処方や窓口対応の場面で「長期収載品」という言葉を見かけることが増えました。2024年10月に長期収載品の選定療養が始まり、2026年6月にその負担が引き上げられたためです。
長期収載品とは、ひと言でいえば後発医薬品(ジェネリック)が販売されている先発医薬品のことです。特許が切れ、長期間にわたって薬価基準に収載されている先発品を指します。
言葉自体は薬価制度の用語ですが、いまはそれが窓口でいくら請求するかに直結します。本記事では、長期収載品の定義、選定療養の対象範囲、特別の料金の計算、対象外となるケース、そしてクリニックの実務までを整理します。
免責:本記事は一般的な情報提供です。薬価や制度の運用は改定により変わります。実際の算定・徴収にあたっては、厚生労働省の告示・通知および疑義解釈の最新版をご確認ください。
長期収載品とは——「後発品のある先発品」
医薬品は、薬価制度の上でおおまかに次のように分かれます。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 先発医薬品(新薬) | 最初に開発・承認された医薬品。特許で保護されている期間がある |
| 長期収載品 | 先発品のうち、特許が切れて後発品が販売されているもの |
| 後発医薬品(ジェネリック) | 先発品と有効成分・効能効果が同一として承認された医薬品。薬価は先発品より低い |
つまり長期収載品は、先発品と別のカテゴリではありません。先発品が時間の経過とともに移っていく状態を指す言葉です。後発品が出た時点で、その先発品は長期収載品になります。
「長期」というのは、薬価基準に長く収載されているという意味です。開発費の回収が進み、後発品という代替がある以上、同じ価格を保険で支え続ける前提が変わる——制度上はそう位置づけられています。
なぜいま話題になっているのか
長期収載品は以前から薬価の引き下げ対象でしたが、2024年10月から患者の窓口負担に直接関わる仕組みが始まりました。
医療上の必要性がないのに患者が先発品を希望した場合、後発品との薬価差の一部を**「特別の料金」として患者が負担する**——これが長期収載品の選定療養です。
選定療養そのものの仕組みは 選定療養とは?対象になる項目と院内掲示・同意の実務 で扱っています。ここでは長期収載品に絞って見ていきます。
選定療養の対象になる長期収載品の範囲
長期収載品がすべて対象になるわけではありません。次のいずれかに当てはまるものが対象とされています。
- 後発医薬品が薬価収載されてから5年以上経過しているもの
- 5年未満でも、後発医薬品への置換率が50%以上に達しているもの
後発品が出たばかりで供給が安定していない段階では、患者に選択の責任を負わせない——という考え方です。後発品が十分に行き渡ってから対象にするという線引きになっています。
逆にいえば、後発品が存在しない先発品は対象外です。特許期間中の新薬を処方しても、この仕組みは関係ありません。
特別の料金はいくらになるのか
計算の考え方は次のとおりです。
- その長期収載品の薬価と、後発医薬品の最高価格帯の薬価との差額を出す
- 差額の一定割合を「特別の料金」として算出する
- 特別の料金は保険給付の対象外(全額患者負担)とし、残りは通常どおり保険給付の対象とする
この「一定割合」が、制度開始時と現在とで変わっています。
| 時期 | 特別の料金 |
|---|---|
| 2024年10月1日〜 | 薬価差の4分の1相当 |
| 2026年6月1日〜 | 薬価差の2分の1相当 |
2026年度の診療報酬改定で引き上げられました。改定全体の変更点は 診療報酬改定2026 クリニックが押さえるべき変更点と対応策 にまとめています。
消費税がかかる
見落としやすい点として、特別の料金には消費税が課税されます。保険給付は非課税ですが、選定療養として徴収する部分は保険外のサービス対価にあたるためです。
会計システム上、保険分と選定療養分は課税区分が違うことになります。ここを分けて処理できないと、金額は合っていても消費税の計算が合いません。保険診療と保険外の会計をどう分けるかは 保険診療と自由診療の会計を分ける実務 で詳しく扱っています。
対象外になるケース——「医療上の必要性」
患者が先発品を使っても特別の料金が発生しない場合があります。判断の軸は**「患者の希望なのか、医療上の必要があるのか」**です。
医療上の必要性があると医師が判断した場合は対象外です。たとえば次のような事情が想定されます。
- 後発品では効能・効果に差がある適応で使う必要がある
- 先発品と後発品で副作用やアレルギーの発現に差があり、後発品が使えない
- 剤形が異なり、嚥下の状態などから患者が服用できない
- 後発品に切り替えたところ、症状の悪化や副作用が生じた実績がある
供給側の事情で後発品を提供できない場合も対象外です。薬局や医療機関に後発品の在庫がない、あるいは流通の状況で入手できないケースが該当します。
重要なのは、この判断は記録に残す必要があるという点です。医療上の必要性があるとして特別の料金を徴収しなかったなら、その理由が診療録・処方箋から説明できる状態にしておきます。
クリニックの実務で何が変わるか
処方の場面での説明。 先発品を希望する患者に対して、後発品を選んだ場合との差額が発生することを伝える必要があります。院内処方か院外処方かで実際に徴収する主体は変わりますが、説明の起点は処方する側です。
院内掲示。 選定療養として料金を徴収する場合、その内容と金額を院内に掲示することが求められます。長期収載品は品目ごとに金額が変わるため、「品目一覧を貼り出す」のではなく算定の考え方を掲示する運用が現実的です。
処方箋への記載。 医療上の必要性があると判断した場合や、患者が後発品を希望しない場合など、処方箋上で意思表示が必要になります。院内のルールを決めておかないと、医師ごとに運用が変わります。
レセコン・電子カルテの設定。 対象品目かどうか、特別の料金がいくらになるかは、薬価改定のたびに変わります。マスタ更新で追従できるかが実務上の分かれ目です。手計算で運用すると、改定のたびに窓口が止まります。
電子処方箋との関係。 電子処方箋では先発・後発の選択に関する情報も電子的に受け渡されます。導入の全体像は 電子処方箋とは?クリニック導入のメリット・費用・進め方 を参照してください。
よくある誤解
「長期収載品を処方してはいけない」。 そうではありません。処方は可能で、医療上の必要性があれば特別の料金も発生しません。患者の希望のみを理由に選ぶ場合に負担が生じるという仕組みです。
「先発品はすべて対象になる」。 対象は後発品が存在する長期収載品のうち、収載から5年経過または置換率50%以上のものに限られます。特許期間中の新薬は関係ありません。
「差額の全額を患者が負担する」。 負担するのは差額の一定割合(2026年6月以降は2分の1相当)であり、全額ではありません。残りは保険給付の対象として扱われます。
「一度決めれば運用は固定できる」。 薬価は改定され、後発品の置換率も動きます。対象品目は変わり続ける前提で、マスタ更新の運用を組む必要があります。
システムに求められること
この制度が現場で回るかどうかは、マスタと会計が連動しているかにかかっています。
必要なのは次の3点です。対象品目の判定が最新の薬価マスタに追従すること。特別の料金が自動計算され、保険分と分離して会計に載ること。課税区分が正しく分かれ、領収書に反映されること。
このどれかが手作業になると、窓口の負荷は制度が変わるたびに増えます。レセプト側の整合を含めた点検の考え方は レセプト点検とは?レセチェックの基礎・やり方・流れをわかりやすく解説 で扱っています。
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まとめ
- 長期収載品とは、後発医薬品が販売されている先発医薬品のこと
- 2024年10月から、**医療上の必要性なく患者が希望した場合に「特別の料金」**が発生する
- 対象は、後発品の収載から5年経過または置換率50%以上の長期収載品
- 特別の料金は薬価差の一定割合で、2026年6月1日から2分の1相当(導入時は4分の1)
- 特別の料金は保険外・全額患者負担で、消費税が課税される
- 医療上の必要性がある場合や後発品を提供できない場合は対象外
- 実務では説明・院内掲示・処方箋記載・マスタ更新の4点を整える
- 対象品目は改定で変わるため、マスタ更新で追従できる仕組みが前提になる
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