この記事の要点
- レセプトとは、保険医療機関が患者ごとに1か月分の診療内容と点数をまとめ、保険者に医療費(患者負担分を除く部分)を請求するための明細書で、医科・歯科は「診療報酬明細書」、調剤は「調剤報酬明細書」と呼ばれます。
- レセプトは各月分を翌月10日までに審査支払機関へ提出することが請求命令で定められており、原則としてオンライン請求で提出します。
- 支払基金(DX審査支払機構)では、審査を経た医療費が診療月の翌々月の原則21日までに医療機関の口座へ振り込まれます。
- 医療事務のレセプト業務は、月初の点検・提出、審査結果(増減点連絡書・返戻)の確認、返戻の再請求や再審査請求という毎月のサイクルで回ります。
「レセプトとは何か」「レセプト業務とは具体的に何をするのか」——医療事務に新しく入った方や、開業を控えた院長からよくいただく質問です。本記事では、レセプト(診療報酬明細書)の意味と種類、記載される項目、提出から入金までの流れ、医療事務のレセプト業務の月間スケジュール、レセコンと電子カルテの違いまで、レセプトそのものの基礎を整理します。点検のやり方や返戻・査定への対応など個別のテーマは、それぞれの解説記事へご案内します。
免責:本記事は2026年10月31日時点の公表情報にもとづく一般的な情報提供です。請求の方法・期限・様式は、厚生労働省の命令・通知と審査支払機関の案内が正本です。実際の請求にあたっては、最新の原文と請求先の審査支払機関の案内をご確認ください。
社会保険診療報酬支払基金は、2026年10月に「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(DX審査支払機構)」へ改組されました。本記事では従来の呼び方にあわせて「支払基金」と表記します。
レセプトとは
レセプトとは、保険医療機関が患者ごとに1か月分の診療内容と点数をまとめ、保険者(健康保険組合、協会けんぽ、市町村国保など)に医療費を請求するための明細書です。 ドイツ語の Rezept に由来する呼び方で、正式には医科・歯科では「診療報酬明細書」、薬局では「調剤報酬明細書」といいます。
日本の公的医療保険では、患者さんは窓口で自己負担分(一部負担金)を支払い、残りの医療費は保険者が負担します。この残りの部分を受け取るために医療機関が作成するのがレセプトです。保険者に直接送るのではなく、審査支払機関(支払基金と、都道府県ごとの国民健康保険団体連合会=国保連)に提出し、審査を経て支払われます。
- 作成の単位:患者さん1人につき、1か月(暦月)単位
- 金額の考え方:診療行為ごとに定められた点数を積み上げ、1点=10円で計算する
- 提出先:被用者保険(協会けんぽ・健康保険組合など)分は支払基金、国民健康保険や後期高齢者医療の分は国保連
診療報酬請求書との関係
医療機関は、レセプト(明細書)とあわせて、1か月分の請求件数・点数を総括した「診療報酬請求書」(薬局は調剤報酬請求書)を提出します。請求命令では、診療報酬請求書・診療報酬明細書・調剤報酬請求書・調剤報酬明細書をまとめて「レセプト」と呼んでいます。オンライン請求では、これらをデータとして送信するため、紙の請求書を別に提出する必要はありません。
レセプトの種類
| 種類 | 正式名称 | 作成する施設 |
|---|---|---|
| 医科レセプト | 診療報酬明細書(入院・入院外で様式が分かれる) | 病院・診療所(医科) |
| 歯科レセプト | 診療報酬明細書 | 歯科診療所・病院の歯科 |
| 調剤レセプト | 調剤報酬明細書 | 保険薬局 |
このほか、訪問看護ステーションが作成する訪問看護療養費明細書などもあります。一般的な診療所で毎月作成するのは、医科の入院外のレセプトです。
レセプトに記載される主な項目
レセプトに何をどう書くかは、厚生労働省の「診療報酬請求書等の記載要領等について」で定められています(診療報酬改定にあわせて改正されます)。主な項目は次のとおりです。
| 区分 | 主な記載内容 |
|---|---|
| 医療機関・診療年月 | 医療機関コード、診療年月 |
| 保険・公費 | 保険者番号、被保険者証等の記号・番号、公費負担者番号・受給者番号 |
| 患者 | 氏名、性別、生年月日 |
| 傷病名 | 傷病名、診療開始日、転帰(治癒・死亡・中止) |
| 診療実日数 | その月に実際に診療した日数 |
| 診療内容 | 初診・再診、医学管理、投薬、注射、処置、検査などの診療行為と点数 |
| 合計 | 合計点数、一部負担金額など |
審査支払機関では、まず患者名・傷病名・保険者番号などの記載事項や請求点数の誤りをシステムで点検し、そのうえで診療内容が診療報酬点数表などのルールに沿っているかを審査します。傷病名と、実施した検査や投薬の内容が対応していることが、レセプトの基本です。
レセプト請求から入金までの流れ
支払基金の場合の流れを、10月に診療した分を例に整理します。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 10月中 | 診療を行い、患者さんから一部負担金を受け取る。日々の診療内容はレセコンに入力される |
| 10月末〜11月上旬 | 1か月分を締めてレセプトを作成し、点検する |
| 11月10日まで | 審査支払機関へ提出する(オンライン請求は11月5日〜10日に受付) |
| 11月中旬〜下旬 | 審査支払機関が事務点検・審査を行う。不適切な内容は査定(減点)、判断が難しいものや記載が整っていないものは返戻される |
| 12月10日まで | 審査支払機関が保険者へ請求する |
| 12月21日まで(原則) | 医療機関の指定口座へ振り込まれる |
- **提出期限(翌月10日)**は、「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令」第2条で定められています
- **支払(翌々月の原則21日まで)**は支払基金の案内によるものです。国保連の支払日は、各国保連の案内で確認してください
- 審査の結果は、増減点連絡書や返戻内訳書などの帳票で医療機関に通知されます。支払基金では毎月5日頃に、オンライン請求システムでPDFとして配信されます
つまり、診療してから保険分の医療費が入金されるまでには、約2か月かかります。開業直後のクリニックで運転資金を見込む際にも押さえておきたい点です。
医療事務の「レセプト業務」とは
レセプト業務とは、毎月のレセプトを作成・点検して期限までに提出し、審査結果に対応するまでの一連の仕事です。医療事務の業務の中でも、月初に作業が集中するのが特徴です。
月間スケジュールの例
| 時期 | 主な作業 |
|---|---|
| 毎日 | 受付での保険資格の確認、会計時の入力内容の確認、病名の登録もれの確認 |
| 月末〜翌月4日頃 | 1か月分を締めてレセプトを出力し、医師と事務で点検(病名もれ、算定要件、記載不備など) |
| 5日頃 | 前月までに請求した分の増減点連絡書・返戻内訳書などが届くので確認する |
| 5日〜10日 | オンライン請求で提出する。事前点検(受付・事務点検ASP)でエラーが出た分を修正する |
| 中旬以降 | 返戻されたレセプトの修正と再請求、査定に納得できない場合の再審査請求、誤りに気づいた分の取り下げ依頼 |
支払基金のオンライン請求では、受付・事務点検ASPで事務的な誤りを送信前に確認でき、エラー分は12日まで訂正できます。点検のやり方は レセプト点検(レセチェック)の基礎 で、作業負担の減らし方は レセプト業務を効率化する5つの方法 で詳しく解説しています。
審査結果への対応
審査で減点されることを「査定」、医療機関へ差し戻されることを「返戻」といいます。返戻は修正して再請求すれば改めて審査され、査定に不服がある場合は再審査請求で見直しを求めます。それぞれの意味と対応は次の記事にまとめています。
- 返戻と査定の違い:レセプト返戻とは?査定(減点)との違い
- 返戻理由と再請求の手順:レセプト返戻の理由一覧
- 増減点連絡書の読み方と再審査請求:増減点連絡書の見方と再審査請求
- 自院の誤りに気づいたとき:レセプトの取り下げ方法と過誤調整
レセコンと電子カルテの違い
レセプトを作るのは、電子カルテではなくレセコン(レセプトコンピュータ)の役割です。
| 項目 | 電子カルテ | レセコン |
|---|---|---|
| 主な目的 | 診療内容(所見・処方・検査など)の記録 | 診療内容を点数に換算し、会計とレセプトを作成 |
| 主な利用者 | 医師・看護師 | 医療事務 |
| 扱う情報 | 診療録(カルテ) | 保険情報、点数、請求データ |
電子カルテに入力した処方や処置がレセコンに送られ、レセコンが点数計算をしてレセプトを作る、というのが基本的な関係です。両者を1つのシステムにまとめた「一体型」と、別々の製品を連携させる「分離型」があり、病名や算定の情報がどこで管理されるかによって、レセプト業務の手間が変わります。詳しくは レセコンと電子カルテの違い(一体型・分離型)、レセコンとは、ORCAと電子カルテの連携 を参照してください。
レセプトでよくあるミス
レセプトの誤りの多くは、提出前の確認で防げます。代表的なものは次のとおりです。
- 保険資格の誤り:保険者番号や記号・番号の誤り、資格喪失後の受診。オンライン資格確認で受診時に最新の資格を確認することが基本です(オンライン資格確認の解説)
- 傷病名のもれ・不整合:実施した検査や処方に対応する病名が登録されていない
- 算定要件の未充足:回数制限、併算定できない組み合わせ、施設基準の届出がない加算の算定など
- 記載の不備:症状詳記が必要な場面での記載もれ、公費の記載誤りなど
- 算定もれ:本来算定できる加算や管理料を入れ忘れる(算定漏れの原因別チェックリスト)
まとめ
- レセプトとは、保険医療機関が患者ごとに1か月分の診療内容と点数をまとめ、保険者に医療費を請求するための明細書。医科・歯科は診療報酬明細書、調剤は調剤報酬明細書
- 各月分を翌月10日までに審査支払機関へ提出する(請求命令)。オンライン請求は5日〜10日に受付
- 支払基金では、診療月の翌々月の原則21日までに支払われる。診療から入金まで約2か月
- レセプト業務は、月初の点検・提出、審査結果の確認、返戻・査定への対応という毎月のサイクル
- レセプトを作るのはレセコン。電子カルテとの連携のしかたで、病名もれや算定もれの起きやすさが変わる
提出方法の詳細は レセプトのオンライン請求とは を、AIを使った点検は AIレセプトチェックとは を参照してください。
ポテックは、クリニック向けのAI電子カルテと、算定要件をふまえたAIレセプトチェックを提供しています。毎月のレセプト点検の負担でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
よくある質問
- Q. レセプトとは簡単にいうと何ですか?
- A. 医療機関が「この患者さんにこの月、こういう診療をしたので、保険で支払われる分の医療費を請求します」と保険者に伝えるための明細書です。正式には、医科・歯科は診療報酬明細書、薬局は調剤報酬明細書といいます。患者さん1人につき、1か月単位で作成します。
- Q. レセプトはいつまでに提出しますか?
- A. 各月分を翌月10日までに審査支払機関(支払基金・国保連)へ提出します。これは「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令」で定められています。オンライン請求では、診療翌月の5日から10日まで受け付けられます。
- Q. レセプトを提出してから入金まではどのくらいかかりますか?
- A. 支払基金(DX審査支払機構)の場合、診療した月の翌々月の原則21日までに、医療機関が指定した口座へ振り込まれます。たとえば10月診療分は、11月10日までに提出し、12月21日までに支払われる流れです。国保連の支払日は各国保連の案内で確認してください。
- Q. レセプト業務とは何をする仕事ですか?
- A. 1か月分の診療内容をレセプトにまとめ、病名や算定のもれ・誤りを点検して期限までに提出し、審査結果として届く増減点連絡書や返戻を確認して、必要に応じて再請求や再審査請求を行う一連の業務です。医療事務の中心となる仕事の一つです。
- Q. レセコンと電子カルテの違いは何ですか?
- A. 電子カルテは医師が診療内容を記録するためのシステム、レセコン(レセプトコンピュータ)は診療内容を点数に換算して会計やレセプトを作成するためのシステムです。両者を1つにまとめた一体型と、別々の製品を連携させる分離型があります。
- Q. レセプトを出したあとに誤りに気づいたらどうしますか?
- A. 審査結果に影響しない誤りは取り下げを依頼して修正のうえ再請求し、査定(減点)に不服がある場合は再審査請求を行います。手続きや期限は請求先の審査支払機関ごとに異なるため、最新の案内を確認してください。