糖尿病外来の算定には、他の疾患とは違う性質があります。
「診療をしたこと」ではなく、「計画を立て、説明し、記録したこと」が算定の根拠になるという点です。
検査や処置であれば、実施すれば算定できます。しかし糖尿病の管理料・指導料は、文書の作成、患者への説明、その記録が要件に組み込まれています。つまり、業務フローの中に文書作成が入っていなければ、算定は安定しません。
免責:本記事は一般的な情報提供です。診療報酬の要件・様式は改定され得ます。実際の算定にあたっては最新の告示・通知および審査支払機関の取扱いをご確認ください。
生活習慣病管理料という軸
令和6年度の診療報酬改定で、糖尿病・脂質異常症・高血圧症は特定疾患療養管理料の対象から外れ、生活習慣病管理料での評価に整理されました。この変更は、糖尿病を主に診るクリニックの算定構造を大きく変えました。
生活習慣病管理料には検査等を包括する類型と、包括しない類型があり、どちらを算定するかで収益構造が変わります。自院の検査実施の頻度・内容によって有利不利が変わるため、選択は経営判断でもあります。
療養計画書という要件
この管理料の中核が療養計画書です。患者の状態と目標、療養上の指針を記載した文書を作成し、患者に説明して交付します。
ここで重要な運用上の変更があります。令和8年6月1日から、療養計画書への患者署名は不要となりました。ただし、計画書の作成・説明・交付そのものが不要になったわけではありません。署名を得る手間はなくなりましたが、文書を作り、説明し、渡すという業務は残ります。
つまり、文書作成の負担は依然として算定の律速です。この点をシステム面でどう軽くするかが本題になります。
療養計画書の自動生成については 療養計画書の自動生成 で詳しく扱っています。
算定を安定させる3つの視点
① 文書作成が診療の流れの中にあるか
療養計画書が「診療が終わってから、別途作るもの」になっていると、作成が後回しになり、算定が不安定になります。
確認すべきは次の点です。
- カルテの情報(検査値、処方、体重など)が計画書に自動で反映されるか
- 前回の計画書を引き継いで更新できるか
- 目標値や指針の定型文を登録できるか
- 作成した計画書が患者に紐づいて保管されるか
- 印刷・交付までその場で完結するか
とくに2つ目が効きます。毎回ゼロから作るのと、前回を土台に変化した部分だけ更新するのとでは、所要時間がまったく違います。
② 指導の実施記録が残る設計か
糖尿病診療では、複数の指導系の算定が関係します。
- 栄養指導(管理栄養士による)
- 糖尿病合併症の予防に関する指導
- 在宅自己注射を行う患者への指導
- 自己血糖測定に関する指導
これらは誰が、いつ、何を指導したかの記録が要件になります。医師以外の職種が関わるため、多職種が同じカルテに記録できることが前提です。
- 管理栄養士・看護師がそれぞれの記録を残せるか
- 職種ごとの記録テンプレートがあるか
- 記録が算定に結びついているか
紙の指導記録が別ファイルに保管されている運用では、算定との対応確認に手間がかかり、漏れも起きます。
③ 実施すべき評価が管理されているか
糖尿病診療には、定期的に実施すべき評価があります。
- 眼科への紹介と受診確認
- 腎機能・尿アルブミンの評価
- 足の観察
- 生活習慣に関する評価
これらは診療の質の問題であると同時に、指導系の算定要件に関わることがあります。
- 実施すべき項目の予定と実績が管理できるか
- 未実施の患者を抽出できるか
- 前回実施からの経過期間が分かるか
漏れが起きる典型的なパターン
| パターン | 起きること |
|---|---|
| 計画書を作り忘れた | その月の管理料が算定できない |
| 指導したが記録が残っていない | 指導料が算定できない |
| 記録が紙で別管理 | 算定との突き合わせができず、漏れに気づかない |
| 職種間で記録が分断 | 誰が何をしたか集約できない |
| 算定要件が担当者の記憶頼り | 担当が変わると漏れが増える |
いずれも記録と算定が構造的につながっていないことが原因です。算定漏れ全般の構造は 算定漏れはなぜ起こる? で整理しています。
チェックリスト
| 区分 | 確認項目 |
|---|---|
| 療養計画書 | カルテ情報の自動反映/前回からの引き継ぎ/定型文/保管/その場での交付 |
| 多職種記録 | 職種別の記録/テンプレート/算定との連動 |
| 評価管理 | 予定と実績/未実施の抽出/経過期間の把握 |
| 算定チェック | 記録との突き合わせ/締め前の確認/統計的なズレの検出 |
| 知識 | 要件がシステム側に保持されているか |
「文書作成の負担」をどう見るか
糖尿病を多く診るクリニックでは、療養計画書の作成が月間で相当な時間になります。仮に1件10分としても、対象患者が100人いれば月に16時間を超えます。
この時間は診療報酬に直接結びついているため、やめることはできません。減らせるとすれば、1件あたりの所要時間だけです。
システム選定でこの点を見るなら、実際の画面で「前回の計画書から今回を作る」操作を通しで確認するのが確実です。カタログ上の「療養計画書対応」という記載だけでは、ゼロから入力する画面があるだけという場合もあります。
AIネイティブという選択肢
糖尿病外来の算定・文書業務でAIが効くのは、次の点です。
- 療養計画書の下書き生成:カルテの記録と検査値から、計画書の草案を作る
- 指導記録の音声入力:栄養指導や療養指導の内容を口述で構造化する
- 算定チェック:記録と算定の対応を確認し、漏れを提示する
- 未実施項目の抽出:定期評価が済んでいない患者を洗い出す
- 説明資料の生成:患者ごとの状況に応じた指導資料を作る
とくに1つ目は、月間16時間という規模の業務に直接効きます。AIによる文書生成の考え方は AIによる文書作成とテンプレート で解説しています。
ただし、生成された計画書をそのまま交付しないという前提は必要です。内容は医師が確認し、必要に応じて修正します。
まとめ
- 糖尿病の管理料・指導料は、文書を作り、説明し、記録したことが算定の根拠になる
- 令和6年度改定で糖尿病は特定疾患療養管理料の対象から外れ、生活習慣病管理料での評価に整理された
- 令和8年6月1日から療養計画書の患者署名は不要になったが、作成・説明・交付は引き続き必要
- したがって文書作成の負担が算定の律速であり、前回からの引き継ぎができるかが実務的な差になる
- 指導系の算定は多職種が同じカルテに記録できることが前提になる
- 漏れの原因は一貫して記録と算定が構造的につながっていないこと
- 対象患者が100人規模なら計画書作成は月16時間超になり得る。ここは削減対象として明確
血糖データ連携を含む電子カルテ全般の要件は 糖尿病・内分泌クリニックの電子カルテ、通院中断の防止は 糖尿病外来の通院中断をどう防ぐか をご覧ください。AIカルテの詳細やデモをご希望の場合は お問い合わせ からご連絡ください。
