「物価対応料は初診・再診でいくら付くのか」「どの診療料と一緒に算定できるのか」「届出は要るのか」。令和8年度の診療報酬改定で新設された物価対応料は、ほぼすべての外来診療に関わる一方、点数が小さく、レセプトの確認項目として見落とされやすい項目です。
本記事では、診療報酬点数表(告示)と留意事項通知の原文にもとづき、診療所に関係する外来・在宅物価対応料の点数、算定できる場面、確認しておきたい点を整理します。
免責:本記事は2026年10月29日時点の公表情報にもとづく一般的な情報提供です。点数・要件の正本は厚生労働省の告示・通知です。個別の算定可否は、管轄の地方厚生局や審査支払機関にご確認ください。
物価対応料とは
物価対応料は、医科診療報酬点数表の**第14部「その他」第2節(区分 O100)**に新設された項目です。点数表の通則には「物価対応の費用は、第2節の各区分の所定点数により算定する」と定められています。令和8年度改定の告示・通知は、令和8年6月1日から適用されています。
区分O100は次の2本立てです。
- 外来・在宅物価対応料(本記事の対象。診療所が関係)
- 入院物価対応料(入院基本料などを算定する入院患者に1日につき算定。病院・有床診療所向けで、本記事では扱いません)
同じ第14部の第1節にあるベースアップ評価料とは別の項目です。ベースアップ評価料は施設基準の届出が必要な加算、物価対応料は別の節に置かれた別の費用で、混同しないようにしましょう。
点数:初診2点・再診等2点・訪問診療3点
点数表(告示)に定められた外来・在宅物価対応料の点数は次のとおりです。
| 区分 | 場面 | 点数 |
|---|---|---|
| イ | 初診時 | 2点 |
| ロ | 再診時等 | 2点 |
| ハ | 訪問診療時 | 3点 |
どの診療料を算定したときに算定できるか
留意事項通知は、外来・在宅物価対応料が「当該保険医療機関を受診した患者に対して初診、再診又は訪問診療を行った場合に算定できる」と定めたうえで、イ・ロ・ハごとに「次の診療料を算定した場合に限り」と対象を限定しています。
| 区分 | 算定できる場合(算定した診療料) |
|---|---|
| イ(初診時) | 初診料(A000)、小児科外来診療料の初診時(B001-2の1のイ・2のイ)、小児かかりつけ診療料の初診時 |
| ロ(再診時等) | 再診料(A001)、外来診療料(A002)、短期滞在手術等基本料1(A400の1)、小児科外来診療料の再診時、外来リハビリテーション診療料、外来放射線照射診療料、地域包括診療料、小児かかりつけ診療料の再診時、外来腫瘍化学療法診療料 |
| ハ(訪問診療時) | 在宅患者訪問診療料(Ⅰ)(C001)、在宅患者訪問診療料(Ⅱ)(C001-2)、在宅がん医療総合診療料(C003) |
実務上のポイントは次のとおりです。
- 診療所の通常の外来では、**初診料を算定する日はイ(2点)、再診料を算定する日はロ(2点)**が基本になります
- 地域包括診療料や小児科外来診療料のように、初・再診料を別に算定しない包括的な診療料を算定する場合も、上表に挙がっていれば対象です(小児科外来の算定で包括の仕組みを確認できます)
- 訪問診療では、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)(Ⅱ)または在宅がん医療総合診療料を算定した場合にハ(3点)を算定します(在宅の管理料の整理は在宅時医学総合管理料の算定も参照)
- 初診料・再診料の加算(時間外、機能強化、医療DXなど)の整理は初診料の加算と再診料の加算で確認できます
届出は必要か
本記事で確認した範囲では、次のとおりです。
- 点数表のO100(物価対応料)の区分には、「別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして届け出た場合」といった施設基準の定めが置かれていません
- 基本診療料・特掲診療料の施設基準等の届出通知(保医発0305第7号、第8号)の本文にも、物価対応料の項目は見当たりませんでした
つまり、ベースアップ評価料のように施設基準を満たして届け出る加算とは異なり、該当する診療料を算定した場合に算定する費用として設計されていると読み取れます。ただし、取扱いは今後の通知・疑義解釈で変わる可能性があるため、届出の要否は管轄の地方厚生局の案内でも確認してください。
医科と歯科を併せて行う医療機関の場合
点数表の通則は、歯科診療と歯科以外の診療を併せて行う保険医療機関では、それぞれ別に物価対応料(歯科外来物価対応料と外来・在宅物価対応料)を算定すると定めています。ただし留意事項通知では、同一の傷病または互いに関連のある傷病で医科と歯科を併せて受診した場合は、主たる診療科においてのみ算定します。
疑義解釈で示されている内容
令和8年度改定の疑義解釈資料(その1〜14)のうち、物価対応料に触れているのは次の3件でした(いずれも本記事では詳述しません)。
- その8(令和8年6月17日):短期滞在手術等基本料3を算定する場合の入院物価対応料の考え方
- その9(令和8年6月26日):DPC対象病院から地域包括ケア病棟へ転棟した場合の入院物価対応料の考え方
- その12(令和8年9月2日):調剤物価対応料の分割調剤時の扱い(薬局向け)
つまり、診療所の外来・在宅物価対応料に直接答える疑義解釈は、本記事執筆時点の資料では確認できませんでした。個別の疑問は、地方厚生局に問い合わせるのが確実です。
レセプト点検のチェックリスト
物価対応料は1回あたりの点数が小さい分、算定漏れや算定誤りが積み重なりやすい項目です。
- 初診料を算定した診療日に「イ(初診時)」が付いているか
- 再診料・外来診療料を算定した診療日に「ロ(再診時等)」が付いているか
- 地域包括診療料・小児科外来診療料など、包括的な診療料の算定日にも対象区分が付いているか
- 訪問診療の算定日に「ハ(訪問診療時)」が付いているか
- 上の表にない診療料のみを算定した日(検査や処置だけの日など)に誤って付けていないか
- 電子カルテ・レセコンの点数マスタが令和8年度改定に対応し、診療行為の入力で自動算定されているか
算定漏れの見つけ方は診療報酬の算定漏れチェックリスト、改定全体の流れは令和8年度診療報酬改定の概要も参考になります。
よくある質問
Q. 物価対応料は、患者さん1人につき1日何回算定できますか。 A. 留意事項通知では、外来・在宅物価対応料は対象の診療料を算定した場合に算定できると定められています。1日に複数回受診した場合の扱いなど、通知の原文だけでは判断できない場面は、地方厚生局へご確認ください。
Q. 入院物価対応料は診療所も関係しますか。 A. 入院基本料などを算定する入院患者が対象です。有床診療所を含め、入院を扱う医療機関は点数表の入院物価対応料の区分を確認してください。
まとめ
- 外来・在宅物価対応料は、点数表O100に新設された費用で、初診時2点・再診時等2点・訪問診療時3点
- 初診料・再診料などの対象の診療料を算定した場合に限り算定できる
- 本記事で確認した範囲では施設基準の定めはなく、届出は不要と読み取れるが、地方厚生局の案内も確認する
- レセプト点検では、診療料との対応と算定漏れを確認する
電子カルテ・レセコンでの対応について
物価対応料のように点数は小さくても全件に関わる項目は、レセプトの自動算定と点検の仕組みで運用負担が大きく変わります。ポテックでは、診療所の電子カルテ・レセプト運用に関するご相談をお受けしています。改定への対応状況の確認など、お気軽にお問い合わせください。
参考・出典
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部を改正する件」(令和8年厚生労働省告示第69号)医科診療報酬点数表 第14部 第2節 O100 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 厚生労働省保険局医療課「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日付 保医発0305第6号)本文(令和8年6月1日適用) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001666951.pdf
- 同 別添1 第14部 その他 第2節 物価対応料 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001757385.pdf
- 厚生労働省保険局医療課「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(保医発0305第7号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001757361.pdf
- 厚生労働省保険局医療課「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(保医発0305第8号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001757367.pdf
- 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その8)(その9)(その12)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001712853.pdf 、https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001716069.pdf 、https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001744953.pdf
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」告示・通知ページ https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html