「産科管理加算は、うちの有床診療所でも算定できるのか」「アドバンス助産師がいないと届出できないのか」「分娩のどの日から算定できるのか」——分娩を取り扱う病院・有床診療所の院長、事務長、医療事務の方から確認されることの多いテーマです。本記事では、2026年度(令和8年度)診療報酬改定で新設された産科管理加算について、厚生労働省の改定資料、疑義解釈、届出チェックリストにもとづき、点数・算定対象・施設基準・届出を整理します。
免責:本記事は2026年11月4日時点の公表情報にもとづく一般的な情報提供です。算定要件・施設基準・届出の取扱いは、厚生労働省の告示・通知および管轄の地方厚生局の案内が正本です。届出や算定の最終判断は、必ず最新の原文と地方厚生局でご確認ください。
産科管理加算の全体像
分娩件数の減少にともない、分娩を取り扱う産科病棟が他科の患者も受け入れる混合病棟になる例が増えています。この状況を踏まえ、母子の心身の安定・安全を確保しつつ、院内助産・助産師外来や産後ケア事業などの母子保健事業と連携して分娩に係る診療を提供する体制を評価するものとして、産科管理加算が新設されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 点数 | 1日につき。産科管理加算1(病院)250点、産科管理加算2(有床診療所)50点 |
| 算定対象 | 分娩を伴う入院中の患者(分娩が開始した日以降に限る) |
| 届出の開始日 | 令和8年6月1日に新設された施設基準として届出の対象 |
1点は10円で換算されるため、1日あたり病院は2,500円、有床診療所は500円に相当します。
算定できる日はいつからか
算定は「分娩が開始した日以降」に限られます。疑義解釈(令和8年3月23日付事務連絡、問15)では、次のように示されています。
- 陣痛発来によって分娩が開始していると認めて入院した日を含めてよい
- 予定帝王切開など、未陣発で帝王切開術による分娩となる場合は、手術の開始時刻が含まれる日から算定できる
日数ごとに積み上がる加算のため、起算日をレセプト・会計システム上どう扱うかを事前に決めておくことが、算定漏れや過剰請求の防止につながります。
施設基準の主なポイント
改定資料では、病院(加算1)と有床診療所(加算2)の主な施設基準が次のように示されています。
| 区分 | 産科の患者・新生児のみを受け入れる場合 | 他科の患者も併せて受け入れる場合 |
|---|---|---|
| 病院(加算1) | 看護職員の最小必要数の5割以上が助産師/産科病棟に助産師を常時1人以上配置/適切な管理ができる助産師数の配置 | 助産師を常時1人以上配置/産科区域の特定(ユニット化)/区域に適切な助産師数を配置 |
| 有床診療所(加算2) | 適切な管理ができる助産師数の配置 | 産科区域の特定(可能な限り。ゾーニング)/区域に適切な助産師数を配置 |
共通する主な要件は次のとおりです。
- 専任の助産師1名以上:助産もしくは産科患者・新生児のケア、および地域連携に係る業務について、十分な経験に従事した経験を5年以上有すること
- 外来での妊娠期ケア:助産師外来を含む妊婦健康診査や妊娠期の保健指導を実施していること(病院は、産科外来等で妊娠期のケアと指導を行う助産師の配置も必要)
- 望ましい事項:院内助産の開設、産後ケア事業の実施(いずれも「望ましい」とされています)
病院が他科患者も受け入れる混合病棟の場合は、病棟内のその他の病室等との間に扉を設けるなど構造上の区分があり、少なくとも他科の患者等が通常立ち入ることのないよう視覚的に区域が区分されている必要があります。
有床診療所のゾーニングとは
改定資料では、ユニット化を「ひとつづきになっている病棟の一部を産科専用のユニットとして使用すること」、ゾーニングを「廊下を含むひと固まりの領域を産科だけの区域とすること」と説明しています。有床診療所では、産科の患者・新生児と他科の患者を併せて受け入れる場合に、産科区域の特定が「可能な限り」とされています。
疑義解釈で確認されている取扱い
| 論点 | 取扱い |
|---|---|
| 専任の助産師(認証された者) | 現時点では、一般財団法人日本助産評価機構による「CLoCMiP レベルⅢ」(アドバンス助産師)の認証を受けた助産師(3月23日付、問16) |
| 院内助産・助産師外来の体制 | 「院内助産・助産師外来ガイドライン2018」を参考にする。医師と助産師の役割分担を明確にすることが望ましい(問17) |
| 産科区域の特定 | 他科の患者等が誤って立ち入らないよう、物理的または容易に視認できる形で区域が明確になる設備を設けること(問18) |
| 産科病棟が複数ある場合(加算1) | 病棟ごとに施設基準を満たせば届出可能。専任の助産師は各病棟配置が望ましいが、病院内で横断的に活動している場合は院内1名以上でもよい(問19) |
| 5年以上の経験 | 地域連携業務を担う部門での経験が必ず必要とは限らない。助産や産科ケアの中で、母子保健事業や福祉関係機関の担当者に情報共有するなどの連携が業務に含まれていれば該当しうる(5月8日付、問2) |
「現時点では」という表現が使われているため、アドバンス助産師の扱いは今後見直される可能性があります。届出前に最新の事務連絡を確認してください。
届出前のチェックリスト
- 分娩を取り扱う病院か、有床診療所(有床診療所入院基本料の届出)かを確認した
- 産科の患者・新生児のみの運用か、他科患者との混合かを整理した
- 混合の場合、産科区域を物理的・視覚的に区分できる設備があるか確認した
- 専任の助産師(アドバンス助産師)を確保し、5年以上の経験の内容を整理した
- 助産師外来を含む妊婦健診・保健指導の実施体制を確認した
- 適切な管理ができる助産師数が配置できているか確認した
- 分娩開始日(陣痛発来入院日/帝王切開手術の開始日)の記録ルールをシステム上で決めた
- 届出書の様式と提出先を、管轄の地方厚生局の案内で確認した
日々の運用で押さえたいこと
- 分娩の開始日が算定開始日となるため、カルテに陣痛発来の時刻、帝王切開の手術開始時刻を残す運用が必要です。
- 入院日数が連続して加算に反映されるため、レセプト点検では起算日と算定日数の突合が欠かせません。算定漏れの防ぎ方はレセプトの算定漏れチェックリストも参考にしてください。
- レセプトの基本はレセプトとは、返戻になった場合の対応は返戻の理由と再請求の進め方で整理しています。
- 産婦人科の診療科としての動向は、産婦人科の2026年度診療報酬改定に、電子カルテの選定は産婦人科クリニックの電子カルテ比較、公費の妊婦健診の会計は産婦人科の健診と公費の扱いにまとめています。
よくある質問
Q. 無床の産婦人科クリニックでも算定できますか。 A. 改定資料で示されている区分は、病院(加算1)と有床診療所(加算2)です。入院中の患者が対象のため、無床のクリニックは対象外と読み取れます。
Q. アドバンス助産師がいないと届出できませんか。 A. 疑義解釈では、現時点で「専任の助産師」はアドバンス助産師(CLoCMiP レベルⅢ)の認証を受けた助産師とされています。確保できない場合は、管轄の地方厚生局に確認してください。
Q. 院内助産や産後ケア事業を行っていないと算定できませんか。 A. 改定資料では、院内助産の開設・産後ケア事業の実施は「望ましい」と整理されています。
まとめ
- 産科管理加算は、2026年度改定で新設された、分娩を取り扱う病院(250点/日)・有床診療所(50点/日)向けの加算です
- 算定は分娩が開始した日以降。陣痛発来による入院日、予定帝王切開は手術の開始時刻が含まれる日から
- 専任の助産師(アドバンス助産師)、産科区域の特定、助産師外来を含む妊娠期ケアが主な要件
- 届出は、管轄の地方厚生局の案内と最新の疑義解釈で確認する
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参考・出典
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 10. 重点的な対応が求められる分野(救急医療・小児周産期医療)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001680843.pdf
- 厚生労働省保険局医療課 事務連絡 令和8年3月23日(疑義解釈資料の送付について・産科管理加算 問15〜19) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001678310.pdf
- 厚生労働省保険局医療課 事務連絡 令和8年5月8日(産科管理加算 問2) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001698587.pdf
- 厚生労働省 届出チェックリスト(令和8年5月29日付事務連絡に添付) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001706142.pdf