眼科は、診療科のなかでも画像データの量が特に多い診療科です。OCT(光干渉断層計)の断層画像、眼底カメラの写真、前眼部写真、視野検査の結果——。緑内障や加齢黄斑変性、糖尿病網膜症のように長期にわたって経過を追う疾患では、同じ患者の画像が受診のたびに蓄積していきます。院内サーバーの容量が逼迫する、機器ごとに画像の保存場所が異なる、古い画像を探すのに時間がかかる——こうした悩みを抱える眼科は少なくありません。本記事では、医用画像の標準規格であるDICOMの基礎と、クラウド保存によって眼科画像を安全に一元管理するためのポイントを解説します。
DICOMとは
DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)は、医用画像とその関連情報をやり取りするための国際標準規格です。画像そのものに加えて、患者ID、検査日、撮影機器、撮影条件などの付帯情報(メタデータ)を一緒に扱える点が特徴です。
DICOMはもともと放射線領域(CT・MRIなど)で普及してきましたが、眼科の画像についても、眼底写真やOCTなどを扱うための仕様が規格に取り込まれています。DICOMに対応した機器どうし、あるいは機器と電子カルテ・画像管理システムの間であれば、メーカーが異なっても標準的な方法で画像と付帯情報を受け渡せます。
眼科でDICOMが重要になる理由は、次のとおりです。
- メーカーをまたいで扱える:OCTはA社、眼底カメラはB社、といった混在環境でも、同じ形式で集約しやすい
- 患者との紐づけが確実になる:付帯情報に患者IDが含まれるため、ファイル名や手作業での紐づけに頼らずに済む
- 将来の機器更新に強い:機器を入れ替えても、過去の画像を標準形式で引き継ぎやすい
一方で、機器によってはDICOM出力がオプションであったり、独自形式での保存が標準であったりする場合もあります。導入前に、自院の機器がDICOMで出力できるかを確認しておくことが大切です。検査値の取り込みを含む機器連携の全体像は、眼科検査機器と電子カルテの連携で解説しています。
眼科画像の保存で起こりがちな課題
院内のサーバーやPCに画像を保存する従来型の運用では、次のような課題が起こりがちです。
- 容量の逼迫:高解像度のOCT画像や広角眼底画像は1件あたりのデータ量が大きく、数年でストレージが足りなくなる
- 保存場所の分散:機器ごとに付属のビューアーやPCに画像が保存され、診察時に複数の画面を行き来する
- バックアップの負担:災害や機器故障に備えたバックアップを院内で運用し続ける必要がある
- 経時比較のしにくさ:過去の画像を探し出して並べるのに手間がかかり、診察時間を圧迫する
特に容量の問題は、開業から数年経ってから表面化することが多く、サーバーの増設や入れ替えのたびにコストとデータ移行の手間が発生します。
クラウド保存という選択肢
こうした課題への解決策として、画像をクラウドに保存する方式が広がっています。クラウド保存の主なメリットは次のとおりです。
- 院内サーバーの容量を気にせず、画像を蓄積し続けられる
- データセンター側で冗長化されるため、院内でのバックアップ運用の負担が軽くなる
- 電子カルテと同じ基盤で画像を参照でき、診察画面から経時比較しやすい
一方で、医療情報をクラウドに預ける以上、セキュリティの確認は欠かせません。医療機関がクラウドサービスを利用する際は、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」と、事業者向けの経済産業省・総務省のガイドライン(いわゆる3省2ガイドライン)に沿っているかを確認する必要があります。考え方の全体像は3省2ガイドラインをわかりやすく解説、クラウドを選ぶ際の確認点は医療機関のクラウドセキュリティをご覧ください。
クラウドで眼科画像を扱う際のチェックポイント
眼科画像をクラウドで管理するシステムを選ぶ際は、次の観点を確認しましょう。
- DICOM対応:自院のOCT・眼底カメラ・視野計などからDICOM経由で自動取込できるか
- 容量の考え方:画像が増え続けても追加の設備投資なしに保存できるか
- 暗号化:保存時・通信時ともにデータが暗号化されているか
- アクセス管理と監査:誰がいつどのデータにアクセスしたかを記録できるか
- データの分離:他の医療機関のデータと論理的に分離されているか
- ガイドライン準拠:3省2ガイドラインに沿った設計・運用になっているか
- 経時比較のしやすさ:左右眼・日付ごとに画像を並べて比較できるか
AIカルテ 眼科のDICOM連携とクラウド保存
ポテックが開発する「AIカルテ」の眼科向けプロダクトは、眼科画像のDICOM連携とクラウド保存を前提に設計されています。詳しくはAIカルテ 眼科のページでご紹介しています。
- DICOM経由の自動取込:OCT・眼底カメラ・眼圧計・オートレフなどの検査機器から、DICOM経由でデータを自動取込します
- 主要メーカーの機器に対応:たとえばOCT・眼底カメラではTOPCON(3D OCT-1 Maestro2、TRC-NW400)、NIDEK(RS-3000 Advance2、AFC-330)、Carl Zeiss(CIRRUS HD-OCT、CLARUS 500)、CANON(OCT-S1、CR-2 AF)、視野計ではCarl Zeiss(HFA III)やHAAG-STREIT(Octopus 900)などに対応。DICOM対応機器であれば標準的な連携が可能で、未対応機器も個別に相談できます
- クラウドストレージで容量の心配なし:クラウドストレージを利用するため、高解像度の画像データも容量を気にせず安全に保存・閲覧できます
- 暗号化:保存時・通信時ともにAES-256暗号化を適用しています
- 監査ログとデータ分離:全CRUD操作の監査ログを記録し、医療機関ごとにデータを完全に分離するマルチテナント設計です。Passkey認証にも対応します
- 3省2ガイドライン準拠:厚生労働省・経済産業省・総務省のガイドラインに準拠した設計で、システムの継続的な監視とインシデント対応体制も備えています
さらにAIカルテでは、取り込んだ検査データや画像がカルテ・レセプトと同じ基盤で管理されます。AIアシスタントによる検査トレンドの要約や、検査結果からの所見ドラフトとも組み合わせられるため、画像を「保存する」だけでなく「診療に活かす」ところまでつながります。眼科でAIカルテが力を発揮する理由の全体像は、眼科にAIカルテが向いている理由でまとめています。
おわりに
眼科画像は、患者の経過を追ううえでかけがえのない資産です。だからこそ、容量の制約や保存場所の分散によって活かしきれない状態は避けたいところです。DICOMによる標準的な連携と、ガイドラインに沿ったクラウド保存を組み合わせることで、画像を安全に、容量を気にせず、診療の場ですぐに参照できる形で一元管理できます。
ポテックはAIカルテの提供を通じて、クリニックの皆様の最適な事業パートナーとして、医師や看護師・医事スタッフの働きやすさの改善はもちろん、クリニックとして実現したいことを最大限に叶えられるようサポートいたします。
詳細については、ぜひお問い合わせください。