この記事の要点
- レセプトのオンライン請求とは、レセコンで作成したレセプトデータを、セキュリティを確保したネットワーク回線を通じて審査支払機関のオンライン請求システムへ送信する請求方法で、請求命令上の原則の請求方法です。
- 光ディスク等による請求は2024年4月に新規適用が終了し、2024年10月以降に続ける場合は、1年以内にオンライン請求へ移行する計画を添えた届出が必要になりました。
- オンライン請求にはレセコン、請求用端末、IP-VPN接続またはIPsec+IKE接続の回線、端末ごとの電子証明書が必要で、オンライン資格確認の回線・端末・電子証明書と兼用できます。
- オンライン請求の医療機関は、返戻レセプトを返戻ファイルで受け取り(ダウンロード期間3か月)、原則としてオンラインで再請求します。
「オンライン請求とは何か」「レセコンを入れ替えるとき、オンライン請求の手続きはどうなるのか」「回線や電子証明書は何を用意すればよいのか」——開業準備や請求方法の見直しの際によくいただく質問です。本記事では、レセプトのオンライン請求の仕組み、光ディスク・紙との違い、原則化の経緯と現在の扱い、導入手順、毎月の請求の流れと締切、返戻や増減点連絡書の受け取り、オンライン資格確認との関係、よくあるトラブルを整理します。
免責:本記事は2026年10月31日時点の公表情報にもとづく一般的な情報提供です。請求方法・届出・受付時間などの取扱いは、厚生労働省の命令・通知と審査支払機関の案内が正本です。実際の手続きにあたっては、最新の原文と請求先の審査支払機関の案内をご確認ください。
社会保険診療報酬支払基金は、2026年10月に「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(DX審査支払機構)」へ改組されました。本記事では従来の呼び方にあわせて「支払基金」と表記します。
レセプトのオンライン請求とは
レセプトのオンライン請求とは、レセコンで作成したレセプトデータを、セキュリティを確保したネットワーク回線を通じて、審査支払機関(支払基金・国保連)のオンライン請求システムへ送信して請求する方法です。 2006年4月の請求省令の改正で追加された方法で、医療機関・薬局と審査支払機関、審査支払機関と保険者を全国規模のネットワークで結び、請求データをオンラインで受け渡します。
「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令」(以下「請求命令」)第1条では、保険医療機関が費用を請求するときは電子情報処理組織の使用による請求、つまりオンライン請求によることが原則とされています。光ディスク等や紙による請求は、命令の附則に定める場合に限って認められる扱いです。
レセプトそのものの意味や、提出から入金までの全体の流れは レセプトとは?意味・請求の流れ・レセプト業務 で解説しています。
オンライン請求・光ディスク等・紙の違い
厚生労働省の案内資料(令和6年3月時点版)では、請求方法ごとの違いを次のように整理しています。
| 項目 | オンライン請求 | 光ディスク等・紙レセプト |
|---|---|---|
| 提出方法 | 回線経由でデータを送信 | 光ディスク等や紙を窓口へ持参または郵送 |
| 受付時間 | 土日祝も受付。診療翌月5〜7日は8時〜21時、8〜10日は8時〜24時 | 土日祝は受付不可(10日が土日祝の場合は受付)。原則、診療翌月10日17時30分まで |
| 事前点検 | 受付・事務点検ASPでデータを事前チェックでき、エラー分は12日までに修正・再提出できる | 事務的な誤りがあったレセプトは返戻され、次月以降に再請求 |
| 審査後の帳票 | オンライン請求システム上で確認・データで保存できる | 紙で届き、紙で保管する |
オンライン請求では、提出先の誤りもシステム上でチェックされます。印刷や発送の作業がなくなることも、医療事務にとっての大きな違いです。
オンライン請求の原則化:これまでの経緯と現在の扱い
「オンライン請求の割合を100%に近づける」ロードマップ
規制改革実施計画(令和4年6月7日閣議決定)で、厚生労働省は「将来的にオンライン請求の割合を100%に近づけていくための具体的なロードマップを作成する」とされました。これを受けて、令和5年3月23日の社会保障審議会医療保険部会に「オンライン請求の割合を100%に近づけていくためのロードマップ(案)」が示されています。同資料によると、支払基金の令和5年1月処理分では、オンライン請求が153,845機関(70%)、光ディスク等が59,588機関(27%)でした。
ロードマップ(案)の主な内容は次のとおりです。
- 光ディスク等による請求は、令和6年4月から新規適用を終了し、既存の機関は令和6年9月末までに原則オンライン請求へ移行する
- 光ディスク等による請求を続ける機関には、届出とあわせて移行計画の提出を求め、1年単位の経過的な取扱いとする
- 紙レセプトは、レセコンを使用していない場合の新規適用を令和6年4月から終了する
- オンライン請求の機関に対する紙での返戻を令和6年9月末に廃止する
現在のルール(請求命令と通知)
この方針は、令和5年の請求命令の改正(令和5年内閣府・厚生労働省令第8号)と、その留意事項通知(令和5年12月26日保発1226第4号)で制度化されました。現在の扱いは次のとおりです。
| 請求方法 | 現在の扱い |
|---|---|
| オンライン請求 | 原則の請求方法(請求命令第1条)。令和6年4月以降に新たに請求を始める医療機関・薬局はオンライン請求で行う |
| 光ディスク等 | 令和6年3月31日以前の直近の請求が光ディスク等だった機関に限り、令和6年9月30日まで認められた。令和6年10月以降も続ける場合は、1年を超えない移行計画を添えて審査支払機関へ届け出る必要がある(附則第3条の2) |
| 紙レセプト | レセプトコンピュータを使用していない旨の届出をした場合(附則第3条の4)や、常勤の保険医の生年月日が一定の日以前である場合(附則第3条の5)など、附則に定める場合に限って認められる |
光ディスク等の継続については、令和7年5月28日の通知(保発0528第1号)で、令和7年10月以降も続ける場合は同年8月31日までに届出と移行計画書(様式第1号)を改めて提出すること、移行計画書は最大1年間の内容で原則1年以内にオンライン請求へ移行する計画とすること、移行計画書を出さないまま光ディスク等の請求を続けることは認められないことが示されています。提出は原則として医療機関等向け総合ポータルサイトのフォームから行います。
このほか、回線の障害が生じている間、レセコン導入の作業が完了していない間、改築工事中・臨時施設での診療中、廃止・休止の計画がある場合などは、届出により光ディスク等や紙での請求ができます(附則第4条第5項)。
オンライン請求に必要なもの
| 必要なもの | 内容 | オンライン資格確認との兼用 |
|---|---|---|
| レセプトコンピュータ | レセプトデータを作成する。返戻ファイルの取り込み・オンラインでの返戻再請求に対応しているかも確認する | ― |
| オンライン請求用端末 | オンライン請求システムの動作環境を満たすパソコン | 兼用できる |
| ネットワーク回線 | IP-VPN接続方式またはIPsec+IKE接続方式 | 兼用できる |
| 電子証明書 | 端末1台につき1枚必要 | 端末を兼用する場合、オンライン資格確認用の電子証明書がインストール済みなら別途の発行は不要 |
回線:IP-VPN接続とIPsec+IKE接続
- IP-VPN接続:回線事業者が構築した閉域網を使って接続する方式。プロバイダ契約は不要です
- IPsec+IKE接続:インターネット上に暗号化した通信経路を作る技術(IPsec)と、電子鍵を交換する標準技術(IKE)を組み合わせ、IP-VPNと同等のセキュリティを確保する方式。プロバイダ(ISP)に加えて、IPsec+IKEサービス提供事業者との契約が必要です
接続できる回線・事業者は、支払基金の「オンライン請求及びオンライン資格確認等システム接続可能回線・事業者一覧表」に掲載されています。オンライン請求用に回線を別に引く必要はなく、オンライン資格確認で使っている回線を利用できます。
端末と電子証明書
オンライン請求用端末は、レセコンと共用することも利用者の責任で可能ですが、厚生労働省はセキュリティの観点から別に用意することを推奨しています。既存のインターネット接続端末を使う場合は、ウイルス等へのセキュリティ対策が必要です。
電子証明書は、通信相手が間違いなく本人であることを認証局が電子的に証明するもので、オンライン請求用端末には必須です。オンライン資格確認とは別の端末で請求する場合は、新たに電子証明書を発行します(厚生労働省資料では、発行料1枚あたり1,500円(税込)、郵送料1送付あたり753円(税込))。オンライン請求システムの利用に必要なソフトウェアは、審査支払機関から無償で配布されます。
導入の手順
厚生労働省の案内では、準備作業は次の4ステップです。
- 準備:利用しているレセコンの事業者に、オンライン請求への対応を確認する。回線事業者・端末のシステムベンダにも問い合わせる
- 発注:端末や回線(IP-VPN事業者またはIPsec+IKE事業者)の見積を取り、発注する
- 審査支払機関への申請:医療機関等向け総合ポータルサイトから「オンライン請求利用申請」と「電子証明書発行申請」を行う(端末を兼用し、オンライン資格確認用の電子証明書がインストール済みなら発行申請は不要)。新規開設の場合は、各都道府県の支払基金審査委員会事務局へ「保険医療機関届」も提出する
- 導入・運用準備:届いた設定ツールと電子証明書発行通知を使って設定し、電子証明書をインストールする。導通試験を行い、必要に応じて確認試験(任意)を実施して運用を開始する
支払基金のQ&Aでは、届出を月ごとに取りまとめて翌月15日までに設定ツール等を送付すること、電子媒体からオンライン請求に移行する場合は、届出から送信用ソフトのインストール、電子証明書の取得まで約1.5〜2か月が必要であることが示されています。開業や切り替えの時期から逆算して準備するのが確実です。
毎月の請求の流れと締切
| 時期 | 作業 |
|---|---|
| 月末〜翌月4日頃 | 1か月分を締め、レセコンでレセプトを作成・点検する |
| 5日〜10日 | オンライン請求システムへ送信する。受付・事務点検ASPで事務的な誤りを事前に確認する |
| 11日〜12日 | 受付・事務点検ASPでエラー(受付不能・要確認)になった分を訂正・確定する |
- 請求命令第2条により、請求は各月分を翌月10日までに行います
- 10日までに確定しなかったデータのうち、エラー分以外は自動で確定されます。エラー分は11〜12日に訂正・確定が必要で、確定しないと請求の対象外になります
- オンライン請求の場合、診療報酬請求書もデータで送るため、紙の請求書の提出は不要です
受付・事務点検ASPで見つかるのは記載漏れなど事務的な誤りです。病名と診療内容の整合や算定要件の確認は、送信前の院内の点検で行います(レセプト点検(レセチェック)の基礎)。
返戻・増減点連絡書をオンラインで受け取る
オンライン請求の医療機関は、審査結果の帳票や返戻レセプトもオンラインで受け取ります。
- 帳票:支払基金では、増減点連絡書、返戻内訳書、当座口振込通知書、再審査等支払調整額通知票などを毎月5日頃にPDFでオンライン請求システムから配信しています。読み方は 増減点連絡書の見方と再審査請求 を参照してください
- 返戻レセプト:令和6年10月以降、オンライン請求の医療機関への紙の返戻レセプトの送付は終了し、返戻ファイルのみになりました。返戻ファイルのダウンロード期間は3か月で、期間内に取得してオンラインで再請求します(紙のみで送付された返戻レセプトは紙で再請求)
- 再審査・取下げ:前月以前に請求した分の取下げ依頼などは、原則としてオンライン請求システムから再審査等請求ファイルで提出します
返戻への対応は レセプト返戻の理由一覧と再請求の手順 と レセプト返戻とは?査定との違い を、取下げは レセプトの取り下げ方法と過誤調整 をご覧ください。
オンライン資格確認との関係
保険医療機関・薬局では、オンライン資格確認の導入が原則として義務化されています。オンライン資格確認とオンライン請求は、同じネットワーク回線と端末を兼用でき、端末を兼用する場合は電子証明書も兼用できます。すでにオンライン資格確認を導入している医療機関は、回線や端末を新たに用意しなくてもオンライン請求を始められる場合があります。
また、オンライン資格確認で受診時の保険資格を確認しておくことは、資格の誤りによる返戻を減らすことにもつながります。オンライン資格確認の義務化と導入手順は オンライン資格確認の義務化とは で解説しています。
よくあるトラブルと確認先
支払基金のQ&Aで案内されている主な注意点です。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 電子証明書をダウンロードしていない | 発行通知書の発行後180日以内なら何回でもダウンロードできるが、過ぎるとダウンロードできなくなる。届いたら早めに設定する |
| 発行通知書をなくした | 再発行はできない。有償で発行申請をやり直し、紛失した証明書は失効させる |
| パソコンを入れ替える・証明書を削除した | 旧パソコンの証明書を電子媒体にコピーして使える。削除した場合はバックアップからの再インストール、または期間内の再ダウンロード。どちらもできなければ有償で発行申請 |
| 送信中に通信が切れた | 送信中のデータは消去されるため、回線復旧後に再送信する。受信中の場合は復旧後に中断箇所から再開できる |
| 画面に接続できない | 接続を確認し、IP-VPN(IPv4)接続でIPv6の設定が有効になっていれば無効にする。解決しない場合はネットワークサポートデスクへ |
| 回線に障害が起きた | 請求命令の附則にもとづき、届出により光ディスク等による請求ができる |
請求データの作り方はレセコンのベンダ、回線は回線事業者(IPsec+IKE接続の場合はIPsec+IKE事業者)、オンライン請求システムの操作は審査支払機関のヘルプデスクと、問い合わせ先が分かれる点も押さえておくと、トラブル時に慌てずに済みます。
まとめ
- レセプトのオンライン請求とは、レセプトデータを専用のネットワーク経由で審査支払機関へ送る請求方法で、請求命令上の原則
- 光ディスク等は令和6年4月に新規適用が終了。令和6年10月以降に続けるには、1年以内の移行計画を添えた届出が必要
- 必要なのはレセコン、請求用端末、IP-VPNまたはIPsec+IKEの回線、端末ごとの電子証明書。オンライン資格確認と兼用できる
- 受付は診療翌月の5日〜10日。受付・事務点検ASPのエラー分は12日まで訂正できる
- 増減点連絡書などの帳票は毎月5日頃にPDFで配信され、返戻はファイルで届く(ダウンロード期間3か月)
AIを使った送信前の点検については AIレセプトチェックとは を、毎月の作業負担の減らし方は レセプト業務を効率化する5つの方法 を参照してください。
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よくある質問
- Q. レセプトのオンライン請求とは何ですか?
- A. レセコンで作成したレセプトデータを、セキュリティを確保したネットワーク回線を通じて、審査支払機関(支払基金・国保連)のオンライン請求システムへ送信して請求する方法です。2006年4月の請求省令改正で追加された方法で、現在は請求命令上の原則の請求方法になっています。
- Q. オンライン請求は義務ですか?
- A. 請求命令では、オンライン請求(電子情報処理組織の使用による請求)が原則です。光ディスク等による請求は2024年4月に新規適用が終了し、2024年10月以降に続ける場合は、1年以内の移行計画を添えた届出が必要です。紙レセプトは、レセコンを使用していない場合など命令の附則に定める場合に限って、届出により認められています。
- Q. オンライン請求にはどんな回線が必要ですか?
- A. 閉域網を使うIP-VPN接続か、インターネット回線を使うIPsec+IKE接続のいずれかです。IPsec+IKE接続の場合は、プロバイダ(ISP)に加えてIPsec+IKEサービス提供事業者との契約が必要です。オンライン資格確認用の回線と兼用できます。
- Q. オンライン請求はいつ送信できますか?
- A. 診療翌月の5日から10日までです。厚生労働省の案内(令和6年3月時点版)では、5〜7日は8時〜21時、8〜10日は8時〜24時で、土日祝も受け付けられます。受付・事務点検ASPでエラーになった分は12日まで訂正できます。
- Q. オンライン資格確認の端末でオンライン請求もできますか?
- A. できます。端末とネットワーク回線はオンライン資格確認と兼用でき、兼用する場合、オンライン資格確認用の電子証明書がインストール済みであれば、オンライン請求用に別途電子証明書を発行する必要はありません。
- Q. 電子証明書の発行通知書をなくした場合はどうなりますか?
- A. 支払基金(DX審査支払機構)のQ&Aでは、発行通知書は再発行できず、有償で電子証明書の発行申請をやり直す必要があるとされています。また、電子証明書は発行通知書の発行後180日以内であればダウンロードできますが、それを過ぎるとダウンロードできなくなります。