健施設・介護医療院(注5、別紙様式13)、保育所や学校等の学校医等(注7、別紙様式14〜14の3)への情報提供で算定できる場合があります。
主な加算
| 加算 | 点数 | 主な場面 |
|---|---|---|
| 認知症専門医療機関紹介加算(注10) | 100点 | 認知症の疑いのある患者を専門医療機関に紹介し、鑑別診断等を依頼した場合 |
| 認知症専門医療機関連携加算(注11) | 50点 | 専門医療機関で認知症と診断された外来患者の症状が増悪し、専門医療機関に紹介した場合 |
| 精神科医連携加算(注12) | 200点 | 精神科以外の診療科で、うつ病等の疑いがある外来患者について、精神科の受診日を予約したうえで紹介した場合 |
| 肝炎インターフェロン治療連携加算(注13) | 50点 | 長期継続的にインターフェロン治療が必要な肝炎の外来患者を、連携する専門医療機関に紹介した場合 |
| 歯科医療機関連携加算1(注14) | 100点 | 口腔機能の管理の必要を認め、歯科医療機関に紹介した場合 |
| 歯科医療機関連携加算2(注15) | 100点 | 周術期等の口腔機能管理の必要を認め、歯科の受診日を予約したうえで紹介した場合 |
| 検査・画像情報提供加算(注18) | 外来患者30点 | 届出をした医療機関が、検査結果・画像情報等を電子的方法で閲覧可能な形式で提供、または電子的に送受される診療情報提供書に添付した場合 |
似た名前の点数との違い
| 区分 | 点数 | 内容 |
|---|---|---|
| 診療情報提供料(Ⅱ)(B010) | 500点 | 患者が他の医師の意見(セカンドオピニオン)を求める場合に、必要な情報を添えた文書を患者に提供して支援したとき(月1回) |
| 連携強化診療情報提供料(B011) | 150点 | 紹介元・紹介先との間で、求めに応じてまたは共同で治療管理を継続する合意に基づき文書を提供したとき(施設基準等あり、3月に1回)。同一の医療機関に紹介して診療情報提供料(Ⅰ)を算定した月は別に算定できない |
様式と記載項目(別紙様式11)
留意事項通知の別紙様式11(診療情報提供書)には、次の欄があります。別紙様式11の2も同じ項目に加えて、地域包括診療加算・地域包括診療料・小児かかりつけ診療料・在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料の届出状況のチェック欄が設けられています。
| 欄 | 書く内容と書き方のコツ |
|---|---|
| 紹介先医療機関等名・担当医 | 医療機関名、診療科、担当医名(様式上は「担当医 科 殿」) |
| 日付 | 作成日 |
| 紹介元医療機関の所在地及び名称・電話番号 | 問い合わせ先がわかるように |
| 医師署名(又は記名押印) | 下記の令和8年の簡素化を参照 |
| 患者氏名・性別・生年月日・住所・電話番号・職業 | 紹介先が保険医療機関以外の場合は、住所と電話番号を必ず記入 |
| 傷病名 | 確定診断か疑いかを区別して書く |
| 紹介目的 | 「精査・加療のお願い」「手術適応のご判断」など、紹介先に何をしてほしいかを具体的に |
| 既往歴及び家族歴 | 治療に関わるもの、アレルギー歴も |
| 症状経過及び検査結果 | 発症からの経過、主要な検査値(日付つき) |
| 治療経過 | 行った治療とその効果 |
| 現在の処方 | 薬剤名・用量・用法 |
| 備考 | 患者への説明内容、患者の希望、返書の依頼など |
記載上の注意として、必要がある場合は続紙に記載して添付すること、必要がある場合は画像診断のフィルムや検査の記録を添付することが示されています。なお、情報提供に当たってレントゲンフィルム等をコピーした費用は、診療情報提供料に含まれ別に算定できません。
令和8年:署名・記名押印の簡素化
令和8年度改定では、医療DXへの対応と業務の簡素化の観点から、各種様式の署名・記名押印が見直されました。診療情報提供書については、2回目以降や直接手渡すなど、作成した医療機関から送付されたものであることが明らかな場合は、医師の署名または記名・押印を省略して差し支えないとされています(様式の記載上の注意では、この場合、医師の氏名は記名のみとすることとされています)。
宛名の書き方:御侍史・御机下・先生
御侍史とは:意味と読み方
**御侍史(おんじし/ごじし)は、宛名に添えて敬意を表す脇付(わきづけ)**の一つです。
- 侍史(じし):もとは身分の高い人のそばで文書を扱う書記のこと。そこから、「おそばの書記を通じて差し上げる」という意味で、手紙の宛名の左下に添える脇付として使われるようになりました(精選版日本国語大辞典、デジタル大辞泉)
- 御侍史:デジタル大辞泉では「侍史」と同じ意味で、医療分野で多く使われる語と説明されています
「侍史」自体に敬意が含まれているため、「御」を付けない「侍史」とする考え方もあります。どちらが正しいかを定めた公的な決まりはありません。
御机下とは
**机下(きか)**も脇付の一つで、「相手の机の下に差し出す」という意味に由来します。デジタル大辞泉では、**御机下(おんきか/ごきか)**も「机下」と同じ意味で、医療業界でよく使われる語とされています。
使い分けの考え方
御侍史と御机下の使い分けに、法令や公的な決まりはありません。院内でどちらを使うかを決めておき、統一するのが実務的です。
| 宛名の例 | 使う場面 |
|---|---|
| 〇〇病院 〇〇科 〇〇〇〇先生 御侍史 | 担当医の氏名がわかっている場合 |
| 〇〇病院 〇〇科 担当医先生 御侍史 | 担当医の氏名がわからない場合 |
| 〇〇病院 〇〇科 御中 | 医師個人ではなく診療科・部署あてとする場合 |
| 〇〇〇〇先生 御机下 | 御机下を使う場合 |
なお、厚生労働省の別紙様式11の宛名欄は「担当医 科 殿」となっています。様式どおりに「殿」を使っても問題はなく、御侍史・御机下は慣習的に使われている表現です。
封筒の書き方と封の仕方
封筒の書き方にも法令上の決まりはありません。以下は一般的な例です。院内の書式や紹介先の指定がある場合はそれに従ってください。
表面
- 中央に、紹介先の医療機関名・診療科・担当医名と脇付(例:「〇〇病院 〇〇科 〇〇〇〇先生 御侍史」)
- 左下などに「診療情報提供書在中」「紹介状在中」と書くと、受け取った側が仕分けしやすい
- 郵送する場合は、右上に紹介先の住所
裏面
- 紹介元の医療機関名・所在地・電話番号・医師名
- 作成日
封の仕方
- 患者に持参してもらう場合は、封をして渡すのが一般的です。封じ目に「〆」と書く慣習もあります
- 画像データのCD-Rや検査結果のコピーを同封する場合は、中身の一覧を備考欄などに書いておくと、紹介先で確認しやすくなります
患者に渡すときの注意
- 同意を得る:診療情報提供料(Ⅰ)は、患者に説明し同意を得て紹介することが要件です
- 紹介先と受診方法を説明する:予約が必要か、持参するもの(保険証・お薬手帳・画像データなど)、受診の目安の時期を伝える
- 開封しないよう伝える:封をした紹介状は、開封せずにそのまま紹介先へ渡すよう伝えます
- 控えを残す:交付した文書の写しを診療録に添付します(留意事項通知)
- 返書を管理する:紹介先からの返事(返書)が届いたか、院内で確認できるようにしておくと、紹介後の経過の把握に役立ちます
AIで紹介状の下書きを作るときの注意
電子カルテの記録をもとに、生成AIで紹介状の下書きを作る仕組みが広がっています。紹介状は、カルテから傷病名・経過・検査値・処方を拾って文章にまとめる作業が多く、AIによる下書きと相性のよい文書です。一方で、次の点に注意が必要です。
- 事実の確認:検査値・日付・薬剤名・用量が、カルテの記録と一致しているかを医師が確認する
- 書かれていない内容の補完:カルテにない経過や所見が、もっともらしい文章として補われていないか
- 紹介目的:AIは紹介の理由をカルテから推測するため、医師が「紹介先に何を依頼したいか」を自分の言葉で確認・修正する
- 疑い病名の扱い:確定診断と疑いが区別されているか
- 個人情報の取扱い:患者情報を外部のAIサービスで扱う場合は、医療情報の安全管理に関するガイドラインに沿った契約・設定になっているかを確認する
紹介状は医師の名前で他の医療機関に渡る文書です。AIで作った文章は下書きとして扱い、医師が内容を確認してから交付する運用にしておくことが大切です。
まとめ
- 紹介状は一般的な呼び方で、保険診療では診療情報提供書と呼ばれ、別紙様式11またはこれに準じた様式で作成する
- 診療情報提供料(Ⅰ)は250点。患者の同意を得て、診療状況を示す文書を添えて紹介した場合に、紹介先ごとに患者1人につき月1回算定し、写しを診療録に添付する
- 紹介目的は「紹介先に何をしてほしいか」を具体的に書く
- 御侍史(おんじし)・御机下(おんきか)はいずれも宛名に添えて敬意を表す脇付で、医療分野で広く使われている。使い分けに公的な決まりはないため、院内で統一する
- 令和8年度改定で、2回目以降や直接手渡すなどの場合は、医師の署名または記名・押印を省略できるようになった
- AIで作った下書きは、事実・紹介目的・疑い病名を医師が確認してから交付する
紹介状や退院サマリーを生成AIで作る考え方は 生成AIで医療文書はここまで作れる を、定型文書のテンプレートとAIの関係は AIによる文書作成とテンプレート を参照してください。精神科での診療情報提供書の作成は 精神科の書類業務と診療情報提供書の自動作成 に、内科から眼科への紹介と返書の運用は 眼科医療機関連携強化加算とは にまとめています。
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よくある質問
- Q. 御侍史の読み方は?
- A. 「おんじし」と読みます。「ごじし」と読むこともあります。辞書(デジタル大辞泉)では、手紙の脇付である「侍史」と同じ意味で、医療分野で多く使われる語と説明されています。
- Q. 御侍史と御机下はどう使い分けますか?
- A. どちらも宛名に添えて敬意を表す脇付で、侍史は「おそばの書記を通じて差し上げる」、机下は「相手の机の下に差し出す」という意味に由来します。使い分けに法令上の決まりはなく、院内や地域の慣習に合わせるのが一般的です。
- Q. 担当医の名前がわからないときの宛名は?
- A. 「〇〇病院 〇〇科 担当医先生 御侍史」のように書くのが一般的です。厚生労働省の別紙様式11では「担当医 科 殿」の欄になっています。
- Q. 紹介状と診療情報提供書は違うものですか?
- A. 同じ文書を指すことが多い呼び方の違いです。紹介状は一般的な呼び方で、保険診療で紹介に添える文書は診療情報提供書と呼ばれ、別紙様式11またはこれに準じた様式で作成します。
- Q. 紹介状を書くと何点算定できますか?
- A. 要件を満たせば診療情報提供料(Ⅰ)として250点を、紹介先ごとに患者1人につき月1回算定できます。患者の同意、文書の写しの診療録への添付などが必要です。特別の関係にある機関への紹介などは算定できません。
- Q. 紹介状の封筒は封をしますか?
- A. 患者に持参してもらう場合は、封をして渡すのが一般的です。開封せずに紹介先へ渡すよう患者に伝えます。院内のルールや紹介先の指定がある場合はそれに従います。