「地域包括診療加算は令和8年度の改定で何が変わったのか」「認知症地域包括診療加算がなくなったと聞いたが、うちの算定はどうなるのか」——高血圧・糖尿病・脂質異常症などの患者さんを継続して診ている診療所の院長や事務長、医療事務の方から、こうした疑問が出やすい加算です。本記事では、令和8年6月1日からの点数、対象患者、診療所の施設基準、届出の要否、新設された外来データ提出加算を、厚生労働省の公表資料にもとづいて整理します。
免責:本記事は2026年10月13日時点の公表情報にもとづく一般的な情報提供です。点数・施設基準・届出の取扱いは、厚生労働省の告示・通知および所管の地方厚生局の案内が正本です。届出や算定の最終判断は、必ず最新の原文と管轄の地方厚生局でご確認ください。
令和8年度改定の全体像は 診療報酬改定2026 クリニックが押さえるべき変更点と対応策、内科系の見どころは 内科の診療報酬改定 もあわせてご覧ください。施設基準の一つである時間外対応体制加算は 時間外対応体制加算とは?令和8年改定の点数と1〜4の算定要件・届出 で詳しく扱っています。
結論:令和8年改定のポイント
| 項目 | 内容(令和8年6月1日から) |
|---|---|
| 評価体系 | 認知症地域包括診療加算・同診療料が、地域包括診療加算・同診療料に統合された |
| 点数(診療所の加算) | 加算1:認知症を有する患者等 38点/その他の慢性疾患等 28点。加算2:同 31点/21点 |
| 対象患者 | 「脂質異常症・高血圧症・糖尿病・慢性心不全・慢性腎臓病のいずれか」を有し、かつ要介護被保険者等である患者が追加された |
| 医師配置の要件 | 医療資源の少ない地域の診療所は、常勤換算2名以上ではなく1.4人以上でよい |
| 連携薬局 | 緊急時の解熱鎮痛剤等を院内処方できる体制があれば、連携薬局が24時間対応でなくてもよい |
| 新設 | 外来データ提出加算(月1回10点) |
- 点数そのものは、これまでの認知症地域包括診療加算(38点・31点)と地域包括診療加算(28点・21点)の値がそのまま引き継がれています。患者の区分で点数が決まる形になりました。
- 既に届出をしている診療所は、通知上「届出を必要としないもの」に整理されています(後述)。
点数の整理(診療所)
| 区分 | 認知症を有する患者等 | その他の慢性疾患等を有する患者 |
|---|---|---|
| 地域包括診療加算1 | 38点 | 28点 |
| 地域包括診療加算2 | 31点 | 21点 |
なお、病院が届け出る「地域包括診療料」(1・2)もこの改定で同様に統合されましたが、本記事は診療所が算定する加算を中心に扱います。
対象患者:2つの区分
厚生労働省の概要資料では、次のように整理されています。
認知症を有する患者等(38点/31点)
次のすべてを満たす患者です。
- 認知症を有する、または介護給付・予防給付を受けている要介護被保険者等(要介護被保険者、居宅要支援被保険者)であること
- 認知症以外の1以上の疾病(疑いを除く)を有すること
- 同月に、当該保険医療機関で次のいずれの投薬も受けていないこと
- 1処方につき5種類を超える内服薬があるもの
- 1処方につき抗うつ薬、抗精神病薬、抗不安薬及び睡眠薬を合わせて3種類を超えて含むもの
その他の慢性疾患等を有する患者(28点/21点)
次のいずれかです(いずれの疾病にも疑いは含みません)。
- 脂質異常症、高血圧症、糖尿病、慢性心不全、慢性腎臓病(慢性維持透析を行っていないものに限る)、認知症の6疾病のうち2以上を有する患者
- 脂質異常症、高血圧症、糖尿病、慢性心不全、慢性腎臓病のいずれかを有しており、かつ介護給付・予防給付を受けている要介護被保険者等である患者(今回追加)
実務では、要介護認定の有無を問診・保険証・介護保険被保険者証で確認する運用が必要になります。レセコン側で「要介護」の情報をどう持つかは、導入しているシステムによって異なります。
診療所の施設基準(地域包括診療加算1)
保医発0305第7号(基本診療料の施設基準等の届出に関する取扱い)の第2の3に定められた主な内容です。加算1は全項目、加算2は一部を除いた項目を満たす必要があります。
| 項目 | 内容の要点 |
|---|---|
| 診療所であること | 病院は加算ではなく「診療料」の対象 |
| 担当医 | 慢性疾患の指導に係る適切な研修を修了した医師を配置。認知症に係る適切な研修の修了が望ましい |
| 院内掲示 | 健康相談・予防接種相談の実施、介護支援専門員・相談支援専門員からの相談への対応、28日以上の長期投薬またはリフィル処方箋の交付が可能であること |
| ウェブサイト掲載 | 上記の掲示事項を、原則としてウェブサイトにも掲載(自ら管理するホームページ等がない場合を除く) |
| 連携薬局 | 院外処方の場合、24時間対応の薬局と連携。ただし緊急時に必要な解熱鎮痛消炎剤・血圧降下剤・気管支拡張剤等を院内処方できる体制があれば、24時間対応でなくても可 |
| 禁煙 | 敷地内禁煙(建物の一部を借用している場合は、保有または借用している部分が禁煙) |
| 介護保険 | 介護保険の相談を実施している旨の院内掲示、主治医意見書の作成に加え、居宅介護支援事業者の指定、地域ケア会議への年1回以上の出席など、通知に列挙された項目のいずれか1つ |
| 在宅医療 | 在宅医療の提供と24時間の往診等の体制(在支診以外は連携医療機関の協力を含む) |
| 時間外対応等 | 時間外対応体制加算1〜4の届出、常勤換算2名以上の医師(うち1名以上が常勤)、在宅療養支援診療所のいずれか1つ |
| 介護との連携 | サービス担当者会議への参加実績、地域ケア会議への出席実績、介護支援専門員との相談機会(対面またはICT等)のいずれか |
| 在宅への移行実績 | 直近1年間に、継続的な外来診療を経て往診料・在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の1等を算定した患者が、在支診で10人以上、それ以外の診療所で3人以上。直近1か月の患者のうち往診・訪問診療の割合が70%未満 |
| 意思決定支援 | 「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等を踏まえた指針を定める |
| その他 | 健康保険法第68条の2第1項により3年以内の期限が付された指定を受けた診療所でないこと |
加算2の違い
加算2は、上の「在宅医療の提供と24時間の往診等の体制」「在宅への移行実績」を求めず、在宅医療の提供と24時間の連絡体制の確保でよい、という整理です(通知上、加算1の(1)〜(7)、(9)、(10)、(12)、(13)を満たしたうえで(2)として24時間連絡体制を確保)。その分、点数は低く設定されています。
医療資源の少ない地域の特例
医師配置の要件は、「基本診療料の施設基準等」別表第六の二に掲げる地域に所在する診療所では、常勤換算1.4人以上(うち1名以上が常勤)に緩和されました。該当するかは、告示の別表で所在地を確認してください。
届出:必要か、どこに出すか
- 令和8年5月31日時点で既に算定している医療機関は、通知の経過措置により、引き続き算定する場合は新たな届出を要しません。地域包括診療加算は、通知の表3(施設基準が改正されたもののうち届出を必要としないもの)に挙げられています。
- ただし、令和8年6月以降の実績により施設基準の内容と異なる事情が生じた場合は、変更の届出が必要です。
- 新規に届け出る場合は、様式2の3を使います。研修修了証の写し(一覧でも可)の添付が必要で、様式の注記には「本届出は、2年以内に再度届け出ること」とあります。
- 提出先は管轄の地方厚生局(支局)です。受付の方法や時期は局ごとの案内で確認してください。
届出前のチェックリスト
- 担当医の「慢性疾患の指導に係る適切な研修」の修了証がある
- 健康相談・予防接種相談、介護支援専門員等への対応、長期投薬・リフィル対応の掲示をした
- 同じ内容を自院のウェブサイトに掲載した
- 連携薬局の24時間対応を確認した(または院内処方で対応できる体制を整えた)
- 敷地内禁煙になっている
- 主治医意見書を作成している。介護保険関連の要件のうち満たすものと証拠書類を確認した
- 在宅医療・24時間の往診等の体制(加算2は24時間連絡体制)を確保した
- 時間外対応体制加算の届出、医師配置、在支診のいずれかを満たす
- 意思決定支援の指針を作成した
薬剤適正使用連携加算の見直し
他の保険医療機関にも通院している患者について、処方内容や薬歴にもとづく相談・提案を他の医療機関に行った結果、薬剤の種類数が減った場合にも、薬剤適正使用連携加算を算定できるようになりました。概要資料では、算定対象と要件が次のように整理されています。
| 改定前 | 改定後 | |
|---|---|---|
| 算定対象患者 | 他の保険医療機関に入院、または介護老人保健施設に入所した患者 | 左に加え、他の保険医療機関の外来で継続的に診療を受けている患者 |
| 情報提供 | 連携して服用状況や薬剤服用歴の情報共有 | 当該機関等に薬剤の服用状況や薬剤服用歴を情報提供し、適切な連携を実施 |
| 処方内容の受領 | 退院後・退所後1月以内 | 退院後・退所後1月以内、または情報提供から3月以内 |
| 種類数 | 他の機関等で処方した薬剤の種類数が減少していること | 同左 |
あわせて、診療時に患家の残薬を確認したうえで適切な服薬管理を行うことが要件とされ、算定患者の処方薬を把握・管理する手段に電子処方箋システムの活用が含まれることが明確化されています。
外来データ提出加算(新設)
地域包括診療加算等を算定する医療機関が、診療報酬の請求状況や診療の内容に関するデータを継続して厚生労働省に提出している場合の評価です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 点数 | 月1回に限り10点 |
| 主な施設基準 | 外来医療等調査に適切に参加できる体制、連絡担当者1名の指定、過去5年間の診療録等の保管・管理、保管規定の明文化、ICD大分類程度以上の疾病分類、疾病別の検索・抽出 |
| 届出の流れ | 様式7の10で届出 → 届出期限の翌月から2月分の試行データを作成・提出 → 厚労省から実績の連絡 → 様式7の11で届出 → 算定開始 |
| 最初の届出期限 | 令和8年11月20日(その後、令和9年2月22日、5月20日、8月20日、11月22日、令和10年2月21日) |
| 遅延時の扱い | 各調査年度に累積3回のデータ提出の遅延等があれば、変更の届出が必要で、翌月から算定不可 |
試行データの対象は、届出期限の翌月から起算して2月分です(通知の例:令和9年7月に届出なら、期限は8月20日、試行データは9月・10月分)。概要資料にも、届出、試行データ作成、試行データ提出、様式7の11の届出、算定開始の順にスケジュールが示されています。具体的な時期は通知と概要資料の原文でご確認ください。電子カルテ・レセコンからデータを出力できるか、診療録の保管規定が文書になっているかを、先に確認しておくのが現実的です。
よくある質問
Q. 認知症地域包括診療加算を算定していた場合、何か手続きは必要ですか。 A. 評価体系の統合で、「認知症を有する患者等」の区分として38点・31点が引き継がれています。令和8年5月31日時点で算定していた医療機関は、新たな届出を要しないとされています。施設基準の内容と実績が合っているかは、改めて確認してください。
Q. 要介護の患者が高血圧だけでも対象になりますか。 A. 概要資料では、脂質異常症・高血圧症・糖尿病・慢性心不全・慢性腎臓病のいずれかを有し、介護給付・予防給付を受けている要介護被保険者等である患者が対象に追加されたとされています(疑いは含みません)。個別の算定可否は、通知の本文と管轄の地方厚生局でご確認ください。
Q. 時間外対応体制加算を届け出ていない場合は算定できませんか。 A. 施設基準は「時間外対応体制加算1〜4の届出」「常勤換算2名以上の医師配置」「在宅療養支援診療所であること」のいずれか1つを満たせば足ります。
まとめ
- 令和8年6月から、認知症地域包括診療加算が統合され、診療所の加算は「認知症を有する患者等」38/31点、「その他の慢性疾患等」28/21点の形になりました。
- 対象患者に、5疾患のいずれかを有する要介護被保険者等が加わりました。
- 既に届出をしている診療所は新たな届出が不要ですが、実績が基準と合わなくなれば変更の届出が必要です。
- 外来データ提出加算は、令和8年11月20日が最初の届出期限です。データ提出の準備には時間がかかります。
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要介護情報の管理、レセコンでの加算の自動判定、診療データの出力など、加算の算定と届出の運用は、電子カルテ・レセコンの設計に左右されます。ポテックでは、クリニックの算定・運用の実情に合わせたシステムのご相談を承っています。ご関心のある方は、お問い合わせください。
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参考・出典
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 Ⅱ-3 かかりつけ医機能、かかりつけ歯科医機能、かかりつけ薬剤師機能の評価」(地域包括診療加算等の見直し、外来データ提出加算) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001681336.pdf
- 厚生労働省保険局医療課「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和8年3月5日付 保医発0305第7号)(第2の3 地域包括診療加算、第2の3の2 外来データ提出加算、第4 経過措置、様式2の3)(九州厚生局掲載) https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kyushu/000476302.pdf
- 厚生労働省「基本診療料の施設基準等の一部を改正する件」(令和8年厚生労働省告示第70号)(九州厚生局掲載) https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kyushu/000476301.pdf