「初診の日に特定疾患療養管理料は取れるのか」「主病名は何でもよいのか」「令和8年に胃潰瘍が対象から外れたと聞いたが、実際はどうなったのか」——内科を中心とするクリニックの医療事務の方から、毎月のように確認されるテーマです。本記事では、令和8年の医科点数表(告示)と留意事項通知(保医発0305第6号)、対象疾患を定めた特掲診療料の施設基準等の告示(令和8年厚生労働省告示第71号)にもとづき、特定疾患療養管理料の点数・算定要件・対象疾患・併算定の注意点を整理します。
免責:本記事は2026年10月19日時点の公表情報にもとづく一般的な情報提供です。点数・算定要件・対象疾患の取扱いは、厚生労働省の告示・通知が正本です。算定の最終判断は、必ず最新の原文と管轄の地方厚生局・審査機関の取扱いでご確認ください。
特定疾患療養管理料の全体像
特定疾患療養管理料(区分番号B000)は、厚生労働大臣が定める疾患を主病とする患者に対して、プライマリケア機能を担う地域のかかりつけ医師が、治療計画に基づき服薬・運動・栄養等の療養上の管理を計画的に行うことを評価する医学管理料です(留意事項通知)。
点数
| 区分 | 点数 | 算定回数 |
|---|---|---|
| 診療所 | 225点 | 月2回まで |
| 許可病床数100床未満の病院 | 147点 | 月2回まで |
| 許可病床数100床以上200床未満の病院 | 87点 | 月2回まで |
| 情報通信機器を用いた場合(届出が必要):診療所/100床未満/100〜200床未満 | 196点/128点/76点 | 月2回まで(所定点数に代えて算定) |
許可病床数が200床以上の病院では算定できません(留意事項通知)。情報通信機器を用いた医学管理は、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合するものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関で、オンライン診療の指針に沿って行った場合に算定します。
算定の基本ルール
| 項目 | 取扱い(告示・留意事項通知) |
|---|---|
| 対象患者 | 別に厚生労働大臣が定める疾患(下記の一覧)を主病とする患者。入院中の患者はいかなる場合も算定できない |
| 管理内容 | 治療計画に基づく、服薬・運動・栄養等の療養上の管理。管理内容の要点を診療録に記載する |
| 回数 | 月2回まで |
| 主病とは | 患者の全身的な医学管理の中心となっている特定疾患。対診や依頼で検査のみを行う医療機関では算定できない |
| 複数の診療科を受診 | 同一医療機関では、主病と認められる特定疾患の治療にあたる診療科でのみ算定 |
| 家族を通した管理 | 診察に基づく計画的な診療計画があり、必要やむを得ない場合は、看護にあたる家族等を通して管理した場合も算定できる |
| 実態 | 主病を中心とした療養上の管理が実際に行われていない場合、または実態として主病の治療が当該医療機関で行われていない場合は算定できない |
初診後1か月ルール
事務で最も間違いやすいのが、初診日(または退院日)との関係です。
- 告示:初診料を算定する初診の日に行った管理、またはその初診の日から1月以内に行った管理の費用は、初診料に含まれる
- 通知:第1回目の特定疾患療養管理料は、初診料を算定した初診の日(または当該医療機関から退院した日)から起算して1か月を経過した日以降に算定する
- 例外①:1か月を経過した日が休日の場合で、その休日の直前の休日でない日に要件を満たすときは、その日に算定できる
- 例外②:1か月を経過した日が翌々月の1日となる場合で、初診日(退院日)の属する月の翌月の末日(休日の場合はその前日)に要件を満たすときは、その日に算定できる
つまり、初診の月に特定疾患療養管理料を算定するのは原則として誤りです。レセコンで初診日からの経過日数をチェックできる設定になっているか、確認しておくと安心です。
対象疾患の一覧(令和8年告示)
対象となる疾患は、特掲診療料の施設基準等の別表第一に定められています。令和8年厚生労働省告示第71号の改正後の別表第一は、次のとおりです。
| 区分 | 対象疾患 |
|---|---|
| 感染症・腫瘍 | 結核、悪性新生物 |
| 内分泌・代謝 | 甲状腺障害、処置後甲状腺機能低下症、スフィンゴリピド代謝障害及びその他の脂質蓄積障害、ムコ脂質症、リポ蛋白代謝障害及びその他の脂(質)血症(家族性高コレステロール血症等の遺伝性疾患に限る)、リポジストロフィー、ローノア・ベンソード腺脂肪腫症 |
| 循環器 | 虚血性心疾患、不整脈、心不全 |
| 脳血管 | 脳血管疾患、一過性脳虚血発作及び関連症候群 |
| 呼吸器 | 単純性慢性気管支炎及び粘液膿性慢性気管支炎、詳細不明の慢性気管支炎、その他の慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、喘息、喘息発作重積状態、気管支拡張症 |
| 消化器 | 胃潰瘍及び十二指腸潰瘍(消化性潰瘍のある患者への投与が禁忌である非ステロイド性抗炎症薬の投与を受けている場合を除く)、胃炎及び十二指腸炎、肝疾患(経過が慢性なものに限る)、慢性ウイルス肝炎、アルコール性慢性膵炎、その他の慢性膵炎 |
| その他 | 思春期早発症、性染色体異常 |
注意したい点は次のとおりです。
- 糖尿病・高血圧症・一般的な脂質異常症は、この一覧にありません。 これらは生活習慣病管理料の対象です。脂質異常症は「リポ蛋白代謝障害及びその他の脂(質)血症」のうち、家族性高コレステロール血症等の遺伝性疾患に限って対象になります。詳しくは 生活習慣病管理料ⅠとⅡの違いと使い分け を参照してください
- 疾患名は「疾病、傷害及び死因の統計分類基本分類表」(平成27年総務省告示第35号)の分類に該当するものです。医療機関での呼称が異なっても医学的内容が同じであれば対象になりますが、混乱を避けるため、できる限り分類表上の名称を使うことが望ましいとされています
- 「肝疾患」は経過が慢性なものに限られます。急性の肝疾患は対象外です
令和8年の変更点:胃潰瘍・十二指腸潰瘍
令和8年度改定では、特定疾患療養管理料と、処方料・処方箋料の特定疾患処方管理加算の対象疾患について、次の見直しがありました(厚生労働省の改定概要、告示)。
| 改定前 | 改定後 | |
|---|---|---|
| 消化性潰瘍 | 胃潰瘍、十二指腸潰瘍 | 胃潰瘍及び十二指腸潰瘍(消化性潰瘍のある患者への投与が禁忌である非ステロイド性抗炎症薬の投与を受けている場合を除く) |
厚生労働省の概要資料では、「消化性潰瘍のある患者への投与が禁忌である非ステロイド性抗炎症薬の投与を受けている場合には、胃潰瘍及び十二指腸潰瘍の対象から除外する」と説明されています。つまり、胃潰瘍・十二指腸潰瘍が一律に対象外になったわけではありません。消化性潰瘍のある患者への投与が禁忌とされる非ステロイド性抗炎症薬の投与を受けている場合だけが、対象から除かれます。
実務では、次の運用を決めておくと迷いません。
- 主病が胃潰瘍・十二指腸潰瘍の患者について、処方薬に該当するNSAIDsがないかを確認する
- 該当する薬剤の判断が難しい場合は、医師が確認し、診療録に根拠を残す
- 該当する場合は、特定疾患療養管理料と特定疾患処方管理加算の双方で算定対象から外れるため、レセコンのチェック条件を見直す
なお、どの薬剤が「消化性潰瘍のある患者への投与が禁忌である非ステロイド性抗炎症薬」に当たるかは、医薬品の添付文書の記載で判断します。本記事は個別の薬剤の該当可否を示すものではありません。
併算定できない管理料
特定疾患療養管理料は、ほかの医学管理料との関係で算定できないものが多くあります。主な例を整理します。
| 場面 | 取扱い |
|---|---|
| 同一月の他の特定疾患系管理料 | 医学管理等の通則で、ウイルス疾患指導料、小児特定疾患カウンセリング料、小児科療養指導料、てんかん指導料、難病外来指導管理料、皮膚科特定疾患指導管理料、慢性疼痛疾患管理料、小児悪性腫瘍患者指導管理料、耳鼻咽喉科特定疾患指導管理料、在宅療養指導管理料、心身医学療法とは、特に規定する場合を除き同一月に算定できない |
| 小児特定疾患カウンセリング料、てんかん指導料、難病外来指導管理料、心臓ペースメーカー指導管理料、移植後患者指導管理料 | それぞれの注で、特定疾患療養管理料を算定している患者については算定しない |
| 心不全再入院予防継続管理料 | 特定疾患療養管理料(心不全を主病とする患者に限る)は別に算定できない |
| 認知症専門診断管理料 | 特定疾患療養管理料は別に算定できない |
| 通院・在宅精神療法 | 特定疾患療養管理料を算定している患者については算定しない |
| 在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料の算定月 | 特定疾患療養管理料は算定できない |
| 皮膚科特定疾患指導管理料または在宅療養指導管理料を算定すべき指導管理を受けている患者 | 特定疾患療養管理料の費用は、それぞれの指導管理料に含まれる |
| 入院中・退院後1月以内 | 入院中の患者への管理、退院日から1月以内の管理は入院基本料に含まれる |
「別の管理料を算定した月は取れない」というルールは、レセプト電算の突合や審査で指摘されやすい部分です。同じ患者に複数の管理料を重ねていないか、月末に一覧でチェックする運用をおすすめします。
特定疾患処方管理加算とセットで確認する
特定疾患療養管理料と同じ別表第一を使うのが、特定疾患処方管理加算です(処方料・処方箋料の加算)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 点数 | 56点(1処方につき、月1回) |
| 対象 | 診療所または許可病床数200床未満の病院で、入院中以外の患者(別表第一の疾患を主病とするもの) |
| 要件 | 薬剤の処方期間が28日以上であること(処方された薬剤すべてが28日以上である必要はない) |
| 処方料と処方箋料 | 同一月に両方を算定する場合は、いずれか一方の加算として月1回 |
| 初診日 | 初診料を算定した初診の日においても算定できる |
特定疾患療養管理料には「初診から1か月」の制限がありますが、特定疾患処方管理加算は初診日にも算定できる点が違います。この違いは、レセコンの設定で混同されやすい部分です。
院内に掲示するもの:長期処方・リフィル処方
留意事項通知には、特定疾患療養管理料を算定する医療機関について、患者の状態に応じて28日以上の長期の投薬を行うこと、またはリフィル処方箋を交付することが可能であることを、医療機関の見やすい場所に掲示するとともに、患者から求められた場合には、状態を踏まえて適切に対応することが定められています。掲示物が最新の様式になっているか、あらためて確認してください。
算定前のチェックリスト
- 主病(全身的な医学管理の中心となっている疾患)が、別表第一の疾患に該当しているか
- 傷病名は、分類表上の名称(または同等の内容)で登録されているか
- 初診日(退院日)から1か月を経過した日以降か
- 同一月の算定が2回以内か
- 他の特定疾患系の管理料、在宅療養指導管理料、在宅時医学総合管理料を同じ月に算定していないか
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍の場合、禁忌のNSAIDs投与の有無を確認したか
- 治療計画があり、管理内容の要点を診療録に記載しているか
- 長期処方・リフィル処方の対応可能の掲示があるか
よくある質問
Q. 糖尿病や高血圧症の患者に特定疾患療養管理料は算定できますか。 A. 別表第一に糖尿病・高血圧症はありません。生活習慣病管理料の対象疾患です。ほかに別表第一の疾患(たとえば虚血性心疾患や慢性の肝疾患)を主病としている場合に限り、その主病で算定を検討します。
Q. 主病が複数ある場合はどうなりますか。 A. 主病は「全身的な医学管理の中心となっている特定疾患」です。同一医療機関で複数の診療科を受診している場合は、主病の治療にあたる診療科でのみ算定します。
Q. 本人が来院できず、家族だけが来た場合は算定できますか。 A. 診察に基づく計画的な診療計画を立てている場合であって、必要やむを得ない場合に、看護にあたっている家族等を通して療養上の管理を行ったときも算定できます。
Q. 月2回算定するには、毎回管理が必要ですか。 A. 月2回「まで」であり、算定ごとに、治療計画に基づく療養上の管理を行い、要点を診療録に記載します。
Q. オンライン診療でも算定できますか。 A. 届出をした医療機関で、オンライン診療の指針に沿って管理を行った場合に、診療所196点などの点数で算定できます。
まとめ
- 特定疾患療養管理料は、診療所225点・月2回まで。別表第一の疾患を主病とする患者が対象で、200床以上の病院は算定できない
- 初診日(退院日)から1か月を経過した日以降に算定する。初診日の月に算定するのは原則として誤り
- 令和8年に、消化性潰瘍の患者への投与が禁忌であるNSAIDsの投与を受けている場合は、胃潰瘍・十二指腸潰瘍が対象から除かれた。一律の除外ではない
- 他の管理料や在宅の管理料との併算定不可が多い。月末のチェックを習慣にする
- 特定疾患処方管理加算は同じ疾患一覧を使うが、初診日にも算定できる点が異なる
生活習慣病管理料との切り分けは 生活習慣病管理料ⅠとⅡの違いと使い分け を、内科クリニックの算定チェック全般は 内科クリニックの電子カルテとAIレセチェック を、令和8年度改定の全体像は 診療報酬改定2026の全体像 を参照してください。地域包括診療加算など内科の他の加算は 地域包括診療加算の記事 に、算定漏れを防ぐ運用は 算定漏れの原因別チェックリスト にまとめています。
ポテックは、クリニック向けのAI電子カルテと、算定要件をふまえたレセプトチェック機能を提供しています。管理料の併算定チェックや、改定に合わせた設定の見直しなどでお困りの際は、お気軽にご相談ください。